
昨今の生成AIの進化の早さについては、今さら述べるまでもないと思う。これからの問題は、「どう使うか」に移っていくのかもしれない。
インドのコンテンツクリエイターが、夫に先立たれた祖母への誕生日プレゼントに、AIを駆使して再現した2人の映像をプレゼントした。
画面の向こうで幸せそうに微笑む亡き夫と自分の姿に、高齢の祖母は目を見開き、言葉を失い、笑顔と涙を浮かべるのだった。
祖母の誕生日に孫が用意したプレゼント
2025年7月1日、インド南部のケララ州で暮らすコンテンツクリエイター、アプールヴァ・ヴィジャイクマールさんが1本の動画を投稿した。そこには祖母の誕生日に集まる家族の姿が写っていた。
バラの花をプレゼントして、祖母の誕生日を祝う家族たち。バースデーケーキも用意されていて、アムさんはとっても嬉しそう。
だが、彼女は心にぽっかり空いた穴を抱えていた。長年連れ添った夫を亡くして以来、1人で悲しみに耐えてきたのだ。
愛する子供や孫たちに囲まれていても、その寂しさが消えることはない。
それでもアムさんは、笑顔で家族にお礼を言う。そんな彼女に、孫娘のアプールヴァさんがプレゼントを手渡した。
そこには在りし日の夫もいっしょに撮った、家族写真のフォトスタンドが入っていた。懐かしい写真に、思わず破顔するアムさん。
AIで再現した自分と亡き夫の笑顔に感涙
だが、プレゼントはこれで終わりではなかった。メインは別にあったのだ。
テレビの前に座ったアムさんは、そこ映し出された映像にわが目を疑った。画面にはなんと、笑顔で手をつないで歩く、アムさんとご主人の姿が写っていたのだ。
この映像は、アプールヴァさんが生成AIの力を借りて作ったものだった。亡き祖父の写真を入力し、目や口の動きを自然に再現するアプリケーションを使うことで、仲の良い夫婦の短い映像を産み出した。
映像を見た瞬間、アムさんは言葉を失い、その目には涙が浮かんだ。彼女が見たのは、愛する人が再び目の前で微笑み、自分を見つめながら共に歩いている姿だったのだ。
その時の様子を、アプールヴァさんは自身のSNSに投稿した。そこには次のようなキャプションがつけられていた。
お祖母ちゃん、お誕生日おめでとう!
お祖父ちゃんのいない生活は、きっとつらかったよね。だから、この動画を作ったの。思い出してほしかったんだ……静かな時間も、小さな喜びの中にも、彼はいつもそばにいることを。
目には見えなくても、彼はあなたを見守り、守ってくれていて、いつも隣を歩いているよ
画面に映る2人は、どちらも満面の笑顔だった。寄り添い、仲良く手をつないで歩く夫婦の姿。 笑顔で感慨深げに見ていたアムさんの瞳には、いつしか大粒の涙が浮かんでいた。
祖母は嬉しいような悲しいような、複雑な感情の中にいました。正直、きっと悲しむかもしれないとは思っていました。
この映像は、祖父が今もずっと祖母のそばにいて、これからも一緒にいてくれるよ、という思いを伝えるための物でした。でも作った私自身も、感情が揺れて泣いてしまったんです。
祖母の反応は想像がついていましたが、母も叔父もみんな泣いていました。神様のお恵みで、とても素敵な誕生日になりました。最高のプレゼントだったと思います
SNSで広がる感動の輪
アプールヴァさんがこの心揺さぶる瞬間を自身のSNSに投稿すると、短い動画は瞬く間に拡散し、数十万件の「いいね!」と多くのコメントが寄せられた。
- 涙が止まりません…なんて思いやりがあって意味深い贈り物なの。お祖母ちゃんがいつも旦那さんの存在を感じられますように
- 祖父母がまだ健在な人は幸せですね。お母様の健康と幸せが続きますように
- これは彼女に贈ることができる最高の贈り物だと思うわ
- この映像、大好き
- 私も祖母が生きているうちにこうしてあげられたらよかったのに
- お祖母ちゃんにとってふさわしい最高の贈り物。
色あせた思い出に、あなたは色をつけて命を吹き込んだんだよ- これを見て胸がぎゅっと苦しくなった…。この純粋な愛が、今生でも来世でも、永遠にみんなに訪れますように
- この可愛いお花のヘアクリップが、彼女ほど似合う人はいないと思う
- 後ろで静かに泣いているお母さん…胸が温かくなる
- 彼女の笑顔を見て! これからの幸せで健康な人生を祈ります
- インスタで知らない人のために泣くのが、もう日課になってしまった
- この笑顔にたどり着くまでに、お二人は何度お互いを許し合ってきたのかしら
- 人は亡くなっても、思い出は消えないのよ
- これこそがAIの最高に健全な活用方法だよ
- 多分、このためにこそこの技術は生まれたんだと思う
アルゼンチンでも同じような出来事が
こうした「AIによる亡き人との再会」は、インドだけでなく世界各地で起きているようだ。
2025年7月にはアルゼンチンの100歳になる女性が、AIで再現された、30年前に亡くなった夫の姿を見つめ、目を潤ませる様子がTikTokに投稿された。
生成AIがもたらす癒やしの可能性
生成AIによる「思い出の再生」は、人の心に癒やしをもたらす可能性がある一方で、倫理的な議論も生む。映像はあくまで過去のデータの再構成であり、今は亡き愛する人本人が戻ってくるわけでは決してないのだ。
こうした技術には個人情報や肖像権、死者の尊厳といった課題もつきまとう。誰がどのように故人の姿を再現し、どの範囲まで共有するのか。我々の社会は今、答えのない問いに直面しようとしているのかもしれない。
しかしそ「擬似的な再会」が、残された人にとって深い慰めや救いとなる場合があるのも事実である。
愛する人を失った後の悲嘆は、非常に長く続くもの。AIがその悲嘆のプロセスに一時的な安らぎを与える可能性があるとしても、生成AIの使い方は、今後もまだまだ議論の対象となるだろう。
References: 'Love People When They Are Alive': Granddaughter’s AI Gift Lets Grandma Walk with Grandpa One More Time | Watch[https://www.republicworld.com/viral/love-people-when-they-are-alive-granddaughters-ai-gift-lets-grandma-walk-with-grandpa-one-more-time-watch?utm_source=chatgpt.com]
本記事は、海外の記事を基に、日本の読者向けに重要なポイントを抽出し、独自の視点で編集したものです。