うれしいニュース。メキシコでジャガーの生息数が14年間で30%も増加

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 メキシコでジャガーの個体数が、近年大幅に増加していることが、現地の野生動物保護団体の調査で判明した。

 2010年には推定で約4100頭が生息していると言われていたが、2024年には5326頭が確認され、14年間で30%増加したことがわかったのだ。

 環境破壊や密猟など解決すべき課題の多い中、この数字は保全活動に携わる人々に大きな希望を与えている。

2010年からの14年間で30%も個体数が増加 

 2010年、Alianza Nacional para la Conservación del Jaguar[https://www.facebook.com/AlianzaNacionalJaguarMexico/?utm_source=chatgpt.com](ジャガー保全のための全国同盟、ANCJ)のヘラルド・セバジョス博士ら研究者は、メキシコにおけるジャガーの生息数の調査を行った。

 研究者たちは「1000頭ほどしかいないのでは…」と悲観しながら初の全国調査を実施したが、約4100頭と、予想をはるかに上回る数が確認され、彼らはひとまず胸をなでおろした。

これは大きな驚きで、素晴らしいニュースでした。もちろん4000頭では依然として絶滅が危惧されますが、1000頭よりはずっと良いでしょう

 そしてその15年後、さらに良い知らせが届いた。2024年に行われた最新の調査では、ジャガーの個体数は5326頭と確認され、2010年に比べなんと30%も増加 していたのだ。

この14年間、ジャガーが個体数を維持するだけでなく、むしろ増やしてきたという事実は驚異的です。メキシコにとっても、世界にとっても朗報ではないでしょうか

 セバジョス博士はこのように述べ、個体数が確実に、飛躍的に増加していることに安堵の思いを表した。

 また、ANCJの州戦略コーディネーターで、メキシコの自然資源・農村開発委員会の代表を務めるウンベルト・アダン・ペーニャ氏はこう語っている。

これほど多くの個体数を数えられるとは予想していませんでした。アグアスカリエンテス州やゲレロ州の特定の地域のような地域でも、ジャガーが発見できるとは思ってもいなかったのです

 これまでほとんど見られなかった地域でもジャガーの生息が確認されたのだ。

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ジャガー保全キャンペーンの成果

 この調査はメキシコ国内の15州で90日間にわたって行われ、920台ものモーションカメラが使われた。

 研究者約50名と地域コミュニティの協力を得ての調査対象地域は、なんと41万4,000ヘクタールにも及ぶ。これはメキシコ史上最大規模の哺乳類調査となった。

 地域別の個体数の内訳は次の通りである。

ユカタン半島:1699頭
南太平洋沿岸地域:1541頭
北東部・中部地域:813頭
北太平洋沿岸地域:733頭
中部太平洋沿岸地域:540頭

 セバジョス博士は、個体数増加の要因として次の3つを挙げている。

  • 自然保護区を維持し、ジャガーが自由に行き来できる環境を守ったこと
  • 牧畜農家との衝突を減らしたこと
  • 広報キャンペーンにより、ジャガーの危機を国民に知らしめたこと

