
2025年3月、アメリカ、カリフォルニア州の馬やロバの救助保護施設に、珍しいシマウマとロバの交雑種、ゼブロイドの「ゾンキー」の赤ちゃんが到着した。
生後すぐに母親から引き離された彼、「ゼベディ」は、娯楽のための狩猟トロフィーハンティングの獲物として売買される運命にあった。
だが、施設の設立者である女性が救いの手を差し伸べたことで、ゼベディの未来は大きく変わることとなったのだ。
競り市でシマウマとロバの交雑種「ゾンキー」を保護
カリフォルニア州マリブの美しい丘陵地帯に佇む、「Skydog Ranch(スカイドッグ・ランチ)[https://www.skydogranch.org/]」は、殺処分場や競売、不適切な飼育環境にある馬やロバたちを救助し、広大な敷地で永遠の住処を与える保護施設だ。
スカイドッグ・ランチの設立者のクレア・ステープルズさんは、テキサス州で行われる競売市に出かけては、「救うべき動物」を探していた。
ある日、彼女は1頭の珍しい動物に目を引かれた。ロバに似ているが、足には縞模様がある?
この動物は、シマウマのオスとロバのメスの間に生まれた「ゾンキー(ジンキー)」という、極めて珍しい交雑種、ゼブロイド[https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%BC%E3%83%96%E3%83%AD%E3%82%A4%E3%83%89]だったのだ。
ゾンキーは自然界ではめったに生まれない存在だ。
見た目はロバに似ているが、脚や首には縞模様が浮かんでおり、シマウマの血を引く独特の外見をしている。
ゾンキーはその希少性ゆえに「珍獣」として扱われ、しばしば人間の好奇心や商業利用の対象となってしまっていたのだ。
彼は生まれてまだ数週間しか経っていないのに、母親から引き離されて、競りにかけられたいたんです
この赤ちゃんゾンキーは、競り市で「商品」のシールをお尻に貼られたまま、囲いの中でひとりぼっちで座り込み、怯えながら運命の時を待っていた。
だが幸運にも、クレアさんが彼を見つけ、施設に連れ帰った。彼女はこのゾンキーの赤ちゃんに「ゼベディ」という名前をつけ、その運命を変えることに成功したのだ。
もし、クレアさんがこの競売市に行かず、ゼベディに出会わなかったら、彼にはどんな運命が待っていたのだろうか?
ゼベディはどこかに売られ、狭い策の中で育てられたのちに、トロフィーハンターのターゲットになる運命にあった。
トロフィーハンティングとは?
トロフィーハンティングとは、娯楽として動物を狩り、その剥製や写真を「戦利品(トロフィー)」として持ち帰る行為を指す。
一例を挙げると、2015年7月、ジンバブエのワンゲ国立公園で、「セシル」と呼ばれたライオンがトロフィーハンティングの犠牲となった。
セシルはオックスフォード大学の研究チームによって首輪をつけられ追跡されていた13歳の雄ライオンで、観光客にも親しまれていた存在だった。
しかしアメリカ人の歯科医師、ウォルター・パーマーがガイドに高額の費用を払い、禁漁区から餌でおびき出し、夜間に弓矢を放って負傷させた。
そしてその翌朝に、改めて銃で撃って仕留めたと報じられている。この行為は国際的な批判を呼び、トロフィーハンティングの是非をめぐる議論が世界的に高まるきっかけとなった。
セシルの死は、野生動物保護と娯楽としての狩猟の矛盾を象徴する事件として記憶されており、日本でも報道されたので目にした人もいるだろう。
さらにその2年後には、セシルの息子のゼンダも別のハンターに打たれて死亡。親子そろってトロフィーハンティングの犠牲となった。
トロフィーハンティングは動物愛護の観点から批判も多い行為だが、アメリカやアフリカではいまだに需要があり、珍しい動物や外来種は特に標的になりやすい。
特に「缶詰狩り(canned hunting)」と呼ばれる形態は、その中でも世界的に特に問題視されている行為だ。
これは柵で囲まれた狭い場所で、客が料金を払って撃ち殺すことを言う。逃げ場も抵抗の余地もなく、ただ「戦利品」を得るためだけの狩猟だ。
ただそのためだけに、動物を繁殖させ、最期の時まで狭い囲いの中で生かしておく、そんな行為が横行している。
ゼベディはこのトロフィーハンティングの「獲物」として、売られていく寸前でクレアさんに助けられたのだ。
サンクチュアリで出会ったロバが母親代わりに
彼は私の心を強く揺さぶりました。最終的に、私は彼を奇跡的に救い出すことができたんです
ゼベディとの出会いを、クレアさんはこのように回想する。彼女はゼベディに健康診断を受けさせると同時に、何とかして彼の母親を探そうとした。
母親がいたというサファリパークに、何とかして連絡を取ろうと試みたが、結局ゼベディが孤児であることを受け入れざるを得なかったという。
スカイドッグ・ランチに到着したゼベディは、保護されたばかりのロバ「メイベル」と、片目の小さなポニー「スノーボール」と一緒に過ごすことになった。
3頭はすぐに打ち解け、仲良くなった。彼はメイベルを新しい母親だと思ったのか、おっぱいを吸おうとするほどだった。
とはいえゼベディはまだ幼かったので、哺乳瓶でミルクを飲ませる必要があったが、新しい家族は彼が健やかに育つよう支えてくれた。
トロフィーハンティングへの批判が殺到
ゼベディが元気にサンクチュアリで過ごしているとのニュースに、インターネットでは多くの喜びの声と、トロフィーハンティングへの批判が寄せられている。
- ゼベディ、大きくなったね! この小さな家族が大好き。素晴らしい環境を歩く姿を見るのは最高に美しい。
- 産毛の下にあんなに縞模様があったなんて! 彼はとても美しいわ
- この世界がどれほど残酷になり得るかについて、どれだけ謝っても足りない。無事でいてくれて本当によかった
- 残念ながら、もっとひどくなっていきそうだよ
- もし遊びのためなら、人間同士で狩りをすればいいのに。
そのほうがよっぽど刺激的じゃない?
