
2025年9月3日、フランス・ノルマンディー地方にあるパリュエル原子力発電所が、4基ある原子炉のうち1基を停止したと発表した。
原因はなんと、クラゲの大群が発生し、原子炉の取水口のフィルターに詰まったためだとそうだ。
クラゲのせいで原発が停止したのは、フランスではここ1カ月で2度目だそうだ。この影響で、同原発の発電量は、ほぼ半分に減ったという。
クラゲの大群が原子力発電所に襲来
フランスの国営エネルギー会社、エレクトリシテ・ド・フランス(EDF)は、クラゲがパリュエル原子力発電所の取水ポンプ場のフィルターに侵入し、運転に支障をきたしたことを認めた。
世界原子力協会(WNA)によれば、フランスの電力消費の約70%は原子力に依存している。
パリュエル原発は国内で2番目、世界でも7番目に大きく、総出力は5.2ギガワット。4基の原子炉それぞれが1,300メガワットを発電している。
この原発は他の沿岸にある施設と同様に、設備の冷却に用いる海水を、海から直接取り込むシステムを採用している。
取水先のイギリス海峡は比較的水温が高く、クラゲの繁殖に適した環境となっている。そのため条件次第で大群が発生しやすく、クラゲが取水ポンプ場に入り込むリスクが常にあるのだそうだ。
EDFの発表によれば、9月3日の午後9時、クラゲが取水ポンプ場のフィルターに到達したため、4号機を停止したという。
また、同時に3号機も予防措置として出力を低下させた。EDFでは現在の状況を次のように説明している。
プラントのチームは現在、必要な診断と作業を行っており、安全に4号機を再稼働させ、3号機をフル出力に戻すことを目指しています
今回はフランス全土の他の原子力発電所の稼働により、1,300MWの原子炉の稼働停止による損失が補われたそうだ。
現在、パリュエル原子力発電所の作業員が原子炉を通常運転へ戻すための対応を行っているという。
クラゲの襲来は今年2度目、世界各国でも
実はフランスでクラゲが原子炉の冷却システムを妨害したのは、今回が初めてではない。
2025年8月初旬、フランス北部にあるグラヴリーヌ原発でもクラゲが冷却システムを詰まらせ、4基の原子炉が自動停止した。
さらに1993年にも同じグラヴリーヌ原発で同様の問題が発生している。
知っての通り、原子力発電は大量の熱を生み出すため、冷却のために海水を使用することが多い。
しかし今夏、イギリス海峡の海水温が上昇したため、クラゲの繁殖が例年よりもはるかに活発になり今年は2度も被害を受け、原子力発電所の生産に影響が出ているのだそうだ。
クラゲの大群による障害は世界各地で繰り返し起きており、2011年にはイスラエルやイギリスのスコットランドでも発生。日本の島根原発[https://www.energia.co.jp/atom_info/press/2011/4059.html]でもクラゲにより除塵機が自動停止した。
海水を冷却に用いている原発の運用は、常にこうしたクラゲなどの海洋生物によるリスクと隣り合わせなんだそうだ。
今後は高周波などを利用した忌避技術の導入を検討
識者らは地球温暖化や外来種の侵入、捕食者の生息地喪失、過剰漁業といった要因により、こうした現象が今後さらに頻発する可能性があると警告している。
EDFはかつて、イングランド南西部にあるサマセットで建設中の原子炉ヒンクリー・ポイントCで、海洋生物を遠ざけるための「フィッシュ・ディスコ」と呼ばれる仕組みの導入を検討した。
フィッシュ・ディスコとはその名の通り、光や音で魚を遠ざける仕組みらしい。これは同発電所の魚類保護策に対して抗議が寄せられたことを受けた対応だった。
結局EDFはこのシステムの導入は見送ったが、代替として超高周波を発する装置を用いた、新たな海洋生物の忌避技術の導入を検討しているそうだ。
References: Jellyfish swarm strikes one of France’s largest nuclear plants twice in a month[https://interestingengineering.com/culture/jellyfish-swarm-strikes-france-nuclear-plant]
本記事は、海外の記事を基に、日本の読者向けに重要なポイントを抽出し、独自の視点で編集したものです。