
南米コロンビアの小さなお菓子屋さんには、1年以上ほぼ毎日通い続ける常連客がいる。メスの犬、ライカである。
ライカはお金を払う代わりに、かわいらしい笑顔と愛情を振りまくことで、店主からドッグフードをもらうのが日課となっている。
そんなある日、ライカは大切な友だちを連れて店に現れた。
2匹の笑顔あふれる訪問は、地域の人々の心を温めるだけでなく、南米に根付く「地域犬」文化の一端を物語っている。
お菓子屋の常連客、犬のライカ
コロンビアの町にある「ドゥルセリア・ラス・カレニータス・カヒカ」は、色とりどりのお菓子が並ぶ小さなキャンディショップだ。
1年ほど前から、この店には常連客の犬・ライカが通っている。ほぼ毎日、しっぽを振りながら店先に現れ、ドッグフードをもらうのが日課になっている。
ライカは店員女性の姿を見ると尻尾を振りながらカウンターの前で二足立ちをする。店員は、いとおしそうにライカを撫でると、彼女の為に用意してあるドッグフードを無償で提供する。
店員はライカが訪れるのを楽しみに待っているのだ。
ライカはお金は持っていないが、その代わりたっぷりの愛情と笑顔を振りまいてくれるので、店としてはお代はこれで十分なのだ。
大切なお友達を連れてやってきた!
ある日のこと、いつものようにライカが店に現れたが、この時はひとりじゃなかった。なんとお友達を連れてきたのだ。
ライカは幸せを独り占めすることなく、お友達にもその幸せを分かち合いたかったのだろう。
2匹はそろってカウンターの前に前足をかけた。
その光景は、常連客が友人を紹介するような、微笑ましい瞬間だった。
もちろん店側は大歓迎だ。2匹をひとしきり撫でると、ドッグフードを外に置いてある容器に入れてふるまった。
以来2匹こぞってやってくることも多いという。店主は2匹が仲良く一緒にいるのを見るのがとてもうれしいという。
コロンビアの犬事情
ライカと茶色い犬には、どちらもかわいがってくれる所定の家はあるようだ。
しかし、コロンビアでは飼い主がいても犬を放し飼いにすることが多く、日中は自由に町を歩き回るのが一般的である。
こうした犬は、飼い主の家だけでなく商店や地域の人々からも食事や水をもらいながら暮らしており、形式的には飼い犬であっても、実質的には地域全体で世話をされる「地域犬」に近い存在だ。
避妊や去勢がされていない場合も多く、その場合は店主やボランティアが飼い主の了承を得て手術を行うことがある。
ライカの場合も、日課のようにこの店を訪れては食事や撫でてもらう時間を過ごしていたが、避妊手術を受けていなかったため、店主が動物病院に連れて行き手術を済ませた。
行政や動物保護団体も、不妊・去勢手術やワクチン接種を進めており、犬たちは地域の一員として人と共に暮らしている。