うれしいニュース。メキシコで120年ぶりに「オミルテメワタオウサギ」を再発見
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 1900年代初頭から、その存在が確認されていなかったワタオウサギ属の一種「オミルテミワタオウサギ」が、メキシコで再発見された。

 メキシコの生物多様性管理保全研究所(INMACOB)代表のホセ・アルベルト・アルマサン=カタラン氏が率いる調査チームは、2019年からオミルテミワタオウサギの調査を開始。

 5年をかけてゲレーロ州内の10か所を調査し、そのうち7か所でオミルテミワタオウサギの姿を確認することができたのだ。

120年見つからなかったウサギを「再発見」

 調査チームはまず、メキシコ南部の太平洋岸にあるゲレーロ州の州都、チルパンシンゴ周辺の森林から探索を始めた。

 ここは1904年に、エドワード・ウィリアム・ネルソンによって初めてこのオミルテミワタオウサギ(学名:Sylvilagus insonus、英名:Omilteme cottontail)が記録された場所である。しかしこの調査では大きな成果は得られなかった。

 そこで1年後、彼らはより標高の高いシエラ・マドレ・デル・スール山脈にある、フィロ・マヨール地方の針葉樹林へと調査地点を移すことにした。

 その地域では、今もオミルテミワタオウサギが食料として、定期的に狩猟されているという噂を聞いたからだ。

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 2020年、現地で行われたインタビューでは、なんと多くの人がオミルテミワタオウサギを知っていると証言。

 フィロ・マヨール地方の村に住む地元のハンターたちが、以前に狩猟したウサギ3匹の標本を調査団に提供してくれた。

 この標本の特徴を、博物館の標本や、1904年のネルソンの記録と比較したところ、毛色や体長、巣骸骨の特徴などが一致した。

 オミルテミワタオウサギがこの地域に今も生息していることを確信した調査チームは、森の中10カ所にカメラトラップを設置。

 その結果、7カ所のトラップカメラに、オミルテミワタオウサギの姿がとらえられていたのだ。

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 アルマサン=カタラン氏は、この成果を受けて次のように語っている。

100年もの間、誰一人として生きたオミルテミワタオウサギを見ていなかったと考えると、信じられない気持ちでした。



普通のワタオウサギとはまったく違う姿で、実際に目にできたことに驚きと喜びでいっぱいでした

 地元の人々によれば、このウサギは夏の時期によく目にするそうで、調査チームも5月から9月にかけて、彼らの姿を道路沿いでも頻繁に観察したそうだ。

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(オミルテミワタオウサギの生きた姿をとらえたことで)このプロジェクトの目的の80%は達成されました。

しかし、この種の自然史についてはまだ学ぶべきことがあります。特に最も多くの個体が記録されている1月から6月にかけての繁殖期に、どのような行動をとるのかを、さらに詳しく知る必要があります。

オミルテミワタオウサギに関する現地の知識や、この種が分布域で果たしている役割をより深く理解することも欠かせません。

さらに地域住民や地方自治体当局、国立自然保護地域委員会(CONANP)と協力して保全計画を策定することも重要になるでしょう

黒い尻尾のユニークなワタオウサギ属

 ワタオウサギは北南米大陸に生息するウサギで、現在は20種ほどが知られている。その名の通り、丸い綿毛のような白い尻尾を持っている。

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 だがオミルテミワタオウサギには、この白い綿毛のような尻尾はなく、黒くて短い尻尾が特徴だ。

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 さらに彼らは、シエラ・マドレ・デル・スール山脈の針葉樹林にのみ生息する、生息範囲が限られたニッチな種なのである。

 実は同時期、アルマサン=カタラン氏のチームがオミルテミワタオウサギを探していたのと同じ地域で、ジャガーの監視調査をしていたチームがあった。

 生物学者フェルナンド・ルイス=グティエレス氏が率いるこの調査チームのトラップカメラにも、オミルテミワタオウサギの姿がとらえられていたという。

 映像が撮影されたのは2024年のことで、黒い尾や小柄な体格といった特徴から、普通のワタオウサギではないと気づいたそうだ。

カメラに映ったウサギがリスと同じ大きさだったことから「普通のウサギではない」と気づきました。



そこでジャガー調査機関「Cenjaguar」の責任者であるセバージョス博士に映像を送り、検証の結果、それが伝説のオミルテミワタオウサギであると確認されたんです

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 ルイス=グティエレス氏のトラップカメラの映像をより詳しく分析することで、オミルテミワタオウサギの行動に関する情報も少しずつ増えてきた。

 例えば、彼らの姿がとらえられたケースの68%は夜間に発生しており、主に夜行性である可能性が浮上した。

 また、撮影された映像のほとんどは単独の個体であり、彼らが主に単独行動を好むことを示唆している。

 5月と12月には子供の姿がとらえられており、繁殖活動は年に2回行われている可能性もあるという。

ここは豊かで、概して非常に多様性に富んだ地域であり、多種多様な動植物が生息しています。

この山岳地帯はよく保全されており、森林は長年手つかずのまま原生林に覆われており、人間の活動による大きな影響は受けていないのです。

美しく清らかな川が流れ、驚くほど透き通った水量を誇る地域。アクセスが困難な非常に深い森林地帯。

そして人間の介入はあるものの、それほど頻繁ではない地域。まさにこうした場所で、オミルテミウサギが目撃されているのです

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保全への取り組みはまだこれから

 オミルテミワタオウサギの生息域は、ゲレーロ州のシエラ・テクアニ生物保護区に含まれているが、この種を守るための特別な保全措置はまだ取られていない。

 幸いなことに、調査チームが聞き取りを行った地元の住民全員が、密猟や自給自足のための狩猟が、個体数減少の原因になっていると科学者が判断した場合、オミルテミワタオウサギの保護に協力する意向を示したという。

 今回の調査はINMACOBが主導し、国際的な自然保護団体「Re:wild[https://www.rewild.org/Re:wild]」の支援で行われた。

 Re:wildは世界各地で「科学的な目撃記録が10年以上ないが絶滅とまではされていない種」を探す取り組みを行っている自然保護団体である。

 これまでに十数種の「再発見」にかかわっており、今回のオミルテミワタオウサギは、Re:wildにとって13番目の快挙だそうだ。

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今回の調査は予想外の展開に満ちており、この小さなウサギを見つけるために、私たちは聞き取り調査からドローンまで、あらゆる手段を駆使しました

 Re:wildの「失われた種」担当者、クリスティーナ・ビッグス氏は今回の調査について、このように述べている。

この粘り強く包括的な努力は高く評価されるべきです。IUCNレッドリストの評価担当者が、種の生存に向けた推奨を行うための、重要な最新情報を提供するものだからです。

アルマサン=カタラン氏とそのチームは、オミルテミワタオウサギが再び科学の手から失われることのないよう、大きな知識の空白を埋めようとしているのです

References: Scientists rediscover a Mexican rabbit they hadn’t seen in 120 years[https://news.mongabay.com/2025/05/scientists-rediscover-a-mexican-rabbit-they-hadnt-seen-in-120-years/] / Reaparece el conejo de Omiltemi en México: la especie que se creía extinta desde hace 120 años[https://es.mongabay.com/2025/04/conejo-omiltemi-reaparece-mexico-donde-extinto-sierra-madre/]

本記事は、海外の記事を基に、日本の読者向けに独自の視点で情報を再整理・編集しています。

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