
中国の浙江省杭州市に、突如として現れた「もうひとつのパリ」がある。高くそびえるエッフェル塔、石畳とアパルトマン、そして静かな住宅地。
この街の名は「天都城」。かつては中国の建設バブルが生んだ夢の街だったが、人影はまばらで、世界のメディアからは「ゴーストタウン」と呼ばれた。
ところで今、この街に変化が起きているようだ。その街の「エッフェル塔」によく似た塔の周囲が柵で囲われ、再開発の動きが始まったのだ。
エッフェル塔がそびえる本物そっくりの中国のパリ
下の2枚の写真を比べてみてほしい。どちらが本当のエッフェル塔か、ぱっと見でわかるだろうか。
正解は向かって右である。左側は中国浙江省杭州市に建設された、「パリを丸パクリした街」天都城にあるコピー版エッフェル塔なのである。
本物のエッフェル塔は、先端までの高さは現在330mだが、コピー版は108mと3分の1。だが夜になるとライトアップもされたりする。
この「天都城」は、2000年代に建設が開始されたいわゆるニュータウンで、パリそっくりの街並みが売りだったそう。
なんとなくシャンゼリゼ通りっぽかったりベルサイユ宮殿風?の建造物があったりして、遠くから見ると一瞬本当にフランスの街かと思ってしまいそうである。
建物だけではなく庭園や噴水、彫刻、モニュメントなども再現され、ウェディングフォトやミュージックビデオの撮影にもよく使われているらしい。
だが近くで見るとご覧の通り、アパルトマン風の建物の下層階は、派手な感じの看板に覆われていて、間違いなく中国の風景だ。
瀟洒なアパルトマンの窓辺にはエアコンの室外機が貼りついていて、フランス人に言わせると、それを見ただけで「パリじゃない」とわかるんだそうな。
とはいえ、ディテールは非常に良くできているという。どのくらい本気の再現度かは、下に比較動画があるので自分の目で確認してほしい。
一大ブームだった「海外の街並みを模した街」
この街が建設された2000年代は、海外風の街並みが人気で、上海にはイギリスを模した「テムズ・タウン[https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%86%E3%83%A0%E3%82%BA%E3%83%BB%E3%82%BF%E3%82%A6%E3%83%B3]」が作られたり、広東州恵州市にはオーストリアのハルシュタットを模した「ハルシュタット村[https://www.youtube.com/watch?v=RPOAwJ9Q4LQ]」がオープン。
さらに最近では「日本街」も各地で作られているが、大連市に鳴り物入りでオープンした「小京都」は、国内から大きな批判を受けたため一週間で営業停止へ。
その後建物は日本風のまま、ロシアやモンゴル、北朝鮮といった国々の店舗も集めた複合施設に模様替えしたという。
現在、中国の他の多くの「ニュータウン」と同様に、天都城もゴーストタウン化が進んでいると言われている。
実際には30,000人が入居済みで、確かに「一つの街」と言えるだけの人口は確保できているらしい。
だが実際に街を歩いてみると噴水は機能しておらず、石畳は割れたまま、庭園の植木は伸び放題と、荒れた感じが否めないという。
一時は富裕層を中心に「パリそっくりの街に住める!」と人気が出たが、中国政府が度を越した一種の舶来信仰に懸念を示し出したのだ。
それ以後、海外の街をそっくりそのまま模したニュータウンや娯楽施設は、「社会主義の価値観に反する」として取り締まりが強められた。
こうした流れのせいか、2024年4月より、この「エッフェル塔」を中心とするエリアでは再開発が始まり、一般人は立ち入れないようになっているそうだ。
再開発では、塔の周囲にさらに多くのマンションや商業施設が建設される予定だそうで、工事が終わる2027年には、天都城の風景はまた違ったものになるだろう。
日本にも長崎のハウステンボスや志摩スペイン村、北海道のスウェーデンヒルズがあるし、海外の風景をそのまま再現して、実際に現地に行かなくても疑似体験がしたいという需要はどの国にだってあると思う。
現在、天都城の「エッフェル塔」はフェンスに覆われてはいるものの、街の雰囲気を味わうだけなら十分楽しめるようだ。
行き方は地下鉄の黄鶴山駅が最寄り駅。杭州駅からタクシーでも行けるそうだ。興味のある人は今のうちに訪れてみることをおすすめするよ。
References: ‘China, did you try to make a copy of Paris?’: ‘Eiffel Tower’ in Asian nation amuses social media[https://www.hindustantimes.com/trending/china-did-you-try-to-make-a-copy-of-paris-eiffel-tower-in-asian-nation-amuses-social-media-101754028309066.html]
本記事は、海外で公開された情報の中から重要なポイントを抽出し、日本の読者向けに編集したものです。