19世紀の英国要塞を大豪邸にリノベーションした島が絶賛売り出し中

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 イギリスのウェールズ沖に浮かぶビクトリア朝時代の要塞、「ソーン島」が丸ごと売りに出されている。

 元ソフトウェアエンジニアの手で、豪華な「プライベート・アイランド」として生まれ変わったこの歴史的な要塞。

 アクセスは海からボートでのみ。都会の喧騒から離れてリフレッシュするには、これ以上望むべきもない環境だ。

 希望価格は300万ポンド(約6億円)。別荘として、仲間と騒ぐ場所としては打ってつけの島をひとつ、所有してみるのはいかがだろうか。

ビクトリア朝の城砦島を丸ごと「買っちゃった」

 ソーン島はウェールズ南西のペンブルックシャー沖に位置する小さな島で、広さはおよそ約8,100平方mほど。

 岩でできた島の上には、1850年代にナポレオン三世の攻撃を阻止するため、防衛文強化の目的で建造された要塞が今も残っている。

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 2017年、イギリスのクラウドソフトウェア会社「Appsbroker Limited」の創業者兼CEOであるマイク・コナー氏は、友人に紹介されて見たYouTubeで、偶然この島のことを知った。

僕は中年で、退屈していたんです。どこもかしこも、すべてが同じように感じられていた。そんなときに友人が物件のリストを贈って来たんです。「これだ!」って思いましたね

 ソフトウェアエンジニアになる前、工業デザインやテクノロジーを教えていたというコナー氏は、ずっと歴史的な建造物の修復作業への関心を抱いていた。

 ソーン島はコナー氏にとってまるでまっさらなキャンバスのようで、彼のクリエイティブな作業への情熱を満たすには打ってつけだったのだ。

島をまるごと買って大リノベーション

 コナー氏はすぐに、この島を50万ポンド(現在のレートで約9,900万円)で購入し、リノベーションを開始した。

 購入当時、島には電気も水道といった基本的なインフラもなく、建物も湿気でかなり傷んでいて、室内には窓すらなかったという。

 コナー氏は当初、この島を改修して、自分と仲間たちが使うパーティ会場のようなものにするつもりだった。

 だが美しいレンガ造りの建物を実際に見て、快適に暮らせる豪華な住居としても使えるようにしようと決めたのだ。

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一筋縄ではいかなかった改修工事

ビクトリア様式の建物は、細部へのこだわりや正確さ、そして職人技が光っていて、本当に素晴らしいものです。

でも、塗装や吊り天井などで、その美しさは完全に隠されていました。この城砦は、まさに隠れた宝石でした。

あのレンガ造りを見た時、もう少しお金をかけて、ちゃんとしたものにしようと決意したんです

 だが、改修は一筋縄ではいかなかった。まず、建材や機材を運ぶのに、ヘリコプターで2日間かけ、350回以上往復した。

 ヒートポンプから表土、石材、そして工事に携わる作業員たちにいたるまで、あらゆるものを一から島に運び込まなければならなかった。

 もちろん島には暖房すらなかったため、当初は工事のために滞在するのですら、苦行を通り越す状態だったという。

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 巨大な歴史的建造物の改修へのノウハウも何もなかったコナー氏には、思い通りに行かないことや、想定外のトラブルも多かった。

 そんな過酷な環境の中で、作業員たちは4年間にわたってこの島に滞在し、改修作業を続けたのだ。

 当初は「環境の複雑さや必要な作業を完全に見誤っていた」と告白するコナー氏だが、彼はそんな状況を楽しむ術も知っていた。

40歳にもなると、もう本当にいろいろなものを見てきて、何でも知っているような気分になてしまいます。



でも4歳児に戻って、ものすごいスピードでいろんなことを学ぶのは、本当に良い体験でした。それが楽しかったんですよ

現代的な住空間+完全自給自足のインフラを整備

 工事のための住環境を整えるために、まずは本土から油圧クレーンを運び込み、太陽光発電を設置し、廃棄物用のコンポストを設置。

 最終的には再生可能エネルギーを活用する、完全に自給自足のインフラを備えた環境の整備に成功した。

 建物自体の改修も困難を極めた。19世紀の改修業者たちは、湿気によるカビを文字通り上から塗装することでごまかしており、換気もされていなかった。

 そこでまず塗装を削り落とすのに約6か月、レンガの構造が完全に乾くまでにさらに2年を要した。

 寝室のリノベーション工事中は、ある朝戻ってみると、床に水が5cmも溜まっていたことすらあったという。

 また、花崗岩でできた壁は長年の湿気を吸い込んでおり、元の壁に「呼吸」させるために仮の壁を設ける必要があった。

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 さらに、歴史的建造物の修復には当局との協力が欠かせない。そのために多くの妥協も必要だった。

 好き勝手に修復できないことで苛立つ場面も多かったが、最終的には協力体制を確立し、この歴史的な遺産を守ることに繋がった。

 建物の防水工事が完了すると、ようやく現代的な設備の導入が可能になった。二重のガラス窓やヒートポンプ、電気、Wi-Fi、そして新しい床が整備された。

 工事にかかった費用は、総額で約200万ポンド(約4億円)。苦労も多かったが、嬉しいこともあった。

 修復が完了した時、当局の担当官は感極まった様子で、「多くの砦が海へと崩れていく中で、あなたはそのひとつを救ったんです」と言ってくれたのだ。

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20名までが宿泊できる「パーティアイランド」はいかが?

 現在、メインの建物には5つのベッドルームがあり、バスルームや広いキッチン・ダイニングエリア、ファミリーエリア、ラウンジなどが設置されている。

 ビクトリア朝そのままのレンガの壁や、360度のパノラマビューを楽しめるガーデン、バーカウンター、ワークスペースとして使えるプライベートオフィスもある。

 時には嵐にも見舞われる島の周囲には、荒々しい海との戦いに負けた12隻の難破船の残骸が、今も散らばっているそうだ。

 さらに海岸線には洞窟や岩場など、冒険好きにはたまらない大自然のアトラクションがいっぱいで、釣り人にとっても理想的。

 外界から隔絶された島の中では、どれだけどんちゃん騒ぎをしようが周囲を気にする必要はない。

 コナー氏は改修工事が終わった後、家族や友人たちと一緒に、この「パーティアイランド」を満喫したという。

 だが、起業家でもあるコナー氏のチャレンジ精神が再びうずきだした。何か次の、新しいプロジェクトに取り組みたくなったのだ。

 そこでコナー氏は、この「パーティアイランド」を手放すことにした。

現在、完全に近代化されたこの島は、300万ポンド(約6億円)で売りに出されている。

 最大で20名まで宿泊できる設備の整った「ビクトリア朝の要塞の島」。別荘としてはもちろん、ホテルとしての運用もできると思うので、興味のある人は、是非「Angle | Strutt & Parker[https://www.struttandparker.com/properties/angle]」にお問い合せを。

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追記(2025/09/03)
島の大きさを誤って1万平方kmと記載していましたが、正確には約8,100平方mほどでした。訂正してお詫び申し上げます。

References: Is This Private Island Napoleonic Fort The Ultimate Party Pad?[https://www.countryandtownhouse.com/cth-life/properties/private-island-fort-party-pad/] / A truly unique Island located off the beautiful Pembrokeshire coast | About 2.49 acres[https://www.struttandparker.com/properties/angle]

本記事は、海外の記事を基に、日本の読者向けに独自の視点で情報を再整理・編集しています。

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