水浴びする子トラを見守り続ける母トラ 片時も目を離さない愛情に感動が広がる
@susantananda3

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 インドの自然保護区で撮影された心温まる映像が話題を呼んでいる。

 浅い水たまりに身を沈める3頭の子トラたちの近くで、母トラが常に子どもたちの様子を見守っている。

 子トラたちは静かに水につかっているようで、もしかしたら母トラに、暑さや寄生虫対策として水場に導かれた可能性もある。

  自分は水につからず、時おり水を飲みながら、子どもたちのそばを片時も離れない母トラ。その姿には、子どもを思う強い愛情があふれている。

水場につかる3頭の子トラを見守り続ける母トラ

 元インド森林局(IFS)の職員、スサンタ・ナンダ氏は、インドに生息するベンガルトラの親子の様子をX(旧Twitter)に投稿した。

 そこには、水たまりにつかる3頭の子トラたちと、それを見守る母トラの姿が映っていた。

 母トラは自ら水に入ることはなく、水場のふちに立ってじっと子供たちの様子を見つめている。水を飲むときも子供たちの様子を監視するのを怠らない。

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トラが水に入る理由

 ナンダ氏は「母の目は眠らない」とコメントし、インドのような高温多湿の地域に住むベンガルトラにとって水が重要な意味を教えてくれた。 

体温を下げるため
ベンガルトラは、暑さの厳しい環境に生息している。気温が上がる日中には、水に浸かって体を冷やすことで、熱中症や脱水を防いでいる。これは人間がプールに入って涼を取るのと同じような行動といえる。

皮膚の衛生を保つため
トラは、水に入ることで皮膚や被毛についた汚れや寄生虫を洗い流している。とくに野生下では、虫刺されや感染症のリスクを減らすことが、命を守ることにもつながる。

体力の消耗を抑えるため
水につかることで筋肉の緊張がゆるみ、過剰なエネルギー消費を防ぐことができる。

暑さで動き回るよりも、水の中でじっとしているほうが効率よく体力を温存できる。

泳ぎが狩りや移動に役立つため
トラは優れた泳ぎの能力をもち、必要に応じて川を渡ったり、獲物を追って水中に入ることもある。水辺はトラにとっての障害ではなく、むしろ行動範囲を広げる武器にもなっている。

 一般的なイエネコは水を好まないが、自然の中に生きるベンガルトラにとって水は命を守るための欠かせない存在なのだ。

 今回のケースでは、母トラは子どもたちを暑さから守り、皮膚の衛生を保つために水場へと導いたのだろう。まるでお風呂に入れているようにも見える。

 それはまさに、母が子を思う愛情からくる行動にほかならない。

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 母トラは、自分の体をぬらすことなく、ひたすら子どもたちの安全を見守っていた。そこには母親としての強い覚悟と優しさが込められている。

 親が子を思う気持ちは、種を超えて、真っすぐに胸を打つ。

ベンガルトラとは?

 ベンガルトラ(学名:Panthera tigris tigris)は、トラの6つの亜種の中でも最も個体数が多く、インドを中心に、ネパール、バングラデシュ、ブータンといった南アジアに広く分布している。

 023年時点でインドには3,682頭の野生個体が確認されており、これは世界全体の約75%に相当する。

 オスの体長は約270~310cm、体重は220~300kgに達し、ネコ科動物としては最大級である。

 鮮やかな橙色の毛皮に黒い縞模様を持ち、縞の形は個体ごとに異なる。

 単独で行動し、広い縄張りを持つが、母親は子どもが自立するまでの約2年間、狩りや生き方を教えて育てる。

 水を好む珍しい性質を持ち、川や沼を泳いで移動するほか、暑さをしのいだり、寄生虫を洗い流したり、獲物に気付かれずに接近する際にも水場を活用する。

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 現在は森林伐採や密猟により生息数が減少しており、IUCN(国際自然保護連合)のレッドリストでは「絶滅危惧種(Endangered)」に分類されている。

 インド政府は1973年から「プロジェクト・タイガー」を立ち上げ、保護区の整備や監視体制の強化を進めているが、違法取引や生息地の分断といった課題は依然として残されている。

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