
イギリス領ケイマン諸島最大の島、グランドケイマン島にのみ生息する固有種「ケイマンアオツチイグアナ(学名:Cyclura lewisi)」の野生下での個体数が、2025年現在で1000頭を超えたと報告された。
このイグアナ科のトカゲは英語で「ブルーイグアナ」あるいは「ブルードラゴン」とも呼ばれ、繁殖期に見せる美しいブルーの体色が特徴だ。
かつては「最も絶滅に近いトカゲの一種」とまで言われた本種だが、20年以上にわたる保全活動によって個体数が持ち直しつつあることが。絶滅の危機を脱したことが確認された。
一時期は個体数が5~15匹に
グランドケイマン島は、首都ジョージタウンがある西側は開発が進んでいるが、東側はほとんど手つかずで、豊かな自然が残されている。
グランドケイマン島にしかいない、固有種のイグアナがケイマンアオツチイグアナ、通称「ブルーイグアナ」である。
かつては島内に数万匹が生息していたとされるが、人間による開発や、人間が持ち込んだ猫や犬などによる捕食、車やバイクによる轢死などが重なって、大幅にその数を減らしていた。
さらに繁殖能力が低く、成熟までに数年を要することから、自然環境の変化に対する回復力がきわめて乏しいことも、個体数の回復を難しくさせていた。
1988年、イギリスの生物学者ロジャー・エイヴリー氏が現地調査を行った際、2週間で観察できた個体数がわずか3匹だったという記録が残されている。
2003年の時点でも野生下の個体数は5~15匹にすぎないと推定され、2006年には「最も絶滅に瀕したトカゲ」として国際的な注目を集めていた。
地道な保全活動の結果、個体数が1000匹を超える
こうした背景から、「ケイマン諸島ナショナルトラスト[https://nationaltrust.org.ky/our-work/conservation/blue-iguana-conservation/]」を中心に、2001年に「ブルーイグアナ回復プログラム」がスタートした。
動物園や保護団体、研究機関などが連携し、飼育下での人工繁殖と野生復帰、外来捕食動物の駆除、野外モニタリングが組織的に行われてきた。
その結果、2012年時点で野生下での個体数は約750頭にまで回復。2018年には記念すべき1,000匹目となるブルーイグアナが自然に戻され、「レネゲイド(反逆者)」という名前がつけられた。
レネゲイドのリリースは、ブルーイグアナが絶滅の危機から復活したことを示す、象徴的な出来事となったという。
その後も順調に個体数は増加し、2025年には野生下での確認数が再び1,000匹を突破したことが正式に報告された。
これを受けて、国際自然保護連合(IUCN)は最近、ブルーイグアナのレッドリストのカテゴリーを、「絶滅危惧IA類(CR)」から「絶滅危惧IB類(EN)」に再分類した。
CRは「ごく近い将来における野生での絶滅の危険性が極めて高い:絶滅寸前」、ENは「IA類ほどではないが、近い将来における野生での絶滅の危険性が高い:絶滅危機」という定義がなされている。
絶滅の危機がなくなったわけではないが、わずかながらでも遠のいたことは、地道な保護活動の成果と言っていいだろう。
繁殖期になると青さが増す「ブルードラゴン」
ブルーイグアナは最大で体長1.5m、体重14kgにもなる大型の陸棲イグアナで、体色は実は黄褐色から灰色が多い。だが特にオスは繁殖期になると、鮮やかな青色を発する。
明るい海を思わせる美しい色合いから、現地の住民や保全関係者からは「ブルードラゴン」とも呼ばれており、島の象徴的存在ともなっているそうだ。
食性は完全な草食性で、草や低木の葉、フルーツ、花びら、そして多肉植物などを食べて暮らしている。乾季にはサボテンや湿った植物から水分を摂取し、地面を掘って湿った土壌で涼を取ることもある。
一方で繁殖能力は高くなく、雌が産卵するのは年に1回、1度に10~20個の卵を土中に産み落とす。
孵化するまでには65~90日を要し、気温や湿度などの条件が適切でなければ孵化率は低下してしまう。さらに性成熟までに4~5年かかるため、個体数の自然回復には、長い時間が必要とみられていた。
ペットの「ブルーイグアナ」とは別種なので注意!
ちなみに日本のペットショップでも、「ブルーイグアナ」と呼ばれる固体が流通しているが、こちらはグリーンイグアナ(学名:Iguana iguana)の中でも青みがかった体色を持つ個体をかけ合わせて繁殖させたもの。
日本を含む世界のペット業界では、単に「ブルーイグアナ」というと、この青っぽいグリーンイグアナの名称として定着してしまっているようだ。
ペットショップでは下の写真みたいな、「ブルーイグアナ」のベビーたちをよく見かける。ちっちゃくて可愛いのだが、中身はグリーンイグアナなのでもちろん育つと巨大になる。
グランドケイマン島固有種のほうは、和名で「ケイマンアオツチイグアナ」、あるいは「グランドケイマン・ブルーイグアナ」「ケイマンアイランド・ブルーイグアナ」など、島の名前を冠して呼ばれていることが多い。
グリーンイグアナはイグアナ属、グランドケイマンのブルーイグアナはイワイグアナ(ツチイグアナ)属。近縁ではあるが違う種なので、注意が必要である。
References: Endangered ‘Blue Dragon’ of the Caymans Roars Back from the Brink as Population Climbs Above 1,000[https://www.goodnewsnetwork.org/endangered-blue-dragon-of-the-caymans-roars-back-from-the-brink-as-population-climbs-above-1000/]
本記事は、海外の記事を基に、日本の読者向けに独自の視点で情報を再整理・編集しています。