発酵桃を食べ意識不明となったアライグマの子が、人間の看護師に助けられる
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 アメリカ、ケンタッキー州で、発酵したモモを食べて酔っ払ったアライグマの赤ちゃんが、ゴミ箱の中で意識を失うという事故が起きた。

 その命を救ったのは、たまたま出勤途中で通りかかった人間の看護師だ。

 ぐったりしたアライグマに両手を使った心肺蘇生(CPR)を行い、見事に息を吹き返させたのだ。

 アライグマの赤ちゃんは療養後、無事自然に戻されたという。

取り乱すアライグマの母、酔っぱらって動けない子供たち

 人間の看護師、ミスティ・コームズさんは、ケンタッキー州東部レッチャー郡にあるホワイトスバーグ市の保健所へ出勤する途中、駐車場で慌てふためいている大人のアライグマを見た。

 このアライグマは、しきりにゴミ箱の周囲を行ったり来たりし、ときおり中を覗き込むような動きをしている。

 ただ事ではないと感じた彼女と同僚たちは、ゴミ箱の中からもガサガサと音がするのに気づいた。

 中を覗くと、2匹の赤ちゃんアライグマがぐったりとしていた。母親は子供たちをどうやって助けていいのかわからず、焦っている様子だ。

 この駐車場近くには蒸留所「ケンタッキーミスト・ムーンシャイン(Kentucky Mist Moonshine)」があり、そのゴミ箱には発酵したモモが大量に捨てられていた。

 コームズさんは、アライグマの赤ちゃんたちがそれを食べて酔っ払って、動けなくなってしまったと推測した。

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一匹はすぐ救出、もう一匹は水に沈んでいた

 コームズさんは、1匹目のアライグマの赤ちゃんをスコップで慎重にすくい上げると、幸いにも自力で立ち上がり、地面に降ろすとすぐに母親の元へ駆け寄った。

 しかし問題はもう1匹だった。ゴミ箱の底には水が溜まっており、その中で赤ちゃんアライグマがうつ伏せに沈んでいたのだ。

 ぐったりとしていて呼吸も確認できず、完全に意識を失っていた。

 「みんなは“もうダメだ”って言っていました。

体に触ると冷たくて、水を吸っているのがわかりました」

 それでもコームズさんはすぐに応急処置に取りかかった。

 まず背中を叩いて水を出させ、次に仰向けにして心臓マッサージを開始。彼女は看護師としての経験を活かし、人間の赤ちゃんに施すのと同じように優しく、適切に胸部や背中を押した。 

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 その場にいた誰もが絶望的だと思った中、懸命な救命措置を続けた。

 「正直、目を覚ましたら噛まれるかもしれないって不安もありました。アライグマは狂犬病を持っていることもありますからね。でもその場では、それよりも命を救うことしか頭にありませんでした」

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ようやく息を吹き返したアライグマ

 すると、ようやくアライグマが小さく呼吸を始め、意識を取り戻した。

 救助されたアライグマは、その後ケンタッキー州魚類野生生物局の職員に引き取られ、レッチャー郡にある動物病院に搬送された。

 コーネット獣医の診察の結果、幸いにも深刻なダメージや後遺症は見られなかった。やはり発酵した桃を食べて酔っぱらっていたという。

 アライグマには点滴が施され、一晩かけてアルコールが抜けるまで様子を見ることになった。

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元気を回復し、母やきょうだいの元に帰される

 このアライグマには、アメリカの往年のテレビ番組『メイベリー110番(The Andy Griffith Show)』に登場する「町の酔っ払い」オーティス・キャンベルにちなんで、「オーティス」という名前が付けられた。

 翌日には、無事に回復したオーティスを再びコームズさんが引き取り、発見された駐車場へと連れて行った。

 母親アライグマはまだ近くを離れずにおり、放たれた赤ちゃんが母親の元へと駆け寄っていく姿も確認された。親子は再会を果たし、再び自然へと帰っていった。

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 「本当に信じられない体験でした。あの子が助かったこと、そして自分の手でその命を繋げたことが、今でも心に残っています」とコームズさん。 

 人間の看護師さんは、弱っている動物も放っておけなかったようだ。そして適切な処置により、動物の命も救ってくれたのだ。

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