
顔の左右で毛色がくっきりと分かれた「キメラ猫」は、度々ネット上で話題となるが、マンティス(日本語でカマキリの意味)という名の子猫が注目を集めている。
1匹なのに2匹が合体したようなその姿がちょこちょこと愛らしく動く様子が撮影された動画はTikTokアカウント、@saida_ary[https://www.tiktok.com/@saida_ary]に投稿され、世界中の視聴者が驚きとときめきをメモリアルしちゃってる。
顔の中心から2つの毛色に分かれた子猫
マンティスの顔半分は茶色で目の色も茶色、もう半分はトータスシェルと呼ばれる、黒の被毛と赤の被毛が入り混じった錆色で、目の色はブルーだ。
錆色の方は黒が強めなので、そのコントラストがくっきりしている。
その神秘的な容姿が世界中の視聴者の心をつかみ、その成長の様子を見ようと、19万人ほどのフォロワーがいる。
投稿には「本当にこんな猫がいるのかと目を疑った」「絵に描いたような美しさ」といったコメントが寄せられている。
猫の顔が左右で分かれる「キメラ猫」とは?
マンティスのように、顔の左右で毛色が大きく異なる猫は、「キメラ猫(Chimera cat)」と呼ばれることがある。
これは見た目だけの呼び名ではなく、生物学に基づいた現象で、異なる遺伝情報を持つ2つの胚(受精卵)が、母猫の子宮内でごく初期に融合し、1匹の猫として成長することを指す。
2つの胚がそれぞれ異なる毛色の遺伝子を持っていた場合、融合後の猫の体にはその両方の特徴が現れる。
その結果、マンティスのように、顔の片側がトーティシェル(黒とオレンジが混ざったさび色)、もう片側が明るいオレンジといった、はっきりとした左右非対称の毛色になることがある。
そもそも「キメラという言葉は、ギリシャ神話に登場する怪物キマイラに由来している。
キマイラは、ライオンの頭、ヤギの胴体、ヘビの尾を持つとされる伝説上の存在で、異なる生き物の要素が一体となった姿として描かれてきた。
この神話になぞらえて、生物学では異なる遺伝子を持つ細胞がひとつの体に共存している状態を「キメラ」と呼ぶようになった。
また、左右で目の色が異なる「オッドアイ」もキメラ猫に見られる特徴のひとつだが、これは他の遺伝的要因でも起こりうるため、見た目だけでキメラかどうかを断定することはできない。
実際にキメラかどうかを調べるには、DNA検査などの遺伝子解析が必要となる。
オスの三毛猫に見られるキメラの例
キメラは見た目の面だけでなく、性別や染色体にも関係する場合がある。
通常、黒とオレンジの毛色が混ざった三毛模様やサビ模様は、2本のX染色体を持つメス猫にしか現れない。
オスで三毛模様になる理由にはいくつかの可能性があり、そのひとつがキメラ現象である。
たとえば、2つの受精卵が妊娠初期に融合し、それぞれが異なる毛色の遺伝子を持っていた場合、1匹の猫の体に複数の毛色が現れる。
このような状態をキメラと呼び、見た目には三毛模様としてあらわれることがある。
もうひとつの原因として知られているのが、性染色体に異常がある場合である。
通常のオスはXY染色体だが、まれにXXYの構成になることがあり、これをクラインフェルター症候群と呼ぶ。
この染色体構成では、オスでありながら黒とオレンジ両方の毛色の遺伝子を持つことが可能になり、結果として三毛模様が現れる。
クラインフェルター症候群は、人間にも猫にも見られる遺伝的な異常であり、猫の場合は特にオスの三毛猫やサビ猫に関係していることで知られている。
米カリフォルニア大学デービス校のレスリー・ライオンズ教授によれば[https://basepaws.com/blog/chimera-cats-genetics]、オスの三毛猫にはこうしたキメラや染色体異常など、複数の遺伝的な要因が関与しているケースが多いという。
キメラ猫の寿命や健康は?
では、キメラ猫であることが健康や寿命に影響するのだろうか?
これについては、基本的にキメラ猫の寿命は一般的な猫と変わらないとされている。
キメラであることは、体の中に異なる遺伝情報を持つ細胞が混在しているというだけで、病気ではない。そのため、特別な疾患がない限り、普通の猫と同じように成長し、15年以上の寿命を持つことも十分に可能だ。
ただし、キメラと染色体異常が同時に見られるような場合には、内臓や生殖器に影響が出ることもあり、寿命に間接的な影響がある可能性も否定はできない。
それでも、キメラ猫そのものは健康的に問題がないケースが多く、ユニークな見た目とともに、普通の猫と同じように元気に暮らしていける存在だと言える。