
イギリスで暮らす飼い猫が、自宅からおよそ53kmも離れたパブ(飲み屋)に現れた。しかも、その出来事は一度きりではなかった。
よほど居心地がよかったのだろう、そこはすでに、彼の“第二の家”になっていたのかもしれない。パブで「スクリーチ」と名付けられたが、本名は「ピーナッツ」。
パブの常連客たちともすっかり打ち解け、顔なじみの存在になっている。
自宅から消えた猫、向かった先は遠く離れたパブ
イギリス・リンカンシャーに住むオスの猫、ピーナッツは、ある日突然、自宅から姿を消した。飼い主のチャーリー・ローリングスさんとサム・バーマさんは心配し、あらゆる手段を使って探し回ったが、なかなか見つけることができなかった。
イギリスでは、猫を自由に外へ出入りさせる飼育スタイルが広く受け入れられている。猫にある程度の行動の自由を持たせることが“自然な飼い方”とされており、日中は庭や近所を自由に歩き回ることが多い。ピーナッツもそうした生活を送っていた猫の一匹だった。
失踪してから数日後、ピーナッツは、家から53kmも離れたノッティンガムにあるる「ヴァット&フィドル(Vat & Fiddle)」というパブに現れた。
この店は、クラフトビールの醸造所「キャッスル・ロック・ブリュワリー(Castle Rock Brewery)」に併設されており、出来たてのビールを楽しめる人気のパブとして知られている。
スタッフたちは、このふわふわの来訪者にすぐさま心を奪われた。SNSには「新しい毛むくじゃらの友達がパブに遊びに来ています。
常連客ともすぐに打ち解けたピーナッツは、その特徴的な鳴き声から「スクリーチ」というニックネームが付けられた、地元で彼はちょっとした有名猫になっていった。
マイクロチップで飼い主が判明
とは言え、この人懐っこい猫は飼い猫である可能性が高かったため、パブのスタッフはSNSで飼い主を探すことに。
だが反応がなかったため、動物病院へ連れて行き、そこで埋め込まれていたマイクロチップから飼い主の連絡先が判明し、すぐに連絡を取った。
電話を受けたローリングスさんは、「もう帰ってこないのではと心配していましたが、本当に安心しました」と話す。
獣医から「パブで保護されていますよ」と言われ、すぐさま「ノッティンガム 猫 パブ」とFacebookで検索。すると、店の投稿を発見できたという。
ローリングスさんは投稿に対して「これは私たちのピーナッツです!見つけてくれて本当にありがとうございます。リンカンシャーからそこまで行ったんですね。行方不明の間に1歳になったので、パブで誕生日を過ごせたのも良い思い出になったかもしれません」とコメントを残した。
パブ側も「君は短い間だったけど、チームの一員だった。さようなら、ピーナッツ!」と投稿し、別れを惜しんだ。
こうしてピーナッツは、ローリングさんに連れられ、無事自宅に戻ってきたのだが、話はここで終わらなかった。
数週間後、再びパブにやって来たピーナッツ
ピーナッツを連れ戻した後、飼い主たちは迷子対策として首輪をつけようとしたが、ピーナッツはそれを嫌がった。彼の頭の中には、あのパブでの楽しい記憶があったのかもしれない。
なんとそれから数週間後、ピーナッツはふたたびパブ「ヴァット&フィドル」に現れたのだ!
スタッフは「ピーナッツが戻ってきた!お店のポイントカードを使いに来たのかな?」とFacebookに投稿。既に飼い主の連絡先を知っているので、すぐに連絡し、再び家に戻されたという。
スタッフの1人、倉庫マネージャーのサイモン・ベルショーさんは「見つける前に、鳴き声で気づいたんだ」と語った。
飼い主のローリングスさんは、「猫が迷子になって遠くで見つかる話は聞くけど、2回も同じ場所に行くなんてびっくりです」とコメント。
ピーナッツが再び姿を消したときには、「きっとまたあのパブだな」と思ったという。
ヴァット&フィドルのゼネラルマネージャー、ダニー・ストーラーさんは「ピーナッツが来てくれるのは本当に嬉しい。いつでも大歓迎だよ」と笑いながらも、「でも、飼い主さんはちょっと困ってるかもね」と冗談めかして話した。
それにしても53kmの道のりは猫にとってはかなり遠い。人間が歩いても12時間から14時間はかかる距離だ。
よほど居心地が良かったんだろうね。