
ロシアの侵攻が始まってから3年半がたった今も、ウクライナではミサイルやドローンによる攻撃が日常的に続いている。
攻撃が始まると、政府や自治体は空襲警報を発令し、住民たちは建物の地下駐車場などを即席の爆撃シェルター(空襲や爆撃から身を守るための避難場所)として利用し、そこに避難する。
南部の港湾都市オデーサで暮らす茶トラ猫は、何度も繰り返される空襲警報により、爆撃シェルターへの避難経路を完全に覚えた。
警報が鳴ると、猫は真っ先に行動を起こす。飼い主夫婦の先頭に立ち、時おり後ろを振り返りながら通路を駆け抜け、夫婦を安全な場所へと導いていくのだ。
保護施設から引き取った運命の猫
ウクライナ・オデーサで暮らすヴィクトリヤ・イルキフさん(32歳)と夫は、現在5歳になる茶トラの猫と暮らしている。
夫は以前から茶トラ柄の猫を飼いたいと願っており、3年以上前、保護施設のSNSで茶トラの猫が新しい家族を探しているという投稿を見つけた。
夫妻が施設を訪ねると、そこには25匹の猫が暮らしており、好きな子を選んでいいと言われた。すると、その茶トラ猫が真っ先に近づき、夫婦の腕の中に飛び込んできたという。
元の飼い主は病気で亡くなったとのこと。イルキフさん夫妻はその瞬間、「この子だ」と運命を感じ、迷わず家に迎え入れた。
最初は緊張していたが、やがて新しい生活にも慣れ、深い信頼関係が築かれていった。
空襲警報が鳴ると、真っ先に動いて夫婦を避難場所に誘導
ロシアによる攻撃が激しさを増す中、イルキフさん夫妻は避難の際には必ず猫を連れて行くようになった。
最初の頃は抱きかかえて避難していたが、何度も同じルートを通るうちに、猫は自ら避難ルートを覚え、先導するようになった。
今では空襲警報が鳴ると、真っ先に玄関へ向かい、飼い主に視線を送り、ついてくるように促す。そして駐車場の地下にある爆撃シェルターまでの通路を、迷うことなく進んでいく。
「この子の賢さと繊細さには本当に驚かされます。訓練は何もしていないんです。ただ何度か一緒にシェルターへ行っただけ。警報が鳴ると、猫は私たちの様子を見て、反応を待ちます。爆発音にも動じません」とヴィクトリヤさんは語る。
飼い主たちも、空襲警報が鳴った時にはできるだけ落ち着いて行動するように心がけている。猫が不安を感じないよう、やさしく撫でたり抱きしめたりして、「大丈夫だよ」と伝えることを忘れない。
避難解除後は自宅まで夫婦を誘導
さらに凄いのは、避難解除になりシェルターから出る時も、夫婦を部屋まで誘導するのだ。
猫はどこでエレベーターに乗り、何階で降りればいいのかを完璧に覚えている。
「警報が解除されて、人々が帰り始めると、猫は『もう帰れるんだ』と理解して、先にエレベーターへ走っていきます。もし他の住人が途中の階で降りても、『そこは違う』とわかっていて、自分たちの階までちゃんと一緒にいます。たった数回で全部覚えてしまいました」
家に戻るとごほうびおやつが待っている
猫は避難中は何も食べたがらないという。
飼い主は、猫のストレスを和らげるために、避難後は、特別なごほうびおやつを与えているのだ。
イルキフさん夫妻は引き取って以来、常に猫に愛情を注いできた。怒らずに、常にやさしく言葉で話しかけるという。
もともと持って生まれた性格もあるのだろうが、猫はいたずらもしないし、トイレや爪とぎの場所、寝る場所もちゃんと理解しているという。
家に夫婦がいないときに警報が鳴った場合は、ベッドの下に隠れて避難していることも、見守りカメラ映像で明らかになっている。
常に戦火に怯えて暮らす日々はさぞ辛いことだろう。
だが夫婦は猫の存在が、明日を生き延びるための力となっている。そして猫も夫婦を守ることを自分の使命として、過酷な日常を懸命に生きているようだ。
References: Life.pravda.com.ua[https://life.pravda.com.ua/society/istoriya-kishki-z-odesi-yaka-vivchila-dorogu-do-bomboshovishcha-309380/?]
本記事は、海外の情報をもとに、日本の読者がより理解しやすいように情報を整理し、再構成しています。