ドライバーの怒りを発散させるため、バーチャル絵文字の発射機能を搭載した車
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 運転中にカチンときた車に絵文字を投げつけストレス発散?中国の電気自動車(EV)メーカーが開発した新機能がSNSで物議をかもしている。

 その名も「ロードレイジ・リリーバー」は、あおり運転などを生む怒りの感情を”発散させて緩和する”ためのもの。

 ドライバーは前を向いたまま、ムカつく車にAR(拡張現実)のデジタル絵文字をぶつけられる新機能だ。

 当のメーカーXPeng(シャオペン)は、これを「感情的安全技術」と発表するも、一部研究者からは真逆だという指摘ももある。

ドライバーの怒りの感情「ロードレイジ」

 日本でも問題となっている「あおり運転(妨害運転)」。海外ではこうした危険行為の要因となるドライバーの「怒りの感情」を「ロードレイジ」と呼んでいる。

 海外でロードレイジから生じるのはあおり運転だけではない。日本ではあまり見ない行為だが、怒りに任せて窓からモノを投げつけたり、より物騒な国では、車線変更の際に武器を突きつける恐ろしい行為が横行している。

 運転中に”イラっとした”、または”カッとなった”。ただそれだけで、無関係なドライバーが巻き込まれる多重事故やいきなり人が殺されるような現状に、どの国も悩まされているのだ。

車にデジタル絵文字をぶつけるロードレイジ・リリーバー

 そんな中、中国のEVメーカ XPeng(小鵬汽車:シャオペン) が発表した新システム「ロードレイジ・リリーバー」に注目が集まっている。

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 このシステムは、車のフロントガラス全体に広がるAR(拡張現実)ディスプレイを通じて、前方の車にデジタル絵文字をぶつけられる、というもの。

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 これを使えば、ムカつく車に向けて、怒った顔や動く靴の絵文字が投影される。当然ながらぶつけられた車のほうには気づかれないし、車同士の接触や損傷なども起きない。

 つまりドライバーに蓄積した怒りを、架空の攻撃、あるいはちょっとしたゲーム感覚で発散してやろうというわけだ。XPengはこれを「感情的安全技術」として公開している。

ボタンを押せば何でも車にぶつけられる

 2025年8月10日に発表されたロードレイジ・リリーバーは、付近の車両を追跡する車載カメラ、ハンドル上のカスタマイズ可能なボタン、および絵文字が、30 フィート(約9m)先に浮かんでいるように見える 3D レンダリング システムを介して機能する。

 その際、ドライバーは、所定のボタンを押すだけで、憎きドライバーの車に向けて怒った顔やビーチサンダル、さらには豚の絵文字まで、何でも投げつけられる。

 その様子は、まるで現実に起こっているかのよう。前の車にぶつかった衝撃で砕けたり、爆発するところもフロントガラスの前のデジタルパネルにアニメで反映される。

  XPeng の CEO 、 He Xiaopeng 氏によると、このシステムは、「テクノロジー主導の感情」を表すもので、ドライバーが「文明的なフラストレーションを体験する」のに役立つという。

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ロード レイジの増加と暴力化が深刻に

 このアイデアに失笑する人もいそうだが、デジタルパブリッシング VICE Digital によると、近年ロード レイジは世界的に増加の一途をたどり、かつ暴力的になっている。

 アメリカでは2024年、ロードレイジによる銃撃で116人が死亡。負傷にいたっては360人を超える。

 怪我をせずとも被害を受けたドライバーはさらに多く、目撃者にいたっては大多数にのぼるほど事態は深刻だ。

 また英国の金融系ウェブサイトThisismoneyも、近年の調査で英国のドライバー1000人のうち4分の3以上が、過去12か月間に、衝突や車線変更時のトラブル、車間距離の詰めすぎから生じた怒りからの罵倒や口論といった事件に巻き込まれたことがあり、半数以上がクラクションを鳴らされた、と報じている。

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カーナビのディスプレイを見るより安全

 それにしてもこんなことをしながら運転に集中できるのだろうか?

 XPengのロードレイジ・リリーバーは、Huawei(ファーウェイ)の光学チームとの共同開発によるもの。歪みも計算に入れているためフロントガラスの投影が景色の一部に思えるほどなじんで見える。

 その結果、現実の風景を背景に、アニメのように機能するフロントガラスが実現。同社によると、このARシステムは、ドライバーの視線を前方に保つため、カーナビのディスプレイを見下ろすよりも安全だという。

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ARディスプレイ自体が注意散漫を招くとの指摘も

 いくつかの研究がそれを裏付けてるが、一方で真逆の研究も存在する。

 それは、いら立つドライバーが、他の車に絵文字投げに夢中になることを危惧するもの。

やはりARディスプレイ自体が注意散漫を招く可能性があるという指摘だ。

 それでもXPengは、近々中国市場限定で発売予定のP7セダンに、この”安全システム”を搭載すると明かしており、「積極的にどんどん使って欲しい」としつつ「使用の際に安全かどうかの判断はドライバーの責任」と述べている。

 同社は現在、ヨーロッパに G6 という 中型のEVクーペモデル(約800万円~)を提供中だが、ドライバーの不注意がすでに大問題となっているヨーロッパで、このシステムが利用可能になれば、警鐘が鳴らされることになりそうだ。

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実際の効果はまだ不明

 不満や不快を募らせたドライバーの運転は事故を招きやすい。そこで用意されたこのシステムは、実害を抑えるためのはけ口なのだろう。

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 ロードレイジ・リリーバーの実際の効果のほどはまだわかっていない。

 だが、多くの車に搭載されれば、怒りのあまり他のドライバーにすれ違いざま飲み物を投げつけるようなはた迷惑な暴挙や、ダイレクトに銃で撃ってくるような危険行為はある程度減るかもしれない。

 少なくとも、これまでしょっちゅうあった警察への通報の数は減りそうだ。

 かといって、交通渋滞や悪質なドライバーを減らすわけでもなく、キレやすくなってる人々の忍耐力を上げてくれるものでもない。ましてや、あおり運転の効果的な予防になるとはちょっと考え難い。

 いくらぶつけても実際の相手には伝わってないわけで、態度を変えないドライバーにさらに怒りが増幅したりするケースもありそう。

 これで突発的な怒りのレベルが下がるかどうかはドライバー次第というところかな。

References: VICE[https://www.vice.com/en/article/drivers-can-now-launch-emojis-at-each-other-and-it-might-save-lives/] / Nypost[https://nypost.com/2025/08/21/lifestyle/car-company-creates-hilarious-tool-to-avoid-road-rage-incidents/] / Thisismoney.co.uk[https://www.thisismoney.co.uk/money/cars/article-15010823/Road-rage-throwing-virtual-emojis-Chinese-carmaker-Xpeng.html]

本記事は、海外の情報をもとに、日本の読者向けにわかりやすく再構成し、独自の視点で編集したものです。

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