
コスタリカ沖のカリブ海で、これまでに例のない鮮やかなオレンジ色をしたコモリザメが発見された。
この個体は、トルトゥゲーロ国立公園沖の水深約37mの海で釣り上げられたもので、全長は約2mに達する成体だ。
通常は灰褐色のはずの体色が、鮮やかな明るいオレンジに染まっていただけでなく、両目は白くアルビノの特徴を示していた。
研究者たちは二重の色素異常が重なった例ではないかと指摘しているが、2つの色素異常を併発しながらどうやって成体になるまで生き延びたのだろうか。
オレンジ色の体と白い目を持つコモリザメ
このサメはトルトゥゲーロ国立公園沖の水深約37mの海中から、スポーツフィッシングのツアーに参加していたグループによって釣り上げられたという。
2024年8月21日、Facebook[https://www.facebook.com/ParisminaDomusDei/posts/pfbid0NVAEUmHxmNaER3CsYXfkq9Atq4pEqLbuYrGXBaX6WLod7eJzvdNtEih5nXHsY5pnl]で共有された写真を見ると、暗い海面と鮮やかなオレンジ色のコントラストが実に印象的だ。
これまでカリブ海のサメやエイなどの軟骨魚類で、このような体色が確認された例はないそうだ。
さらに、下の画像からもわかるように、この個体は「白い目」というアルビノの兆候も持っており、両者が同時に現れた点は極めて異例なんだとか。
2025年8月1日、ブラジルのリオグランデ連邦大学の研究チームが、学術誌「Marine Biodiversity[https://link.springer.com/article/10.1007/s12526-025-01558-5]」にこのサメについての研究結果を発表した。
研究チームによると、このサメのオレンジ色の外見は、赤色色素の欠乏によって黄色や黄金色が過剰に表れる「黄色色素異常症(キサントクロミア)によるものと考えられている。
この色素異常はオウムやカナリアなどの鳥類や、ヘビやトカゲといった爬虫類、グッピーやベタ、金魚などの淡水魚、カエルなどの両生類では時々見られるものだ。
通常は遺伝的要因によるとされるが、研究チームは「近親交配、環境ストレス、水温上昇、ホルモンの不均衡なども影響する可能性がある」と指摘している。
しかし、今回のようにアルビノの兆候と同時に発現する例は、ほとんど知られていないという。
二重の色素異常を持ちながら成体になるまで成長した謎
通常のコモリザメは褐色の体色と暗い色の目を持っており、海底ではその色がうまくカモフラージュの役割を果たし、捕食者から身を隠すと同時に、獲物を待ち伏せするのにも役立っている。
こちらが普通のコモリザメだ。
だがこのサメのように派手なオレンジ色の身体は、カモフラージュどころか海の中で目立ちまくっており、生存に極めて不利になるはずだ。
また、アルビノはメラニンが欠如することで、皮膚やウロコ、体毛の色が白くなり、目は白または赤を呈する。
アルビノもその特徴から自然界では目立ちやすく、捕食者の目に留まりやすい。さらに日光に敏感になり、繁殖上も不利になるとされる。
だが今回のサメは体長が2m近くあり、間違いなく成体であることが確認されている。いったいどうやって、これまで生き延びてきたのだろうか。
この発見は、少なくともコモリザメにおいて黄色色素異常症が生存を妨げるものではないことを示唆しています
研究チームは論文の中で、このように記している。過去にはアルビノやまだら模様のコモリザメが報告された例はあるが、完全な黄色色素異常症が確認されたのは今回が初であり、カリブ海全体でも最初の事例だそうだ。
二重の色素異常を持つこのサメが、どのようにして成体になるまで生き延びてきたのかは、今後の重要な研究課題となるだろう。
狩りの方法を変えたのか、新たな隠れ場所を見つけたのか、あるいはむしろ色素異常が有利に働いた可能性はないのか。
さらに研究チームは、このサメが単発の突然変異なのか、それとも地域個体群における新たな遺伝的傾向を示すのかを調査する必要があるとしている。
なお、このサメはその場でツアーの参加者によって観察された後、再び海へと戻され、元気に泳ぎ去っていったという。
References: First-of-Its-Kind Bright Orange Nurse Shark Recorded Off Costa Rica Makes History[https://www.iflscience.com/first-of-its-kind-bright-orange-nurse-shark-recorded-off-costa-rica-makes-history-80482]
本記事は、海外の情報をもとに、日本の読者がより理解しやすいように情報を整理し、再構成しています。