再解析で判明、「Wow! シグナル」は想像以上に強力だった、発信源は銀河内の未知の天体か
image credit:unsplash

再解析で判明、「Wow! シグナル」は想像以上に強力だった、...の画像はこちら >>

 1977年にアメリカで受信された謎の電波「Wow! シグナル」は、今なお宇宙研究史上最大級のミステリーとして知られている。

 知的生命体からの通信の可能性すらささやかれたこの信号に、最近、新たな進展があった。

 プエルトリコの研究者らが再解析した結果、シグナルの強度はこれまでの推定の4倍、周波数も従来の想定より高かったことが明らかになった。

 これにより、信号は私たちの銀河系内の高速で移動する未知の天体から発信された可能性が浮上してきたのだ。

 ただし、これが自然現象か人工的なものかは依然として不明であり、謎の全容が解き明かされるには、まだ時間がかかりそうだ。

1977年に突如受信された謎の電波信号「Wow! シグナル」

 今から約半世紀前の1977年8月15日、アメリカ・オハイオ州にあるビッグ・イヤー電波望遠鏡が、異常な電波信号を受信した。

 信号は連続性があり、特定の周波数帯(1420 MHz付近)で急激に強まるという特徴を持ち、通常の天体からは観測されない異例のパターンだった。

 解析を担当していたSETI(地球外知的生命体探査)[https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%9C%B0%E7%90%83%E5%A4%96%E7%9F%A5%E7%9A%84%E7%94%9F%E5%91%BD%E4%BD%93%E6%8E%A2%E6%9F%BB]計画の天文学者ジェリー・R・エーマン氏は、この特異な数列に驚き、記録紙に「Wow!」と赤字で書き込んだ。これが後に「Wow! シグナル[https://ja.wikipedia.org/wiki/Wow!_%E3%82%B7%E3%82%B0%E3%83%8A%E3%83%AB]」と呼ばれる由来となる。

 この電波は宇宙から届いたと考えられており、周波数も水素原子の自然放射線と一致していたため、「地球外知的生命体からの通信ではないか」と一時期は本気で議論された。

 しかし、シグナルは一度きりのもので再現性がなく、その後の観測では再び確認されなかったことから、やがて「自然現象ではないか」との見方が強くなっていった。

[画像を見る]

再解析で判明した「Wow! シグナル」の強さ

 この長年の謎に再び光を当てたのが、プエルトリコにあるアレシボ天文台の研究チームだ。

 AWOW(Arecibo Wow!)プロジェクトと呼ばれるこの取り組みでは、数十年分の未公開データを収集し、現代の解析技術を用いて再検証が行われた。

 筆頭研究者である、プエルトリコ大学惑星居住性研究所のアベル・メンデス博士は、Wow! シグナルの電波の強さを改めて計算し、250ジャンスキーという新たな値を導き出した。

 ジャンスキーは、電波天文学で使われる「電波の強度」を表す単位で、1平方mあたり1ヘルツの周波数幅で受信されるエネルギー量を示す。

 この単位の値は非常に小さいが、宇宙空間では通常の背景ノイズに比べて目立つ信号の強さを示すことができる。

以前の推定では54から212ジャンスキーだったため、今回の値はこれまで考えられていたよりもはるかに強い信号だったことがわかる。

[画像を見る]

周波数のズレが示す、発信源の高速移動

 さらに、シグナルの中心周波数は1420.726メガヘルツと再計算された。これは従来よりも高い値であり、発信源が地球に対して非常に速く移動していたことを示唆している。

 この周波数のずれは、天体が地球から遠ざかりつつあるときに生じる「ドップラー効果」によるものと考えられている。

 ドップラー効果とは、音や電波などの波が、発信源と観測者の相対的な動きによって周波数が変化して聞こえる現象である。

 救急車のサイレンが近づくと高く、遠ざかると低く聞こえるのも、この効果によるものだ。

 宇宙空間でも同様に、発信源の天体が地球から遠ざかる方向に高速で動いていると、受信される電波の周波数が低くなる傾向がある。

 つまり、この信号は銀河系内を高速で移動している未知の天体から発せられた可能性があるということになる。

 この再計算のきっかけとなったのは、過去の観測装置であるフィルタバンク内に存在していたチャンネルの誤ったラベル付けである。

 誤ったデータ分類により、これまでの周波数推定にずれが生じていたのだ。

 また、解析中には21秒のクロックオフセット(時間のずれ)も確認されたが、これは信号そのものの性質には大きな影響を与えていないとされている。

[画像を見る]

自然現象か? それとも別の何かか?

 こうした再解析により、ある仮説が改めて注目を集めている。

 それは、冷たい水素雲が突発的な天体現象によって一時的に明るくなるというもので、以前カラパイアで紹介した説だ。

 たとえば、マグネターと呼ばれる非常に強力な磁場を持つ中性子星が突然の放射線を放出し、そのエネルギーが水素雲に作用して一時的に電波を放出させる可能性がある。

 今回の研究チームもこの仮説を支持しているが、あくまでも有力な一説であり、決定的な証拠があるわけではない。

 また、論文では当時の観測条件についても詳しく検証されており、オハイオ州上空には該当するテレビ放送局や通信衛星は存在しておらず、月も地球の反対側に位置していたことから、電波が地球由来であったり、月の反射によるものであった可能性は否定されている。

 つまり、人為的な発信源が関与していた可能性はきわめて低いと結論づけられているが、それでもこの信号が自然の天体現象であったと断定するには、まだ慎重さが求められる。

[画像を見る]

まだ終わっていない謎の解明

 Wow! シグナルの謎が完全に解明されるには、今後も多くの観測と検証が必要とされる。

 AWOWチームは、過去のSETIデータのさらなる再解析を進めており、今後2年間にわたって新たな発見が報告される予定だという。

 この信号が自然の偶然なのか、それとも宇宙のどこかから届いた意図的なメッセージなのか。

 結論が出るその日まで、この謎は科学者と私たちの想像力を刺激し続けることになりそうだ。

この研究はプレプリントサーバー「arXiv[https://arxiv.org/abs/2508.10657]」に2024年8月14日付で投稿され、査読を経て『The Astrophysical Journal』に掲載予定である。

お詫びと訂正(2025/09/01):
本文中に「遠ざかると周波数が高くなる」との誤記がありました。ドップラー効果では遠ざかる場合、観測される周波数は低くなり波長は長くなります(赤方偏移)。当該箇所を修正しました。

References: Arxiv[https://arxiv.org/abs/2508.10657] / Universetoday[https://www.universetoday.com/articles/the-wow-signal-gets-an-update-it-was-even-strong-than-we-thought] / Phl.upr.edu[https://phl.upr.edu/wow?]

本記事は、海外の記事を参考に、日本の読者向けに重要な情報を翻訳・再構成しています。

編集部おすすめ