謎の短波放送局「UVB-76」が、ロシア語の名前と数字、謎のフレーズを発信していた
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 1970年代中頃の放送開始から50年近くにわたり、ロシアの謎の短波放送局「UVB-76」は、不定期に奇妙な電波を発信し続けてきた。

 使用されている周波数は4625kHz、または6998kHz。

かつては延々とブザー音を繰り返し流していたことから、「ザ・ブザー(The Buzzer)」の名でも知られている。

 そんな「UVB-76」が、2025年9月上旬、突如としてロシア語による音声メッセージを発信した。放送には、ロシア語の名前や数字、さらには意味深なフレーズが含まれていた。

 なぜ今このタイミングで音声放送が行われたのか?その背後には、国際的な緊張の高まりが影を落としているとも考えられている。

ロシアの謎の短波放送局「UVB-76」とは?

 「UVB-76」は、1970年代中頃に放送を開始したとされるロシアの短波ラジオ局である。放送内容はほとんどがブザー音のみで、25分ごとに規則的な電子音を発していた。

 その単調さから「ザ・ブザー(The Buzzer)」という通称で呼ばれ、無線愛好家や陰謀論者の注目を集めてきた。

 ブザー音は1990年代から現在の特徴的な音色に変わったとされ、まれにブザーに混じって物音や人の声が聞こえることもある。

 代表的な例として、「Ya UVB-76. Ya UVB-76…」といったメッセージが確認されたこともある。

 この放送は、かつてはモスクワ北西10kmにあるポヴァロヴォという場所から送信されていたが、2010年以降はサンクトペテルブルク近郊に移転した。

 現在はモスクワとサンクトペテルブルク周辺の複数拠点から送信されていると考えられている。

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2025年9月、突如流れた謎の音声メッセージ

 2025年9月8日、ロシア国営メディア「RT」によって報告された今回の放送では、通常のブザー音の代わりに、約1分間のロシア語音声が発信されたという。

 放送の中では以下のような内容が確認されている。

・ロシア語の名前:ニコライ(Nikolai)、ジェーニャ(Zhenya)、タチアナ(Tatyana)、イワン(Ivan)、オリガ(Olga)、エレーナ(Elena)、レオニード(Leonid)
・数字:38、965、78、58、88、37
・フレーズ:「мягкий знак(soft sign)」「приём(reception)」
・コードワード:「NZHTI」「HOTEL」

 これらの音声メッセージは、「Monolith形式」と呼ばれる暗号放送の型に沿っており、コールサイン、5桁のID、コードワード、8桁の数字で構成される。

 Monolith形式はUVB-76で最も多く使用される放送形式で、規則的な順序で情報を伝える軍事通信様式と見られている。

 「NZHTI」は、2020年12月30日から使用されているUVB-76のコールサインであり、以前は「UZB-76」や「MDZhB」などが用いられていた。なお、「UVB-76」という名称は、「UZB-76」の誤記が広まって定着したものとされている。

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国際情勢との関連性は?

 UVB-76は普段は沈黙を守っているが、国際情勢が不穏になると、音声メッセージの送信や、通常とは異なる異常放送が確認されることがある。

 それらがロシア軍による暗号通信なのか、それとも外部からの干渉なのかは、明確にはわかっていない。

 たとえば、2025年9月の今回の放送に先立ち、同年6月にはアメリカがイランの核関連施設を攻撃したとの報道があり、その直後にもUVB-76は「PANIROVKA」「KLINOK」「BOBINA」といったコードワードを読み上げていた。

 また、2025年5月にはプーチン大統領とアメリカのトランプ前大統領との通話直後にも、不可解な放送が行われている。

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 さらに、過去には外部からの干渉とみられる事例も報告されている。

 2022年には何者かがこの放送局の周波数をハッキングし、K-POPの楽曲やネットミームの画像、さらには謎の音声などを流したことが確認された。

 当時、無線愛好家がスペクトル分析機を使って信号を調査したところ、明らかに通常とは異なる放送内容が検出された。

 UVB-76は一般にも傍受可能な形式で放送しているため、特殊なソフトウェア無線送信機を使えばフラッディング攻撃(大量の信号送信による妨害)が可能だという。

 このハッキング事件が発生したのは、ロシアによるウクライナ侵攻の直前だったこともあり、一部ではウクライナ側のハッカーによる心理戦や攪乱工作ではないかという見方もある。

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放送の目的は?

 UVB-76の放送目的については今なお公式な発表はない。

しかし、これまで提唱されてきた説には以下のようなものがある。

・受信局の監視確認:軍事施設のオペレーターが常に注意を払っているかを確認するテスト信号

・周波数のチャンネルマーカー:他局がこの周波数を使えないようにするための占有信号

・報復核攻撃システム「死の手(Dead Hand)」との関連:核攻撃を受けた際に自動で報復攻撃を指示する装置の一部

 死の手とは、冷戦時代にソ連が開発したとされる自動核報復システムで、国内の核爆発や通信断絶が確認されると、人間の操作なしに核ミサイルを発射する仕組みだ。

 ロシア語では「ペリメートル(Perimeter)」と呼ばれ、現在も稼働している可能性がある。

 一部では、UVB-76のブザー音がこのシステムの動作確認信号ではないかという説もあるが、実際には放送が何度か停止しているため、信憑性は低いとされている。

 人知れず発信される不気味なブザー。いったい誰に向けたメッセージなのだろう?

追記(2025/09/11):読み上げられたフレーズで英語表記として書いた部分訂正して再送します。

References: Wionews[https://www.wionews.com/trending/russian-doomsday-radio-buzzes-again-transmits-two-coded-messages-people-ask-who-s-listening-and-why-now-1757394065471] / Indiatimes.com[https://economictimes.indiatimes.com/news/international/us/russias-doomsday-radio-speaks-again-uvb-76-broadcasts-russian-names-numbers-and-cryptic-phrases/articleshow/123772355.cms]

本記事は、海外の記事を参考に、日本の読者向けに重要な情報を翻訳・再構成しています。

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