
世界中、陥没穴出現のニュースが後を絶たない。2025年7月26日、シンガポールでも、交通量の多い道路で突然地面が陥没し、1台の車が飲み込まれるという事故が発生した。
運転していた女性は現場作業員らの手でロープを使って無事救助された。
事故の背景にはインフラ工事が関係しており、現在も調査と復旧作業が続けられている。
工事現場近くで突如道路が陥没
事故が発生したのは2025年7月26日の午後5時頃。シンガポールのタナジョンカトン通りとマウントバッテン通りの交差点付近。地元の国家水道庁「PUB(Public Utilities Board)」が工事を進めていた現場の近くで、道路が突然崩落し、陥没穴が出現した。
穴には水が大量に溜まり、そこへ通行中だった女性の車ががそのまま吸い込まれるように落下した。
事故の瞬間を映したダッシュカム(車載カメラ)の映像では、車が右折のために停止し、前方が開けた瞬間に進み出たところ、地面が崩れ落ち、車体ごと沈み込む様子が映されていた。
作業員の冷静な対応で女性を救出
この異常事態にいち早く対応したのが、現場で作業中だったインド出身のピチャイ・ウダイヤッパン・スッビアさん(46歳)。彼は建設会社「Ohin Construction Co Pte Ltd」に勤務する現場監督で、大きな音がして、地面が崩れ、車が穴に消えたのを目撃していた。
すぐに同僚たちと共に行動を開始し、3人の作業員に指示し、ナイロンロープを穴に投げ入れた。
穴に落ちた女性はドアを開け、ロープをつかんだ。作業員たちは力を合わせて女性を慎重に引き上げ、地上まで無事に救出したという。
救出作業はおよそ2~3分で完了した。
女性はスッビアさんの携帯電話を借りて娘に連絡を取り、その後、シンガポール民間防衛隊(SCDF)によってラッフルズ病院に搬送された。
女性は肩の痛みを訴えていたものの、幸い命に別状はなかった。
事故の翌日には車両を回収、原因調査も開始
翌日となる7月27日午後、クレーン車が導入され、陥没穴に落下した車両は慎重に引き上げられた。
車体は屋根がへこみ、フロントガラスも粉々に割れていた。道路上に戻された後、作業員らが車を薄青色のシートで覆った。
国家水道庁は、事故現場が自局の稼働中の工事現場に隣接していたことを認め、陥没によって水道管2本が損傷したと発表した。
これらは予防措置として遮断され、現在も復旧作業と原因の調査が続けられている。
シンガポール警察、SCDF、そして陸上交通庁(LTA)も現場に出動しており、現在、事故が起きた道路の両方向は通行止めとなっている。
LTAはドライバーに対して、現場周辺を避け、代替ルートを利用するよう呼びかけている。
今回シンガポールで発生したような陥没穴による事故は、世界各地で相次いで報告されている。
地中の空洞が地表を支えきれなくなったとき、突如として地面が崩れ落ちるう陥没穴発生の要因は、地下の水道管の老朽化、地盤沈下、地下空洞、過剰な地下水のくみ上げなど多岐にわたる。
都市のインフラが複雑化する現代において、目に見えない地下の異変をいかに早期に察知し、予防できるかが大きな課題となっている。