犬型ロボットが宇宙で相棒に!月や火星を自分で考えながら歩く訓練が開始される
image credit:Oregon State University

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 ゆくゆくは宇宙の名犬ラッシーに。現在、月や火星の調査に赴く人類の相棒を育成中だ。

これはNASAの支援で始まったアメリカ国内でのロボット訓練プロジェクト、その名も「ラッシー(LASSIE)」によるものだ。

 「類似環境における四足自律型地表科学調査(Legged Autonomous Surface Science in Analog Environments)」の頭文字より命名されたラッシー(LASSIE)プロジェクトは、月や火星の環境に似た、砂丘や氷の斜面でも、自ら環境を判断して歩行するロボット犬を目指すというもの。

 映画やドラマ、アニメとしても世界中で愛された「名犬ラッシー」の大活躍を彷彿させる、ロボット版ラッシーの最新のプロジェクトにせまってみよう。

月と火星でロボット犬を相棒にする「ラッシープロジェクト」

 宇宙探査計画を主導するNASA支援のもと、アメリカの科学者らが、ロボット犬に火星や月での歩き方を教える訓練が始まっている。

 そのプロジェクトの正式名称はなんと「ラッシー(LASSIE)」。「類似環境における四足自律型地表科学調査(Legged Autonomous Surface Science in Analog Environments)」の頭文字を取ったものだ。

 その名を聞いて、かつて映画やTVドラマ、アニメでも人気を博した「名犬ラッシー」シリーズを思い出した人もいるだろう。

 作中の主人公ラッシーは、人間を危機から救ったり、家族を支え続けたメスのコリーで、賢い犬の象徴として今も世界中で愛されている。

 同じ名を冠したこのプロジェクトもまた、人間のかたわらで活躍する“相棒”を育てようとしている。ただしその舞台は地球ではなく、月と火星だ。

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宇宙探査のためのロボット犬の訓練地

 このプロジェクトの訓練地は、広大な砂丘で知られるニューメキシコ州のホワイトサンズ国定公園や、氷に覆われたオレゴン州のフッド山だ。

 ホワイトサンズには石膏(ジプサム)から成る真っ白な砂丘が広がっており、その地形は月や火星の表面に似通っている。

 サラサラとした柔らかい砂地は、当然ながら不安定で歩きにくく、訓練に最適なフィールドだ。

 研究チームが目指しているのは、人による遠隔操作に頼らずに、自己判断で歩を進められる自律型のロボット犬。

 つまり自ら地面の状態を感じ取るだけなく、ルートも自分で選択し、転ばずに進めるようにすることだ。

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人間のように足で感じて歩くロボット犬を育成

 ラッシープロジェクトは多くの研究機関の共同参加によるもので、オレゴン州立大学を中心に、南カリフォルニア大学、ジョージア工科大学、ペンシルベニア大学、テンプル大学、テキサスA&M大学、NASAジョンソン宇宙センターも関わっている。

 そこでロボットは、チームから人間のように「足で感じて歩く」ことを教わっている。

 足に搭載された高感度センサーで、一歩ごとに、地面の硬さや滑りやすさ、傾きなどの情報を読みとり、その場で進路を判断するだけでなく、障害も回避できるようプログラムされている。

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宇宙では「自分で考えて歩くロボット」が不可欠

 なぜロボットにそこまで凝った訓練が?と疑問に思うかもしれないが、現実の火星や月での探査では、地球との通信に時間がかかるため、たとえロボットであろうとも、いちいち指示を待ってられない場面が多い。

 そうした環境下でも探索をスムーズに進めてゆくには、人間のようにその場で状況を見て、自分で判断できるといった自律能力が不可欠となる。

 こうした背景から、研究チームは「考えて歩く」ロボット犬の開発を進めている。

 実験では、命令なしで崩れやすい砂地を前に立ち止まり、進む方向を自分で決めて歩くロボット犬の動作が確認された。

 こうした結果から、オレゴン州立大学工学部のロボット研究者、クリスティーナ・ウィルソン氏は「人間が足の裏で地面の安定性を判断するのと同じように、ロボットも訓練すれば、4本の足から得た感覚をもとに自ら歩行を調整する可能性が見出せた」と述べている。

つまりロボットが歩くたび、月や火星における将来的なパフォーマンスに役立つ情報が得られることになります (ウィルソン氏)

灼熱の砂丘に加え氷の斜面でも訓練

 ホワイトサンズの訓練は、日中の気温が40度を超える猛暑の中で実施された。

 ロボット犬の電源が暑さで不安定になるおそれから、チームは早朝に訓練を始め、気温が上がってしまうまでに作業を終える、という過酷なスケジュールにより成果を得た。

 今回使用されたロボットのひとつは「スピリット(Spirit)」と命名された。プロジェクト全体では他にも複数のロボットが使われ、環境ごとの対応力や歩行パターンの違いまで検証されている。

 またもう一つの訓練地、オレゴン州のフッド山では、月の極地に似た、氷に覆われた火山の斜面での訓練も行われている。そこでは氷とレゴリス(土壌)混じりの滑りやすい地面を想定した歩行が試されている。

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目標はラッシーのように宇宙でも人を助けるロボット犬

 4本足のロボット犬には、車輪型ローバーには困難な地形でも安定して移動できる利点がある。

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 こうした訓練で能力が高まれば、岩だらけの火星表面や、クレーターの縁、氷の上など、さまざまな場所で自在に動き回り、人間の代わりに先回りすることも期待できる。

私たちは、こうしたロボット犬を月や火星に送り出すことを本気で目指しています。まだ多くの課題がありますが、今回の成果は目標に向けた大きな一歩になりました (ウィルソン氏)

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 研究は、NASAの「惑星科学および技術の類似環境研究(PSTAR)」および「火星探査プログラム」の資金提供を受けている。

 かつて名犬ラッシーが活躍したように、未来の宇宙探査では、賢く頼れるロボット犬が調査に赴く”人類の良き相棒”として、連れ立つような光景が見られるようになりそうだ。

References: Dog-like robot trains on White Sands dunes to prepare for Moon and Mars missions[https://interestingengineering.com/space/oregon-state-robotics-moon-mars]

本記事は、海外の情報を基に、日本の読者向けにわかりやすく編集しています。

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