
オーストラリア東海岸の保護施設で、嵐の後のがれきの中から、ひときわ大きな鳴き声を上げていた赤ちゃんヤギが救出された。その声はまるで人間の赤ちゃんそっくりで、スタッフたちは皆驚いたという。
チェリーと名付けられたそのヤギは、重い呼吸器疾患を抱え、命が危ぶまれていたが、スタッフたちの懸命なケアと愛情により元気に回復した。
ずっと人間の手で育てられたため、自分を人間と思っているふしもあるようで、言葉まで理解するようになったという。
人間の赤ちゃんそっくりの鳴き声で命をつないだ赤ちゃんヤギ
オーストラリア東海岸、バイロン・ベイのすぐ北に位置する動物保護施設「オウル・アンド・プッシーキャット・レスキュー(Owl and Pussycat Rescue)」の近くで、激しい嵐の後、がれきの下から人間の赤ちゃんそっくりの大きな鳴き声が聞こえてきた。
声の持ち主は、生まれたばかりのような小さなヤギの赤ちゃんだった。スタッフはすぐにがれきの中から彼女を救い出した。
保護されたときにはすでに衰弱が激しく、重い呼吸器疾患を抱えていた。
スタッフは急いで彼女を獣医に連れて行き、抗生物質や下痢止めの薬を投与しながら、1日に8回から10回もの授乳を行った。
「最初にチェリーを保護したときは、本当にこのまま死んでしまうかもしれないと思いました。少しの時間も無駄にできなかったので、すぐに病院に連れて行きました。」と当時を振り返りスタッフは語る。
人間のように泣き、人間のように育つ
体調が少しずつ回復すると、チェリーの個性が顔を出し始めた。家の中をちょこまかと走り回り、まるで人間の赤ちゃんとヤギが合体したかのような存在になった。
「赤ちゃんヤギって、新生児みたいに頻繁な授乳が必要なんですけど、同時に幼児みたいに走り回るんです。おむつをつけようとすると家中逃げ回って、本当に手がかかるけど笑える存在です。」
スタッフたちは、チェリーが人間と一緒に暮らしていく中で、自分をヤギではなく“人間”だと認識し始めていることに気づいた。
賢くておてんば、でも元気いっぱいでみんなを楽しませる
チェリーは驚くほど頭が良く、おてんばな性格だ。
「“ベッドタイム(Bedtime)”や“ミルキー(Milky)”っていうと、ちゃんと反応します。“ナナ(Nana)”はバナナ、“キャロット(Carrot)”もわかるし、自分の名前もすぐに覚えました。」
施設のスタッフたちは、チェリーが自分を人間と思い込んでいることを心配している。
現在は屋内で人間たちと一緒に過ごしているが、将来的には本来のヤギとしての暮らしに戻れるよう、屋外の納屋での生活に慣れさせていく計画だ。
「チェリーにはものすごく大きな個性があるんです。自信に満ちていて、ちょっと生意気なところもあるけど、そこが本当にチャーミング。自分がみんなに愛されてるってことを、ちゃんとわかってるんです。」
現在チェリーは、納屋で他のヤギたちと一緒に生活できるよう準備を進めている。
それでも彼女の中では、人間としての自覚?を手放す日はそう簡単には来ないかもしれない。