- イカゲームは正しかったのかも…
- 彼らがいないほうが、この世界はきっと良くなるだろうね
- 動物に対して人間がしていることを思うと、怒りと悲しみでいっぱいになる。彼らはそんな目に遭うべきじゃないんだ
- えっ、テキサス? これアメリカの話なの? 気分が悪くなる…
- 母親を探し出して再会させられる可能性はないの? 神様、彼女がまだ生きていまするように
- 人がどうしてこんなに残酷になれるのか…動物を「トロフィー」として殺して楽しいのか?
- 本当に吐き気がする。こんなことを楽しむ人間はどんな心を持ってるんだろう?
- こういう人間は、やがて子供に対しても恐ろしいことをするんだよ
- スポーツとしての狩猟がどうして合法なの? 恐ろしい! どれだけ怖かったでしょう。あなたたちの活動に感謝します!
- え、待って!? 人間って何やってんの…もうダメだ、この世界は終わってる。
- これはテキサス全域でやってる「缶詰狩り」だ。エキゾチックアニマル(アンテロープ、カンガルー、シマウマなど)を柵で囲った土地で飼育し、金持ちに撃たせるんだ。狂ってるよ
- 本当に? どうしてこんなことが現実にあるの? 頭が追いつかない
- 南アフリカでも同じようなことが行われている。トラやライオンを繁殖させて、子供のうちは観光客に一緒に写真を撮らせ、大人になると囲いの中で撃たせて戦利品にするんだ。最低だよ
- この尊い天使を救ってくれてありがとう! 病んだ人間に撃たせるためだけに動物を繁殖させるなんてことが、どうして合法なんだ? どうやってこの忌まわしい行為を止められるんだよ
- 自分の腕前を誇示したいなら、空中のハエを箸で捕まえる練習でもすればいいんだ
- ただ撃ち殺すために珍しい動物を繁殖させるなんて、なんて残酷なことをしてるんだろう
- 無邪気な小さな動物を撃って快感を得るなんて想像できる? 完全に狂気だ。
- たいてい部屋に閉じ込められていて、逃げることも守ることもできない。無防備な子供の動物を撃って壁に飾るなんて、どこが「男らしい」んだろう。子供のころから、動物の頭を飾ってる家の人間を軽蔑してた。
近所に50もの頭を飾ったパン屋があって、店主と話すのも嫌だった- 「缶詰狩り」は完全に恥ずべき行為。禁止すべきだ。人間はどうかしてる。
トップモデルが保護活動家に転身
クレアさんはイギリスの出身で、幼い頃から馬が大好きで、厩舎で何時間も過ごすような子供だったという。
彼女はのちにアメリカに移住し、トップモデルとしてセレブの世界に身を置くことになる。富豪たちに混ざって華やかな生活を送っていた彼女だが、いつしかむなしさを感じるようになった。
そんな時、彼女は再び馬たちに出会った。乗馬クラブに誘われ、馬たちと過ごすうちに、子供の頃の馬たちへの愛情が戻って来たのだそう。
自分の人生をじっくりと見つめ直し、人生の後半で何をしたいのかを自問自答しました。本当に意義のある人生を送りたいと思ったのです。
その時点ですでに2~3頭の馬たちを救っていましたが、どれほど多くの野生馬が助けを必要としているかを考え尽くした後、私は夫に「もっと大きな牧場が必要だわ」と言ったんです
それがスカイドッグ・ランチの始まりだった。そして今ではカリフォルニア州に2か所、オレゴン州に1か所の拠点を持つ。
私はただ、人々に再び馬を愛し、馬がどれほど素晴らしく、知覚力のある生き物であるかということに気づいてほしいのです
ゼベディは今、彼女のサンクチュアリで、メイベルやスノーボールといった仲間たちと一緒に自由に走り回っている。
References: Woman Comes Across Rare Baby At Auction House And Saves Him Before It's Too Late[https://www.thedodo.com/daily-dodo/woman-comes-across-rare-baby-at-auction-house-and-saves-him-before-its-too-late]
本記事は、海外の記事を基に、日本の読者向けに重要なポイントを抽出し、独自の視点で編集したものです。