 実はメキシコでは、かつてジャガーの存在はほとんど知られていなかったという。だがこういった調査を経て、現在ではメキシコで最も有名な動物の一つになったという。

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絶滅の危機を脱するにはさらに30年が必要か

 しかし、ジャガーの個体数が絶滅の危機から脱するには、依然として15年から30年にわたる着実な増加が必要だとペーニャ氏は語っている。

保護区の拡大により、ジャガーがより自由に動き回れるようになったことで、個体数の増加に拍車がかかったと思われます。

しかし、彼らが絶滅の危機から脱するには、さらに15年から30年にわたる着実な個体数の増加が欠かせません

 報告書によると、個体数が8,000頭に達するには、今後さらに30年以上かかるだろうと推測されている。

 つまりこの増加率を保った状態では、ジャガーが「絶滅危惧」から外れるまでには、25~30年かかる見込みだというのだ。

 研究チームは現在、この期間を半分の15年に短縮する ことを目標に掲げ、保全活動に取り組んでいる。

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最大の課題はジャガーが生息できるエリアの拡大

 しかしその前途には課題も山積している。森林破壊と生息地の喪失は依然として大きな脅威であり続けている。

 世界自然保護基金(WWF)の統計によると、ジャガーは過去40年間でメキシコにおける生息地の最大60%を失っているという。

 過去6年間で、メキシコでは約60万ヘクタールの森やジャングルが失われ、ユカタン半島だけでも毎年6万ヘクタールが消滅しているそうだ。

 ジャガーが生息数を減らしている原因は、高速道路や鉄道の建設や牧場の拡大、そして密猟の横行など、ほとんどが人間に起因するものだ。

 特に開発による生息域の縮小と分断が、ジャガーが暮らし、狩りを行える領域を大幅に減らしている。

 現地では野生動物用の横断歩道を増設するなどして、彼らが移動しやすい環境を作り上げ、生息域の保全に努めているが、まだ十分とは言い難い。

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 ユカタン半島を走る観光・開発プロジェクト「マヤ鉄道」は、環境破壊の象徴として強く批判されてきた。

 だがペーニャ氏は「国内で最も多くの動物用通路が設けられた事業のひとつ」であると強調する。

 調査によれば、鉄道が通るカラクムルの森林では、ジャガーの個体数に減少は見られなかったそうだ。

 ペーニャ氏は広大な生息域を持つジャガーの移動を守るため、生息地の「連結性」を確保する政策の必要性を訴えている。

ジャガーが生きるには、獲物となる動物たちが必要です。生態系が劣化すれば、獲物もいなくなります。獲物がいなくなれば、ジャガーもいなくなってしまいます。

彼らの生息地の生態系を保護することは、生物の多様性と、生態系全体を守ることにもつながるのです。

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密猟や違法取引、牧場主たちとの衝突も問題に

 また、ジャガーにとっての脅威の一つは、密猟と違法取引だ。現在も毛皮や頭骨、爪などがオンライン市場で売買されており、メキシコはその拠点とされる。

 ANCJでは政府と販売プラットフォームに協力を求め、こういった「商品」を販売するサイトの根絶をしたいと考えているとのこと。

 また、牧草地を広げたい牧畜農家との衝突も続いており、土地所有者に保護のインセンティブを与える制度の実現も大きな課題とされている。

 ソノラ州では、生存しているジャガーを発見すると、牧場主に金銭的なインセンティブを提供する「Viviendo con Felinos」プログラムを実施。

 これにより牧場主たちがジャガーを「敵」とする立場から、金銭を生む「味方」であるとの認識が定着しつつあるそうだ。

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 ジャガーは非常に広大な生息域を必要とする生き物であり、1頭のジャガーに必要な土地は最低でも20~25平方km、餌の少ない環境では100平方kmに達することもあるという。

 ペーニャ氏は、最後に次のように警笛を鳴らしている。

ジャガーは人間の開発や、雨季から乾季へなど季節の段階的な変化には適応できますが、唯一、急速な生息地の変化には適応できません。

メキシコは、ラテンアメリカではアマゾン流域に次いで、ジャガーの生息数が多い場所です。私たちはジャガーの保護において、重要な役割を担わなければならないのです

References: Un respiro para el jaguar en México: el felino más grande de América aumenta su población[https://elpais.com/mexico/2025-08-27/cada-vez-hay-mas-jaguares-en-mexico-un-aliento-de-esperanza-para-su-conservacion.html] / ‘We’re winning a battle’: Mexico’s jaguar numbers up 30% in conservation drive[https://www.theguardian.com/world/2025/sep/01/mexico-jaguar-numbers-rise-conservation-drive]

本記事は、海外の記事を基に、日本の読者向けに重要なポイントを抽出し、独自の視点で編集したものです。

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