うれしいニュース。絶滅危惧種「ウンピョウ」の母子姿が偶然撮影される

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 2025年8月5日、インド森林局職員のスサンタ・ナンダ氏は、自身のSNSにこのウンピョウの貴重な映像を投稿した。

 この映像は、もともとはインドネシアでオランウータンの保全活動を行う団体によって撮影されたもの。

 ウンピョウはネコ科の中でも観察例が少ない種であり、とくに親子が揃って撮影されるのはまれである。

 彼らの行動や生態については今も不明な点が多く、このような映像記録は、ウンピョウを知る上で貴重な手がかりとなることが期待されている。

ウンピョウの母子の姿が奇跡的にカメラに捉えられた

 この映像は2024年4月9日、インドネシアのボルネオ島にあるタンジュン・プティン国立公園で撮影されたもの。

 現地でオランウータンの保護活動を行っている「オランウータン財団(Orangutan Foundation)」が仕掛けたトレイルカメラ(野生動物観察カメラ)に偶然とらえられたものだ。

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 空気のニオイでも嗅いでいるのだろうか。動画の冒頭では、顔を上げる母親と、その足元を進む2頭の子供の姿が見える。

 深い森の中、その姿は木の枝や落ち葉の色に紛れて、昼間でも見つけづらいことがよくわかると思う。

 ウンピョウは漢字で「雲豹」と書くが、これは体表の斑紋が、不定形な雲形をしていることに由来する。

 森の中で、その斑紋が見事なカモフラージュの役割を果たしていることが、改めて納得できる映像なのではないだろうか。

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 ウンピョウの体長は60~110cmほど。尾の長さは90cmに達することも。身体に比べて顔が大きめで、がっしりとしたあごと太くて長い牙が特徴だ。

 途中でカメラに気づいたのか、映像の後半では、母親がカメラのほうに真っすぐやって来る姿がとらえられた。

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「奇跡の映像」として話題に

 最初の公開当時もそれなりに話題になったようだが、今回のナンダ氏によるXの投稿は、数日で50万回に迫る再生回数を記録。SNSユーザーの間に、この美しい生き物への畏敬の念を巻き起こした。

  • なんて美しい光景なんでしょう! 人間が彼らの生息し、繁殖する場所を壊すのをやめさえすれば、絶滅の危機から個体数が回復するかもしれないのに
  • 人間が自然を破壊している現実は本当にひどいもんだよ
  • 美しい! またひとつの絶滅危惧種がここにいる。彼らを守るために尽力している人々や団体がいてくれて本当にありがたい
  • わあ、すごい! この模様、完璧なカモフラージュになってるね
  • カメラに近づいて来るなんて、好奇心が旺盛だ
  • 何を見ているのか気づいた瞬間、息をするのも忘れてしまった。最後の1頭が立ち上がってカメラをのぞき込んだときってば!
  • 彼らは本当に美しいよ。人間のせいで絶滅の危機にある動物がたくさんいる。この流れは止めなければいけないし、もっと厳しい法律を整備すべきなんだ
  • 自然の中で彼らが元気に暮らしている姿を見るのは、希望に満ちていて素晴らしいことだ。この命はどんな犠牲を払っても守らなければならないと思う
  • 感動したよ。ウンピョウはユキヒョウに次いで、僕が好きな大型ネコ科動物のなんだ。どうすれば彼らを救うことができるだろうか?
  • なぜ名前に「雲」がつくのかな? 高地にいるから?

ウンピョウとは?

 ウンピョウ(雲豹、学名:Neofelis nebulosa)は、ヒマラヤ山麓からインド北東部、東南アジアにかけての、標高2,000~3,000mの高地にある森林に生息するネコ科の動物だ。

 樹上棲・夜行性で単独で行動するのを好むため、人間に目撃されることは非常にまれで、ましてや今回のように複数匹が、しかも昼間に撮影されるのは大変貴重なケースだと言えるだろう。

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開発により生息地を追われ絶滅危惧種に

 現在、ウンピョウは国際自然保護連合(IUCN)によって「絶滅危惧II類」、つまり「絶滅の危険が増大している種」に分類されており、野生での個体数は1万頭未満と推定されている。

 彼らにとっての主な脅威は、伐採による生息地の森林破壊、そして毛皮や骨を目的とした密猟・違法取引だ。

 彼らが依存する熱帯雨林そのものが、急速に縮小している現実も重い。

特に東南アジアの生息地では、パーム油をとるためにアブラヤシの大規模なプランテーションが建設されている。

 加えて、ウンピョウはネコ科の中でも飼育下での繁殖が難しい種として知られており、動物園や保護施設などでも、出産や子育てが成功する例は限られている。

 野生下での繁殖状況も不明な点が多く、今回のように子どもを連れた母親が映像で記録されるのは非常に稀なケースなのだ。

 今回のこの映像は、ウンピョウという美しい生き物の貴重なビジュアルを提供するだけでなく、その生息地を守る保全活動の重要性にも思いを馳せさせてくれる。

 専門家たちは彼らの種の存続のために、国境を越えた野生動物回廊や保護区の整備の必要性を訴え続けてきた。

 ウンピョウの保全の取り組みが続く一方で、彼らの生息地の喪失は今も進んでいる。映像が語るのは、人間の手の届かない森の中で、彼らの命の営みが確かに続いている証なのかもしれない。

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