
インドの動物と聞くと思い浮かべるのは、路地をうろついている牛、という人も多いんじゃないだろうか。
正確にはその大半には飼い主が一応いるらしいのだが、飼い主を持たず、外で自由に暮らしている野良牛(地域牛)も少なくないという。
そんなインドで、マンションの一室で暮らす子牛が話題になっている。チェンナイにある高級マンションの28階で、タワマンライフを満喫しているというのだ。
車に轢かれた子牛を保護しタワマンで飼育する一家
南インド・タミルナードゥ州の州都チェンナイは、かつてはマドラスと呼ばれていた、ベンガル湾に面した大都市である。
この街の豪華なタワマンの28階で、生後3か月の子牛「アレックス」と暮らしている一家が話題になっている。
アレックスは生後1か月の頃、道路を渡っている途中でスピードを出し過ぎた車にひかれ、血を流し傷ついた状態で路上に倒れていた。
たまたま通りかかった建築デザイナー、テジャスウィニ・S・ランガンさんが救いの手を差し伸べた。
テジャスウィニさんは、当時のことをこう語る。
発見時、アレックスは足から出血していて、背中も腫れ上がっていました。すぐに家に連れて帰り、応急手当てをして休ませ、安全を確保しました。その結果、彼はすっかり回復し、元気な子牛へと成長しました
彼女が自身のSNSでアレックスを紹介すると、アレックスはすぐに人気者になった。
多くの牛たちが農場や路上で育つのと違い、アレックスは高層マンションのバルコニーから、ベンガル湾とバッキンガム運河の眺めを楽しんで暮らしているのだ。
飼い犬たちと一緒にバルコニーからの眺めを楽しむ
アレックスの「母親」としては、彼の行動のすべてが特別に感じられます。これまで多くの子牛を見てきましたが、皆やんちゃで、いたずらばかりしていました。
でもこの子は本当にジェントルマンなの。頭突きもしなければ蹴りもせず、抱っこが大好き。私たちや犬たちからのハグを本当に楽しんでいます
テジャスウィニさんは愛犬家で、家には先住の犬たちがいたのだが、アレックスはすぐに彼らとも仲良くなった。
それどころか、犬たちはアレックスのやることなすこと、すべてを真似したがるように。アレックスが草を食べていると、犬たちも並んで一緒に食べるんだとか。
アレックスは当初はミルクを飲んでいたが、今は毎日テジャスウィニさんがとってきた新鮮な草と野菜に、牛用の飼料やサプリを混ぜて与えているんだそう。
一番特別なのは、私たちが28階に住んでいること。バルコニーからはベンガル湾とバッキンガム運河のパノラマビューが広がっていて、アレックスは景色が本当に気に入っているんです。日の出や日没の時間はいつもバルコニーにいます
アレックスが暮らしているのは、こんなラグジュアリーなタワマンの28階なんだ。眼下にはチェンナイ郊外の景色が一望にできる。
名前の由来はインド映画のヒーローから
アレックスという名前の由来は、インド映画『ムーンドゥル・ムガム』の登場人物、アレックス・パンディアンなんだそう。
初めて出会ったとき、アレックスはケガのせいで、頭を傾けて歩いていたんです。それがアレックス・パンディアンの動きにそっくりで、彼こそ「タライヴァル(ボス)」の名にふさわしい!」と感じて名付けたんですよ
ちなみにこちらがその映画のトレイラー。本家のアレックス・パンディアンはちょっと強面だったが、テジャスウィニさんはいつか子牛のアレックスが、本家と対面できるといいなとひそかに思っているそうだ。
マンション暮らしでの将来を心配する声も
タワマンに住むキュートな子牛アレックスは、SNSでも大人気。彼が登場する投稿には、たくさんのコメントが寄せられている。
- これは犬や猫だけがペットじゃないことの証明だよ!
- アレックスは本当にハンサムで愛らしい! あなたに敬意を表します。神の祝福を
- なんて素晴らしい人間性! 犬はよく見るけど、マンションで子牛を見るのは初めてだわ。助けてくれてありがとうね
- かわいすぎる! 引き取って大事にしているあなたは本当に素晴らしい魂です。神の祝福が百万倍届きますように
- 世界にあなたのような動物好きがいると知ってうれしいわ
- 大家さんがよく許したよね。でも理由はどうあれ、まだ世の中には善い人がいることがわかってうれしいよ
- でも成長したときのことも考えてあげて! タイルの床は牛には歩きにくいと思うんだ
- 私も22年前に瀕死の子牛を救ったことがあります。名前はパプル。こんな瞬間、人々が世界を本当に美しい場所にしてくれるんだと思う
- 自分も昨日、年老いた牛を救助しました。獣医によると胃袋に10~15kgのビニールが詰まっていてとても弱っているの。今治療中ですが、高齢なので、どうか回復を祈ってください
- ブッダがその牛を見守って、苦しまないようにしてくれますように
- 早い回復をお祈りします
- 残念ながら、彼女は逝ってしまいました(最初のコメ主)
- 子牛にミルクを買って与えるんじゃなく、母牛から直接飲ませるべき!
- まだ小さいのに固形食に切り替えざるを得なかったのは悲しいよね。母乳を奪われたのは人間の搾取のせい。でも、彼女の行動と取り組みは心温まる、素晴らしいものだよ
- 牛は野生に帰して、その足で大地を踏むべきです。
高層階で育てるなんて、トラやキリンやシマウマを28階に連れてきて「愛してる」って言うようなものだよ
- すべての動物は愛されるべき存在だし、人間との絆を結んでもおかしくない。野生に戻すつもりなら別だけど、これは子牛であって、サバンナに戻すシマウマじゃないんだよ
- でも彼が大きくなって、部屋やエレベーターに収まらなくなったらどうするの?
現在は農場へお引越し
コメント欄でも心配されていたのが、このまま大きくなったらマンションでは飼いきれないのでは?ということだった。
広さや環境ももちろんだけど、この高級マンションで、アレックスのトイレも心配になってしまった人も多いと思う。
だが、安心してほしい。アレックスはつい先日、テジャスウィニさんが所有する農場へとお引越ししたそうだ。
彼がマンションで暮らしていたのは、傷が完全にふさがるまでの間だったんです。今は元気いっぱいで、体重もこの1カ月で6kgも増えました!
テジャスウィニさんはアレックスを保護した後で、さらに3頭の子牛も引き取ったそう。現在は彼女の農場で、アレックスといっしょに仲良く過ごしているそうだ。
References: Bull calf living on 28th floor of Tamil Nadu skyscraper leaves internet with questions: ‘Is he potty trained?’[https://www.hindustantimes.com/trending/bull-calf-living-on-28th-floor-of-tamil-nadu-skyscraper-leaves-internet-with-questions-is-he-potty-trained-101755734319050.html]
本記事は、海外の情報を基に、日本の読者向けにわかりやすく編集しています。