週4日労働は労働者と雇用主双方に利益をもたらすことが国際研究で新たに証明される
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 週5日・40時間勤務が当たり前とされてきた現代社会だが、新たな研究により、週4日勤務でも企業の利益や社員の生産性を維持できるだけでなく、ストレスの軽減や健康改善にもつながることが明らかになった。

 日本を含む世界15か国以上で行われた試験プログラムの結果、労働時間を減らしても業務の質は下がらず、企業にも労働者にもメリットがあることが示された。

 コロナパンデミックを経て働き方を見直す機運が高まる中、「週4日勤務」は現実的な選択肢として注目されている。

国際的な試験プログラムが成果を証明

 この研究は、2025年7月21日に学術誌『Nature Human Behavior[https://www.nature.com/articles/s41562-025-02259-6]』に掲載されたもので、非営利団体「4 Day Week Global(4DWG)[https://www.4dayweek.com/]」が主導している。

 4DWGは、ニュージーランドを拠点に活動する国際団体で、アメリカ、イギリス、カナダ、アイルランド、オーストラリア、日本など15か国以上を対象に、週4日勤務の導入支援を行っている。

 研究では、これらの国々の140社以上が参加し、約3,000人の社員が6か月間にわたって、給与や福利厚生を維持したまま、労働時間を週40時間から32時間に短縮するという試験プログラムを実施した。

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生産性と健康の改善、企業の収益も向上

 初期段階の33社における試験結果では、すべての企業が制度の継続に前向きであり、生産性と収益の向上を報告した。

 一方、社員側からは、ストレスの軽減、燃え尽き感の減少、そして身体的・精神的健康の改善といった効果が確認された。

 ボストン・カレッジの社会学者で研究の共同執筆者であるウェン・ファン博士は、「最も驚くべき結果は、驚きがなかったことだ」と語っている。

 研究では通常、予想が外れる結果も含まれるが、今回はすべての仮説が予測通りの方向に動いたという。

 また、労働時間の短縮によって、社員がより激しく働くようになったわけではなく、企業の業績においても重要な数値は維持されたと報告されている。

 不要な会議を減らし、電話やチャットなどの効率的なコミュニケーション手段を活用することで、作業効率が向上した。

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週4日勤務がもたらす社会的な利点

 週末が3日間になることで、社員はその時間を病院や役所などの用事、家事、趣味、自己管理の時間に充てることができた。

 これにより、日常生活と仕事のバランスが改善し、気分や体調も良好になる傾向が見られた。

 企業側にとっても、医療費の削減や社員の離職率の低下といった具体的な経済的効果が確認されている。

 とくに、医療や教育などの分野では、燃え尽きによる人材流出を防ぐ効果が期待されている。

 同じくボストン・カレッジの社会学者であり、4DWGの学術委員も務めるジュリエット・ショール博士は、「専門職の人材をストレスで失わないことは、企業や社会にとって大きな価値がある」と指摘している。

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日本でも導入の動きが進む

 4DWGの活動対象には日本も含まれており、マイクロソフト日本は2019年に約2,300人を対象に週4日勤務を試験導入した。

 金曜日を特別休暇としたこの施策では、生産性が40%向上し、電気使用量が23%削減されたと報告されている[https://www.weforum.org/stories/2019/11/microsoft-4-day-work-week-productivity-increase/]。

 また、パナソニックも一部の社員を対象に週4日勤務の選択制を試験的に導入しており、社員のワークライフバランス改善を目的とした取り組み[https://4dayweek.io/work-life-balance/japan]が進められている。

働き方を再構築する機会

 コロナ禍以前であれば、週4日勤務の制度は「現実的ではない」とみなされていたが、それ以降、社会の変化によって、多くの人々が自分の働き方を見直すようになった。

 ファン博士は、「社会的な制度を変えることは難しいが、コロナ禍という危機をきっかけに、大きな職場の革新が可能になった。この機会を無駄にすべきではない」と述べている。

References: Bc.edu[https://www.bc.edu/bc-web/bcnews/nation-world-society/sociology/-study-pilots-four-day-work-week.html] / Nature[https://www.nature.com/articles/s41562-025-02259-6]

本記事は、海外で報じられた情報を基に、日本の読者に理解しやすい形で編集・解説しています。

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