
オリオン座の右肩に位置する赤い超巨星「ベテルギウス」のそばで、かねてから予測されていたように「伴星」が発見されたそうだ。
「オリオン座α星B(Alpha Ori B)」、通称「ベテルバディ(Betelbuddy)」と呼ばれる相棒(伴星)は、まだ中心核で水素の核融合が始まっていないきわめて若い青白い星だ。
長年の謎とされてきたベテルギウスの6年周期の明るさの変動は、この伴星の存在によって説明できるかもしれない。
この研究は『Astrophysical Journal Letters[https://doi.org/10.3847/2041-8213/adeaaf]』(2025年7月24日付)に掲載された。
オリオン座を構成する超巨星「ベテルギウス」
地球から約724光年離れたベテルギウスは、太陽の約1400倍という驚異的な半径を持つ超巨星だ。
その明るさは太陽の10万倍以上とされ、夜空で最も目立つ星のひとつとして知られている。
また、ベテルギウスは誕生してから800万年が経過した、すでに寿命の終盤に差しかかった星でもある。
実際、2019~2020年にかけては「グレート・ディミング」と呼ばれる大幅な減光現象が起き、超新星爆発が近いのではと話題になったこともある。
だが結局、ベテルギウスは輝きを取り戻し、注目された減光現象は、おそらく星から放出された大量の塵による減光であり、一時的なものだったのだろうと考えられるようになった。
ベテルギウスには相棒がいる?
超新星爆発の瞬間こそ見れなかったものの、この出来事はベテルギウスに対する関心を再燃させ、改めて分析が行われるきっかけとなった。
その結果として浮上したのが、この星に相棒がいる可能性である。
実はベテルギウスの明るさは、400日と6年の2つの周期でゆっくりと変動している。そして後者の6年周期の変動は、そこに伴星があることが原因ではないかと考えられたのだ。
この仮説を証明するべく、ハッブル宇宙望遠鏡やチャンドラX線観測衛星で探索が試みられたこともあるが、これまで決定的な証拠を得ることができなかった。
ジェミニ北望遠鏡が初の直接観測に成功
だが、ついに、NASAエイムズ研究センターの天文学者チームが伴星の直接観測についに成功したのである。
この成果は、ハワイにあるジェミニ北望遠鏡で行われた「スペックル撮像」という特殊な観測の賜物だ。
露出時間をギリギリまで短くすることで、地球の大気による像の歪みを抑えて観測が試みられたのだ。
そしておぼろげに捉えられた青白い伴星は、「オリオン座α星B(Alpha Ori B)」、通称「ベテルバディ(Betelbuddy)」と命名された。
伴星は本当に存在した
伴星、ベテルバディの光はベテルギウスより6等級暗く、質量は太陽の1.5倍ほどと推定されている。
またA型かB型の「前主系列星」であると考えられている。つまり、まだ中心核で水素の核融合が始まっていないきわめて若い星であるということだ。
さらに驚くべきことに、オリオン座α星Bは、ベテルギウスの表面から太陽と地球の距離の4倍しか離れていない。
そのせいで、ベテルギウスの膨張した大気の内側を通過しているのだ。
ベテルギウスのような超巨星のすぐそばを公転する伴星が発見されたのは、今回が初めてのこと。
それはベテルギウスの明るさが6年周期で変動する長年の謎に答えをもたらす発見でもある。
国際ジェミニ天文台のプログラムディレクターであるマーティン・スティル博士は、「スペックルイメージングは天文学のさまざまな分野で活躍している。ベテルギウスに関する何世紀にもわたる謎に答えを出せたことは、大きな成果として語り継がれるだろう」と語っている。
References: Nasa.gov[https://www.nasa.gov/science-research/astrophysics/nasa-scientist-finds-predicted-companion-star-to-betelgeuse/]
本記事は、海外の情報を基に、日本の読者向けにわかりやすく編集しています。