ジャワサイが絶滅に近づく。生息数残りわずか50頭に
絶滅寸前のジャワサイ Photo by:iStock

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 悲しい出来事だが、知っておくべき事実がある。

 現在、世界中に生息している野生の「サイ」の個体数の合計は、約26,700頭だという。

このうちの8割以上をアフリカに住む「シロサイ」と「クロサイ」が占めている。

 アジアにもサイは生息しているのだが、その中の一種「ジャワサイ」の個体数が、僅か50頭にまで激減していたことが判明した。

 サイがその生息数を減らしている最大の原因は、人間による密猟である。サイの角は「犀角(さいかく)」と呼ばれ、漢方薬として高額で取引されているのだ。

76頭から50頭に激減したジャワサイ

 ジャワサイはかつて、インド北東部から東南アジアにかけて広く生息していたが、現在ではインドネシアのジャワ島西部にある、ウジュン・クロン国立公園の中でしか生き残っていない。

 1988年にベトナムでも数頭が生き残っているのが発見されたが、2011年10月に最後の個体が密猟のために殺され、ベトナムのジャワサイは絶滅してしまった。

 その後の保護活動によりウジュン・クロン国立公園内では繁殖も確認され、2021年には合計の生息数が76頭と記録されていた。

 だがそれから3年後の2024年、IUCN(国際自然保護連合)の調査によって、ジャワサイの生息数は50頭へと、3分の2に激減していたことが判明した。

 IUCNの報告書によると、地元の密猟グループによって、26頭のジャワサイが殺害されたという。

 予断を許さない数字ではあるが、国際サイ財団(IRF)[https://rhinos.org/]の事務局長ニナ・ファッショーネ氏は、まだ希望はあると語る。

ジャワサイの数は、過去にもっと少なかったことがあります。1967年に行われた最初の調査では、わずか26頭しか確認されませんでした

 国立公園内にはレンジャーが常駐しているが、それにもかかわらず密猟者たちは、長期間にわたってサイの密猟に手を染めて来た。

 密猟が後を絶たないのは、今も犀角(さいかく)が非常な高額で取引されているからだ。

 漢方薬としてはもちろん、ステータスシンボルとしての需要も高まっているそうだ。

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 ファッショーネ氏は、多くの警備改善策が取られたと述べる

現在では、密猟がはびこっていた数年前には存在しなかった、多くの新しい対策が実施されています。

世界中の注目がこの種に集まっており、密猟が起こった当時よりも状況は良くなっていると確信しています

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密猟グループが摘発され6人が有罪に

 その言葉を裏付けるかのように、監視カメラの映像から、近隣の村に住む密猟者や取引業者13人が一斉に逮捕された。彼らは過去5年間で、18~26頭のサイを殺したと自白したという。

 そして2025年1月、インドネシアの裁判所は、この密猟事件の被告6人に有罪の判決を下した。

 6名のうち5名は懲役11年と1億ルピア(約88万5,000円)の罰金。主犯格の1人には、懲役12年と1億ルピアの罰金が科されたという。

 この判決を受けて、ファッショーネ氏は次のように述べている。

この判決で、希少なジャワサイ26頭という悲劇的な死を覆すことはできませんが、強力な前例となり、インドネシアの野生生物を脅かす者たちに明確な警告を発するものです。

このような事件において適切な法が執行されることは、サイを将来の密猟から守るために不可欠です

 ジャワサイはアフリカのクロサイやシロサイなどとは違い、角が1本しかないのが特徴で、メスは角を持たないものも多いという。

 角が目当ての密猟グループは、オスのサイを主に狙っていた。今回発覚した26頭も、ほとんどがオスだったという。

 そのため、生き残ったサイたちのオスとメスのバランスが崩れてしまい、今後の彼らの繁殖活動に大きな影響を及ぼす可能性がある。

ジャワサイは大型種で繁殖が遅く、この悲惨な損失から回復するには長い時間がかかるでしょう。

しかし、私たちは過去にもジャワサイを絶滅の淵から救い出してきましたし、今回も必ずやり遂げます

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 実はジャワサイの生息数は、ここ数十年で緩やかに、だが確実に増加の傾向を見せていた。

 1960年代には20頭台だったものが、1990年代には50頭を超え、2021年の76頭へとつながっていたのだ…今回の密猟者たちが現れるまでは。

良いニュースとして、ここ2年でジャワサイの赤ちゃんが6頭生まれました。彼らは必要なことをしているのです。私たちは彼らを守らなければなりません

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ジャワサイだけではない、スマトラサイも絶滅の危機

 実は絶滅寸前なのは、ジャワサイだけではない。同じ東南アジアに生息する「スマトラサイ」の野生での生息数は、さらに少ない34~47頭と推定されている。

 幸いにして、スマトラサイは飼育下での繁殖に成功し、現在11頭が飼育されているという。

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 IRFではこれまでも、インドネシアにおけるジャワサイやスマトラサイの保護を長年にわたって支援してきた。

 今回の密猟者たちの摘発に関しても、さらなる全容の解明と、より強力な密漁防止のための政策の実現を、インドネシア当局に強く求めていくという。

この挫折にもかかわらず、ジャワサイは野生で繁殖を続けています。より強固な保護策と揺るぎない取り組みがあれば、彼らの回復を確実なものにできます。



今回の厳しい刑罰は、インドネシアで二度とサイが密猟されないようにするための極めて重要な一歩です。

サイを本当に救うためには、密猟危機を食い止め、個体群を強化するための生物学的管理を改善する必要があります

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References: More Justice for Javan Rhinos[https://rhinos.org/blog/more-justice-for-javan-rhinos/] / Javan rhino numbers plunge; Sumatran rhinos remain near extinction: Report[https://news.mongabay.com/2025/08/javan-rhino-numbers-plunge-sumatran-rhinos-remain-near-extinction-report/]

本記事は、海外の記事を基に、日本の読者向けに独自の視点で情報を再整理・編集しています。

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