中国の航空ショーで「空飛ぶクルマ」が衝突し炎上

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 2025年9月16日の午後、中国の 長春市で行われた航空ショーのリハーサル中に、eVTOL(電動垂直離着陸機)、いわゆる「空飛ぶクルマ」の事故が発生した。

 観客によると、2機のeVTOLが飛行中に衝突し、1機が墜落。

少なくとも1人が負傷して病院に搬送されたが、幸い命に別状はなかったという。

「空飛ぶクルマ」同士の衝突事故が発生

 この日、長春航空ショーの会場では、中国「小鵬匯天[https://cn.aeroht.com/](XPeng AeroHT)」社のeVTOL2機が、編隊飛行のリハーサルを行っていた。

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 ところがその飛行中に2機が接触。うち1機はなんとか着陸に成功したが、もう1機は機体が損傷し、着地直後に炎上した。

 事故直後の様子はメディアやSNSに投稿された映像で確認できるが、黒い煙を上げて燃え上がる機体に、消防隊が放水する姿が映し出されている。

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 報道によると、この事故で少なくとも一人が負傷して病院に搬送されたが、幸いなことに命に別状はないという。

 この日は19日からの本番を控えたリハーサル飛行が行われており、観客のいない中での事故だったことが、不幸中の幸いだったといえるだろう。

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「空飛ぶクルマ」開発をリードする中国企業

 事故を起こした機体を開発した小鵬匯天は、2020年12月に設立された企業で、正式名称を「広東匯天航空航天科技」と言い、EV大手小鵬汽車(XPeng)の子会社にあたる。

 同社は世界でも有数の「空飛ぶクルマ」開発企業であり、これまでにもeVTOLのデモンストレーションや試験飛行を繰り返し、安全性をアピールしてきた。

 2024年には「陸地航母(Land Aircraft Carrier)」という、地上走行と飛行を組み合わせたモデルを発表し、世界の注目を集めていた。

 下は「あと数年後には、デートはこんな感じが当たり前になるかも?」みたいな、ロマンチックな「陸地航母」のコマーシャル。

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 この「陸地航母」は、2026年下半期には納車が開始される予定で、お値段は207万元(約4,300万円)。既に4,000件近くの注文が殺到しているらしい。

 そんな矢先に起こった事故だが、小鵬匯天の公式発表によると、原因は技術的な問題ではなく、あくまでも「飛行間隔を適切に保てなかった」、つまり運行上の問題だとしている。

安全性など課題はあるが、「低空経済」の未来は明るい?

 中国政府は、今後を見越した「低空経済」と呼ばれる新産業を推進しており、都市間移動や物流分野での活用が期待されている。

 低空経済とは、高度3,000m以下の空域を使い、空飛ぶタクシーやドローン配送などを商用展開する構想だ。

 2025年には中国全体で1.5兆元(約31兆円)、2035年には3.5兆元(約73兆円)規模の、巨大な市場に拡大すると予測[https://english.news.cn/20250716/e9d5163b802e4007ace01e82cae4d200/c.html]されている。

 その頃には、市街地の移動や通勤は、「空飛ぶクルマ」で…が、どこでも見られる風景になっているのかもしれない。

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 とは言え、アーバン・エア・モビリティ(UAM、都市型航空交通)の実現には、まだまだ多くの課題が横たわっている。

 技術的な問題はもちろんだが、空域の管理も未整備な地域が多く、編隊飛行を含む展示飛行では特にリスクが高くなる。

 今回の事故は、中国の低空経済への野心的なロードマップに、幾分かの冷水を浴びせる出来事となったと言えるだろう。

各国でも開発競争が激化・日本の場合は…?

 だが、世界市場に目を向けても、UAMつまり「空飛ぶクルマ」は、今後大きな成長が期待されている分野だ。

 アメリカやイギリス、ブラジルなど各国でeVTOLやUAV(無人航空機)の開発や試験飛行、認証手続きが進んでおり、今後は都市型エアタクシーや物流、救命・救助など幅広い場面での活用が見込まれている。

 調査会社によって具体的な予測値は幅があるものの、共通しているのは「2030年代にかけて市場が急速に拡大する」という見通しだ。

 昭和の時代には、「21世紀になったらエアカーが飛び回っている」なんてSFチックな未来予想図が、子供たちの夢をかき立てていたもんだ。

 あの頃夢見たテレビ電話や壁掛けテレビなんかが次々と実現している今、やっぱり次は「空飛ぶクルマ」が飛び回っている光景が、もうすぐ実現するかもしれない。

 では我が日本ではどうかというと、大阪万博では、丸紅、SkyDrive、ANA/Joby Aviationの3社が運航する「空飛ぶクルマ」のデモンストレーションが行われている。

 こちらは丸紅による、アメリカHEXA社の「空飛ぶクルマ」のデモ飛行。

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 そして下が、 スタートアップ企業SkyDrive[https://skydrive2020.com/]が自社開発した、「SKYDRIVE SD-05」のデモ飛行。会場内から海上ルートで、4分間の飛行を披露した。

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 そして10月にはANAホールディングスが、Joby Aviation社の「Joby S4」というeVTOL機体でのデモンストレーションを予定しているそうだ。

 天候などで変更や中止はあるかもしれないが、興味のある人は万博会場に足を運んでみてはどうだろうか。

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References: 小鹏汇天回应长春航展撞机事件:具体原因仍在调查[https://auto.gasgoo.com/news/202509/16I70433635C601.shtml]

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