DV被害女性がコンビニで「助けて」のハンドサイン、店員が通報し男性を逮捕
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 アメリカのカリフォルニア州にあるコンビニで、女性が助けを求めるハンドサインで、自分が危険にさらされていることを周囲に知らせた。

 サインに気づいた店員が警察に通報。

女性と一緒にいた男は、家庭内暴力の容疑で逮捕された。

 店員がそのサインの意味を知っていたことが、女性からのSOSに気づき、彼女を救い出すことにつながったのだ。

DV被害者の女性が見せたハンドサインで加害者を逮捕

 カリフォルニア州アルハンブラ警察によると、事件はロサンゼルスの北東約14kmにある、アルハンブラという街のセブンイレブンで発生した。

 2025年8月19日、アルハンブラ警察はコンビニの店員から、「不審な状況」に関する通報を受け、セブン‐イレブンに出動したという。

 警察の調べによると、女性は「背後でハンドサインを使って助けを求めた」のだそうだ。店員がこのサインに気づき、警察へ通報したという。

 現場に急行した警官のボディカメラには、警官が女性に声をかける様子が記録されている。

警官:大丈夫ですか? 少しお話ししてもよろしいでしょうか?
女性:私ですか?
警官:そうです。

 警官は女性を容疑者から引き離して保護。

 その後警官は男に外に出るよう促し、店の駐車場で身体検査をしようとした矢先、男は警官の隙をついて走って逃げだしたものの、すぐに取り押さえられた。

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 調べによると、男はカリフォルニア州グレンドラ在住のジョン・パロンピ容疑者(38)で、事件当時スタンガンを所持していたという。

 彼はこれまで麻薬依存や銃器所持、警官からの逃走などで3度逮捕されており、今回の事件が起きた当時、保護監督官の監視付きで釈放されていた状態だった。

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助けを求めるハンドサインとは

 今回女性が使った「ハンドサイン」とは、どんなものだったのだろうか。実は「助けを求めたいときのサイン」というべきものはいくつかあるらしい。

 例えば手のひらに黒い点(ドット)を描き、被害に合っていることを周囲に知ってもらう「ブラックドット・キャンペーン」という運動も行われていた。

 また、バーで「エンジェルショット」を注文すると、「車まで送ってほしい」という合図になるという。「ライムつきのエンジェルショット」は、「警察を呼んでほしい」という意味になったりするそうだ。

 あるいはスマホのライトを3回点滅させる、テーブルなどを3回叩く、といった意思表示の仕方もあるらしい。

 だがこれらは全国的に同じ意味で使われているわけではなく、地域ごと、あるいは店ごとに意味が違ってしまうケースもあった。

 そこでカナダの「カナダ女性財団(Canadian Women’s Foundation)[https://canadianwomen.org/signal-for-help/]」が考案し、普及させようとしているのが、「Signal for Help(助けを求めるシグナル)」と呼ばれる、手の指を使ったサインである。

 これは虐待を受けていたり、誘拐・監禁などの被害に遭ったりしている人が、相手に知られずに周囲に助けを求めるための、一種の救難信号だ。

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 具体的には、まず親指を内側に折り、残りの四本の指で親指を包み込むような動作をする。これを何度か繰り返すのだ。

 おそらくは今回の女性が使ったのも、このハンドサインだったと思われる。パロンピ容疑者の目を盗んで、自分の背中で手を隠して、周囲に助けを求めたのだろう。

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実際にハンドサインが救出につながった例も

 このハンドサインはカナダで考案されたが、現在では北米はもちろん、世界各地で認知されるようになった。

 実際にこのハンドサインが、虐待や誘拐、監禁からの救出につながった事例も複数報告されている。

 2021年にはケンタッキー州で、ノースカロライナ州で行方不明になっていた16歳の少女が、高速道路を走行中の車内からこのサインを使って助けを求めた

 通りがかった他の車の運転手が異変に気づき、通報した上で10km以上も追跡。少女は無事に保護され、誘拐の容疑者はその場で逮捕された。

この事件は、TikTokを通じてサインを知った少女が、同じくサインの意味を知っていた運転手により命を救われた例として注目を集めた。

 また、ヨーロッパでも同様のケースがある。2022年、ドイツのルートヴィヒスハーフェンでは、14歳の少女が通行人に向けてこのサインを見せたことで、レイプ犯の手から保護された。

 イタリアのミラノでは2023年に、マクドナルドの店員がサインに気づき、誘拐されかけていた少女を救った。

 さらに2025年には、オーストリアのインスブルックでも、路面電車内で14歳の少女がこのハンドサインを使い、乗客の通報によって救助されたそうだ。

 このように、このハンドサインはSNSや国際的な啓発活動を通じて急速に広まっており、世界中で助けを求める共通言語となりつつある。

 ただし普及度には地域差があり、欧米では広く知られる一方で、アジアではまだ十分に浸透しているとは言えないかもしれない。 

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SNSで広がる「ハンドサイン」の意味を知らせる動画

 TikTokやYouTubeなどには、このハンドサインの周知を目的とした動画がたくさん投稿されているので、見たことがある人も多いのではないだろうか。

 例えば下の動画は、電車の中でハンドサインに気づいた乗客たちが、女性を男から引き離して変装させるというもの。

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 こちらは、ショッピングモールで男に腕を掴まれながら買い物中に、防犯カメラに向かってサインを送る女性。

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 あるいはビデオ通話の最中に、全く関係のないおしゃべりをしながら、後ろにいる男の目を盗んでハンドサインを送る女性。

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 さらに下の動画は、高速道路で窓越しにハンドサインを送る女性に気づいた後続車のドライバーが、通報と追跡をするという、ケンタッキーでの事件を彷彿とさせるような動画だ。

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もし自分がこのハンドサインを目にしたら

 では、このハンドサインに気がついたとして、我々はいったいどんな行動を取ればよいのだろうか。

 ハンドサインを考案したカナダ女性財団では、次のようにアドバイスをしている。

  • 安全を確保しながら、その人に近づきましょう
  • 支えになってあげましょう。その人の体験を認め、話を聞き、何が必要かを話してもらいましょう
  • 必要に応じて、支援サービスや利用できるリソースを案内しましょう。ご自身または知人が差し迫った危険にさらされている場合は、お近くの緊急サービス(警察、消防、救急車)に通報してください

 日本ではまだなじみのないサインかもしれないが、最近は少しずつ、いろいろな団体や自治体などが、このサインを紹介し始めている。

 いつかどこかでこのハンドサインを目にした時、それが何を意味するのかを知っていれば、誰かの生命を救うことに繋がるかもしれない。

 今回の救出につながる通報をした店員の名前などは報道されていない。同僚のシャムシェル・シンさんは、その店員の好意を称えて、次のように語っている。

彼は本当にいい働きをしました。彼女は助けを必要としていたし、あのタイミングで行動を起こしたのは正しい判断だったと思います

 現在、彼はロサンゼルス郡の拘置施設に、保釈なしで収監されている。

裁判所への出廷は9月11日に予定されているそうだ。

References: Domestic violence victim uses hand signals to ask for help, suspect arrested: Police[https://abcnews.go.com/US/domestic-violence-victim-hand-signals-suspect-arrested-police/story?id=125215720]

本記事は、海外の情報を基に、日本の読者向けにわかりやすく編集しています。

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