
深い海の底には、まだまだ私たちの知らない生き物たちが息づいている。その中には我々の想像を超える見た目の生き物たちもいるだろう。
今回またしても、そんなユニークな新種の生き物が発見された。その名も「イリドゴルギア・チューバッカ(Iridogorgia chewbacca)」。
そう、あの「スター・ウォーズ」に出てくる毛むくじゃらのキャラクター、チューバッカにちなんで命名されたのだ。。
ふわふわの毛に包まれたこの不思議なクリーチャー。実はなんとサンゴの仲間だというから驚きなんだ。
長いモフモフを持つ不思議なサンゴ
この生き物はハワイ大学マノア校の専門家を含む研究チームにより、2025年9月4日付で学術誌『journal Zootaxa[https://mapress.com/zt/article/view/zootaxa.5689.3.3]』に掲載。新種として公式に記載された。
2006年、ハワイ・モロカイ島沖を調査していた研究チームの遠隔操作探査機(ROV)のカメラに、不思議な生き物の姿が映り込んでいた。
長いモフモフに覆われたその生物の全長は約1.2mほどで、研究者たちの記憶に強く残ったという。
更に2016年、マリアナ海溝付近モロカイ島でも同様の個体が確認された。
全長は50.8cmだったが、「触手」と思われる部分が驚くほど長く伸びており、長いものでは38cmほどに達していた。その姿はチューバッカを連想させたという。
日本だとクリーム色のムックを連想しちゃうかもね。
遺伝子解析で新種であることが判明
2006年と2016年の調査では、このサンゴはROV(遠隔操作探査機)によって撮影されていたが、いずれも標本が得られず、正体は謎のままだった。
しかし見た目が既知のタツマキヤギ(Iridogorgia)属のサンゴと似ていたため、以後ずっと、その変種のひとつにすぎないと考えられ、改めて調査されることもなかった。
だが今回、新たに熱帯西部および中部太平洋で採集されたタツマキヤギ属の標本12点を解析した結果、この「ふわふわしたサンゴ」が既知の種とは異なることが判明した。
ハワイ大学マノア校のレス・ワトリング教授と中国の研究者らが遺伝子解析を行い、正式に新種の「イリドゴルギア・チューバッカ(Iridogorgia chewbacca)」、として記載されたのである。
このサンゴを初めて見た時の感動は忘れられません。その長いモフモフと形は、すぐにチューバッカを思い出させました。深海での研究を長年続けてきた今でも、このような発見には立ち止まって注目してしまいます
ワトリング教授は、イリドゴルギア・チューバッカを初めて目にした時の印象をこのように語っている。
深海に生息するソフトコーラル
タツマキヤギ属は、刺胞動物門八放サンゴ亜綱キンヤギ科に属するサンゴで、樹状の群体を作って生活するソフトコーラル(軟質サンゴ)の仲間である。
名前から想像がつくように、長い螺旋状の構造をしているのが特徴だ。下の動画を見てもらうと、なんとなくその特徴が掴めるんじゃないかと思う。
イリドゴルギア・チューバッカも同様の構造をしており、枝分かれした群体は、それぞれが8本の触手を持つ細かい数千個ものポリプに覆われて、まるで柳の枝のようになびいている。
生息場所は深海にある岩盤で、群れて生えるのではなく、単独で「ぽつん」と立っている姿が確認されているそうだ。
深海には光が届かないため、彼らは珊瑚礁にいるサンゴのように光合成を行う共生藻は持たない。
そのかわり、無数のポリプが枝先から触手を伸ばし、水中を漂う微小なプランクトンや有機粒子を捕らえて生きている。
今回の研究では、イリドゴルギア・チューバッカに加え、もうひとつの新種「イリドゴルギア・クルヴァ(Iridogorgia curva)も報告された。
これまでに知られていた種と今回発見された新種2種を加え、熱帯西部太平洋では合計10種のタツマキヤギ属のサンゴが確認されたことになる。
研究者たちはこのエリアを、タツマキヤギ属の多様性が際立つ重要な海域として、改めて位置づける結果となった。
References: Chewbacca coral: New deep-sea species spotted in waters off Hawai‘i, Mariana Trench[https://manoa.hawaii.edu/news/article.php?aId=14141] / Mapress[https://mapress.com/zt/article/view/zootaxa.5689.3.3]