盗まれては戻ってくるセスナ機、しかも修理までされているという謎の事件
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 アメリカ、カリフォルニア州で、小型飛行機(セスナ)が繰り返し盗まれながらも、なぜか修理された状態で戻ってくるという前代未聞の事件が起きている。

 持ち主の75歳男性は、盗難防止のためバッテリーを取り外したにもかかわらず、飛行機は再び姿を消し、別の空港に現れた。

 なんとセスナには新しいバッテリーが装着されていたという。

 犯人は誰なのか、そしてなぜこんな奇妙な行動を取っているのか。警察も持ち主も困惑する謎の事件に迫っていこう。

誕生日に愛機が消えているに気が付いた持ち主

 2025年7月28日、カリフォルニア州、ヨーバリンダに住むジェイソン・ホンさん(75歳)は、自身の誕生日を記念して、1958年製の愛機「セスナ・スカイホーク」[https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%BB%E3%82%B9%E3%83%8A_172]を見に、同州コロナ市にある民間空港「コロナ・ミュニシパル空港」に向かった。

 こういった空港は主に個人所有の小型機や飛行訓練用の機体などが利用する地方の小規模な空港である。

 だが、格納していたはずの飛行機は忽然と姿を消していた。

 施錠されていたセスナの格納庫に誰かが侵入した痕跡はなく、飛行機だけが姿を消していたという。

 ホンさんはすぐにコロナ市警察に通報。「もう戻ってこないだろう」と半ば諦めていた。

消えたセスナ機が別の空港に!?

 ところが翌日、ラバーン市の警察から連絡が入る。なんとコロナ市から37km離れたラケット・フィールド空港で、ホンさんのセスナが発見されたというのだ。

 ブラケット・フィールド空港も、コロナの空港と同様に定期便のない一般航空用の民間空港で、セスナやヘリコプター、飛行学校の訓練機などが主に使っている。

 つまり、ホンさんの飛行機は、特に目立つことなく空を飛び、別の民間空港に着陸していたことになる。

 誰かが飛行機を操縦して運び、きちんと駐機していたのだ。

 ホンさんは、不可解な状況に困惑しつつも、再び盗難が起きないよう、セスナのバッテリーを取り外してその場を後にした。

 バッテリーがなければ、もう飛ばせないだろうと考えたからだ。そして翌週末に点検を行う予定で現地を後にした。

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セスナ機がまた乗っ取られる。バッテリー交換、整備済み

 しかし2025年8月3日、点検のためブラケット・フィールド空港を訪れたホンさんは驚愕する。セスナはまたしても姿を消していたのだ。

 間もなくして、エルモンテ市の警察から電話が入る。行方不明だった機体が、こんどは、そこから24km離れたサンガブリエル・バレー空港で発見されたという。

 現地に到着してさらに驚いた。なんと、外したはずのバッテリーが装着されていたのだ。

 犯人は十万円ちかくする新品のバッテリーを取り付け、再び飛行機を操縦と思われる。

 そして飛び立った後、また別の空港に置いていった。

しかもセスナにはきちんと整備された形跡もあったという。

 これは単なる悪質なイタズラとも思えない。 

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フライト記録から過去に何度も乗っ取られていたことが判明

 念のためにホンさんは、航空機追跡サイト「Flight Aware[https://www.flightaware.com/ja-JP/]」で調べたところ、7月中に自分のセスナが複数回空を飛んでいた記録が残っていた。

 「普通の泥棒は金目の物を狙う。でもこれは違う。まるで窓を壊して侵入し、帰るときには新品のガラスに取り替えていくようなものだ」とホンさんは語る。

 セスナの操縦には免許と訓練が必要であり、特に着陸には熟練が求められる。さらに、適合するバッテリーを選び、取り付けるには整備の知識が不可欠だ。

 つまり、犯人は飛行技術と整備知識の両方を持つ人物である可能性が高い。

 そしてセスナを乱暴に扱うのではなく、飛ばしては整備し、また戻すという常識外れの行動が繰り返されていた。

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犯人の目的は? 

 犯人はいったい誰なのか? なぜセスナを盗み、整備して返すような奇妙な行動を繰り返しているのか?

 しかもそのセスナであちこちの空港に移動していた事実も彼を困惑させている。

 今のところ犯人の身元は判明していないが、サンガブリエル・バレー空港の利用者から、気になる目撃情報が寄せられている。

 それは「慎重160cmほどの中年女性」が何度かセスナの操縦席に座っていたというものだった。

猛暑の日にもかかわらず、冷房の効いた建物ではなく、なぜか冷房のない機内で長時間過ごしていたという。

 当時は特に不審には思わなかったが、いま振り返れば異常な行動だったと、その利用者は証言している。

 現在、ホンさんは飛行機をチェーンでしっかり固定し、さらなる盗難に備えている。だが、警察の捜査も進展していない。

 防犯カメラに記録はなく、指紋や証拠も見つかっていないという。

 コロナ市警察のモンタネス巡査部長も、「この飛行機は、まるで魔法のように現れては消える。本当に奇妙な事件だ」と語る。

 誰かが何度も飛行機を盗み、修理し、別の空港へ置いていく。そこに金銭的な動機は見当たらず、行動の一貫性も不明。

 ただひとつ確かなのは、飛行機が毎回ちゃんと戻ってきていることだけだ。しかもきちんと整備されて。

追記(2025/08/19)本文中の誤字を訂正して再送します。

References: Someone keeps stealing, flying, fixing and returning this California man’s plane. But why?[https://www.latimes.com/california/story/2025-08-08/mystery-plane-thief] / Nypost[https://nypost.com/2025/08/10/us-news/mystery-plane-thief-keeps-taking-vintage-plane-for-joyrides-returning-it-repaired/]

本記事は、海外の記事を基に、日本の読者向けに重要なポイントを抽出し、独自の視点で編集したものです。

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