うれしいニュース。野生で絶滅したバーバリライオンの赤ちゃんが4頭誕生(チェコ)

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 野生では絶滅したとされるライオンの一種、「バーバリライオン」の赤ちゃん4頭が、チェコの動物園で誕生した。

 生まれたのはメス3頭とオス1頭。

バーバリーライオンは野生化では絶滅したとされ、世界的にも飼育個体が200頭未満とされる希少なライオンの一亜種である。

 今回の出産は国際的な血統管理計画の一環として行われたものだ。

 将来的に彼らをかつての生息地に戻し、野生での復活を実現するための一歩になることが期待されている。

チェコの動物園でバーバリライオンの赤ちゃんが誕生

 2025年1月、チェコ共和国にある動物園、「ドヴォル・クラーロヴェ・サファリパーク[https://safaripark.cz/] 」で、かつて北アフリカに生息しながらも野生では絶滅したとされる、バーバリライオン (学名:Panthera leo leo) の子ども4頭が誕生した。

 誕生したのはメス3頭とオス1頭で、母親はカリラ、父親はバート。

 バーバリライオンは、世界でも飼育個体が200頭未満とされる極めて希少な種で、動物園関係者や保全団体にとって大きな成果となった。

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野生下では絶滅した「バーバリライオン」とは

 バーバリライオンはライオンの亜種で、かつてはモロッコからエジプトにかけての北アフリカ、特にアトラス山脈一帯に生息していた。

 たてがみが大きく発達し、肩から腹部にかけて覆いかぶさるような姿が特徴で、他のライオンよりも堂々とした風貌を持つとされる。

 古代ローマ時代には円形闘技場での見世物に使われ、中世には王侯貴族の象徴として珍重された歴史もある。

 しかし、19世紀以降の過剰な狩猟と生息地の喪失により数は激減。野生で撮影された写真は、1925年のものが最後とされている。

 1942年に最後の野生個体が人間の手で射殺された記録があり、その後も何度か目撃談はあるものの、野生下では1960年代半ばに完全に姿を消したと考えられ、現在では国際的にも「野生絶滅」と認定されている。

 下は1893年に撮影された、モロッコの野生のバーバリライオン。

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 その後、1996年にモザンビークのサーカスから数頭のバーバリライオンと思われるライオンが救出されたが、純血種かどうかは怪しかった。

 さらに2012年になって、モロッコの王族が所有するプライベートな動物園で、バーバリライオンの血統を受け継ぐ32頭のライオンが飼育されているのが「発見」された。

 その後、このライオンたちは、モロッコの首都ラバトの動物園に移送され、世界中の研究者や動物園との協力のもと、繁殖活動が続けられている。

 幸いなことに、彼らの地道な努力が実り、現在は少しずつ個体数も増えてきて、ヨーロッパ各地の動物園でも飼育が行われるようになってきているという。

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管理計画に基づいた繁殖プログラム

 ドヴォル・クラーロヴェ・サファリパークの発表によると、今回の出産は偶然ではなく、国際的な血統管理計画に基づいた繁殖の一環である。

 この動物園では2019年、2020年、2021年にも、同じ母親のカリラから生まれたバーバリライオンの誕生例があり、計画的にペアリングを行ってきた実績がある。

 その目的は、飼育下での計画的な繁殖で遺伝子の多様性を確保し、将来的な再導入に備えることである。

 今回の4頭も、そんな計画のもとで、カリラから誕生した子どもたちだ。父親のバートも、遺伝的に貴重な血統を持ち、国際的な血統管理計画の一環として繁殖計画の中核を担っているとのこと。

 誕生したのは1月だが、その後健康状態を見守りながら大切に育てられた後、4月からは来場客への一般公開が開始されているそうだ

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野生への復帰ヘ向けた国際的な保全ネットワークが稼働中

 現在、世界各地の動物園や保護施設で飼育されるバーバリーライオンは200頭未満と推定され、その多くはヨーロッパ、北アフリカ、中東の動物園に分散している。

 ドヴォル・クラーロヴェ・サファリパークも、この種の保全に積極的に関わっており、他の国や地域の動物園との個体交換や繁殖協力を行っている。

 今回生まれた4頭も、成長後は遺伝的な近縁関係を避けるため、将来的には他の動物園へ移される予定だ。

 その候補のひとつとして、今のところイスラエルのベエルシェバ動物園の名前が挙がっている。

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 バーバリライオンを再びもともとの生息地に戻す可能性については、政府や研究者たちの間で長年にわたり議論されてきた。

 モロッコ当局は過去に再導入への関心を示しており、2025年末から2026年初頭にかけて専門家会議を開催する予定だという。

 ただし、ドヴォル・クラーロヴェ・サファリパークの副園長ヤロスラフ・ヒャーネク氏は、「実現はかなり先の未来になる」と慎重な姿勢を崩していない。

 バーバリライオンの保全にかかわる研究者たちは、生息地への再導入の前に立ちはだかる大きなハードルを理解しているからだ。

 もともとの生息地への再導入には、十分な広さと食べ物を確保できる保護区の整備、地域住民の理解と協力、遺伝的多様性の確保、そして捕食者としてのライオンが生態系に与える影響の評価など、多くの課題が伴う。

 特に現在の北アフリカでは、人間活動による土地利用の変化や家畜との軋轢が予想されるため、社会的な合意形成が不可欠とされる。

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 ヒャーネク氏はその可能性について、「遠い未来」のことであるとはしながらも、次のように語っている。

私たちはバーバリライオンの将来について、希望を抱いています。どんな動物に対しても、このような長期的な保全のビジョンを持つことは重要です。それがなければ、動物園の存在意義自体が揺らいでしまうでしょう

 バーバリーライオンのように、野生ではすでに絶滅してしまった種を将来に残すには、飼育下での繁殖と国際的な協力が欠かせない。

 動物園は単なる展示施設ではなく、種の存続に直接関わる研究と保全の拠点でもあるのだ。

 可愛い子ライオンたちの姿は、下の動画の1:20あたりから見られる。葉はライオンのもとで、美味しそうにご飯を食べたり寛いだりする様子が愛らしい。

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 残念ながら、現時点でバーバリライオンを飼育している動物園は、日本国内には存在しない。

 現在、ドヴォル・クラーロヴェ・サファリパーク子ライオンたちは、生後7か月を迎えてすくすくと成長しているとのこと。同パークを訪れると、大人のライオンたちの群れに混じって、元気な姿を見られるそうだ。

References: Four Super Rare Barbary Lion Cubs Born At Czech Zoo In Conservation Win[https://www.iflscience.com/four-super-rare-barbary-lion-cubs-born-at-czech-zoo-in-conservation-win-80326]

本記事は、海外の情報をもとに、日本の読者がより理解しやすいように情報を整理し、再構成しています。

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