イタリアの島で5,000年前の「妖精の家」と呼ばれる墓が発見される
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 イタリア・サルデーニャ島の高原地帯で、考古学者たちがまるでおとぎ話に出てきそうな発見をした。

 5,000年以上前に掘られた地下墓所が、新たに3基見つかったのだ。

現地ではこれらを「妖精の家」と呼ばれるこの岩掘り墓は、まるで人が暮らしていたかのような構造を持っている。

 内部からはローマ時代の壺やランプも見つかっており、当時の人々が死者に住まいを用意し、何世代にもわたってその場を大切にしていたことがうかがえる。

妖精の家と呼ばれる先史時代の岩を掘った墓

 イタリア文化省の地域機関「サッサリ・エ・ヌーオロ監督局」は、サルデーニャ島北西部ボノルヴァの人里離れた高原地帯で、岩をくり抜いて造られた3つの地下墓所を発見した。

 地元ではこれらを「ドムス・デ・ジャナス(Domus de Janas)」、「妖精の家」と呼んでいる。

 なぜ墓が、おとぎ話に出てくるような名前になったかというと、後世の人々がこれらの古代墓に神秘的な意味を感じたことに由来する。

 墓の多くが小さく複雑な構造をしており、まるで小人や妖精が住んでいそうな外見だったため、「妖精たちのすみか」と信じられるようになったのだ。

 特に中世以降、地元の民間伝承では「ジャナス(Janas)」と呼ばれる小さな妖精がここに住んでいたと語り継がれている。

 誰がいつ作ったのか分からないような場所にぽつんと残された岩穴が、人々の想像力をかき立てたのだろう。

 実際には、これらは新石器時代後期から銅器時代(紀元前3200年ごろ)の人々によって造られた、れっきとしたお墓である。

 墓はすべて岩盤を直接彫って作られており、長い年月を経ても形を保っている。

 サンタンドレア・プリウ遺跡では、今回の3基を含めて20基の墓が発見されている。

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 ローマ時代にも再利用された? 謎を秘めた墓の中身

 今回発見された3基の墓は、それぞれに特徴があり、どれも単なる埋葬のためだけではなさそうな雰囲気を漂わせている。

 1つ目の墓からは、黒曜石(こくようせき)の破片や石製のつるはし、緑色の石で作られた斧が見つかった。

 いずれも当時の人々が日常的に使っていたとされる道具で、墓とともに埋葬されることで、死後の世界でも役立つよう願ったのかもしれない。

 2つ目の墓は、小型で人目につきにくい場所にあった。内部には小さな陶器がいくつも隠すように配置されていた。

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 まるで誰かが大切な物をこっそり置いていったような印象を受ける。

 これが子どもの墓なのか、それとも特別な儀式に使われた空間なのか、今後の調査が待たれる。

 そして最大の注目を集めているのが、「ローマの壺の墓」と呼ばれる3つ目の墓だ。

 内部には七つの小部屋が連なり、壁には赤い顔料で描かれた装飾が残されていた。部屋の作りも複雑で、まるで誰かがそこに住んでいたような雰囲気すらある。

 この墓からは、ローマ時代の陶器類が多数出土している。オイルランプ、皿、壺など、どれも保存状態が非常によく、後の時代にこの墓が再び使われたことを示している。

 考古学者たちは、ローマ時代の人々が古代の墓を神聖視し、何らかの儀式のために再訪していた可能性があると見ている。

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死者に快適な暮らしを 「家」としての墓の構造

 これらの墓を見てまず驚かされるのは、その構造だ。どれもただの空洞ではなく、明らかに住居を意識した設計になっている。玄関のような入口があり、内部にはかまどや仕切り壁のような構造も見つかっている。

 研究者たちは、このような設計には意味があると考えている。

 死後の世界でも生前と同じように暮らしてほしいという願いが、墓の中に「家」を再現するという形で表れたのではないかというのだ。

 こうした思想は、サルデーニャ島だけでなく、古代地中海世界のあちこちで見られるものでもある。

 だが、「妖精の家」と呼ばれるこれらの墓は、住居そっくりの構造に加えて、何世代にもわたって人々に大切にされてきた痕跡が残されている点で、特にユニークだといえる。

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サルデーニャ島の謎に満ちた文化遺産

 今回の発見は、イタリア文化省が進めるサルデーニャ島の先史文化調査プロジェクトの一環として行われた。

 この島には、「ヌラーゲ」と呼ばれる巨石塔や古代の村落、広大な墓地遺跡が点在しており、考古学的に極めて価値の高い地域だ。

 2024年には、こうした文化遺産が評価され、サルデーニャ島はユネスコの世界遺産にも登録されたばかりである。

 今回発見された「妖精の家」は、現在修復作業中で、整備が終わり次第、一般公開される予定だ。

 それまでは立ち入りできないが、すでに研究者たちの間では大きな注目を集めている。これまで未確認だった墓の構造や再利用の痕跡が、サルデーニャの歴史に新たな章を加えることになったからだ。

 数千年の時を経て再び姿を現したこの不思議な住まいは、今もなお人々の想像力を刺激し続けている。

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References: Soprintendenza Sassari e Nuoro[https://www.facebook.com/soprintendenzasassari/posts/questa-mattina-abbiamo-presentato-alla-stampa-le-nuove-scoperte-nel-complesso-ar/1167872125387180/] / rchaeologists Just Found 5,000-Year-Old ‘Fairy Houses’ on a Remote Island By Ashley Fike September 5, 2025, 8:41am[https://www.vice.com/en/article/archaeologists-just-found-5000-year-old-fairy-houses-on-a-remote-island/] / Archaeologists unearth 5,000-year-old 'fairy houses' hidden on scenic Italian island[https://www.iask.ca/news/c733e8c1a201f106bb9c565bf6f92369/archaeologists-unearth-5000-year-old-fairy-houses-hidden-on-scenic-italian-island]

本記事は、海外メディアの記事を参考に、日本の読者に適した形で補足を加えて再編集しています。

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