
アメリカで、救急搬送された飼い主を、病院の待合室の椅子の下で、吠えることなく、動かずじっと静かに待ち続ける犬の健気な姿がTikTokに投稿された。
この映像は、家族の付き添いで病院を訪れていた女性が撮影したもので、飼い主の男性は待合室にいる間、「この犬は大切な家族なんだ」と語ったという。
人と犬の深い絆、そしてアメリカならではのペットに対する柔軟な対応が、大きな反響を呼んでいる。
愛犬と共に担架に乗せられて病院にやってきた男性
アメリカ・オクラホマ州に住むアリス・グレゴリーさんは、家族に付き添い、病院の緊急外来(ER)に来て、待合室で待っていた。
そのとき、担架(ストレッチャー)に乗せられて病院内に運ばれてきた男性の姿が目に入った。彼の足元には、一匹の中型犬がぴったりと寄り添っていた。
病院は混雑していたため、すぐに診察室には案内されず、男性は一時的に待合室で待機することになった。その間も犬は飼い主のそばにじっとついていた。騒ぐことも、吠えることも一切なかった。
しばらくして男性だけが診察室へと案内された。犬は待合室に残され、椅子の下に身体を潜らせて静かに横たわった。
犬は動かずに、椅子の下から動くことなく、長い間ただ飼い主の帰りを待ちっていた。
「私たちが病院を後にするまで、その犬はずっとそこにいました。誰にも迷惑をかけず、じっと静かに、椅子の下で待ち続けていたのです」とグレゴリーさんは語った。
犬の様子が気になったグレゴリーさんと3歳の息子は、診察室に向かう前の男性に声をかけた。
「犬を撫でてもいいですか?」と尋ねたところ、男性は「もちろんいいよ」と優しく答えた。
「あの日はあまりにも慌ただしくて、犬の名前は思い出せません。ですが、あのときの光景は今でも覚えています」とグレゴリーさんは振り返る。
犬はとてもおとなしく、人間を信頼しており、子どもたちの手に安心して身体を委ねていたという。
「長男は嬉しそうに笑っていました。犬はとても穏やかで、優しい目をしていました。救急隊の方々の丁寧な対応も含めて、病院全体が一瞬だけ温かい空気に包まれたように感じました。あの犬の献身が、それを生み出したのだと思います」とグレコリーさん
後日、グレゴリーさんは自身のTikTokアカウント(@aris.jade)に動画を投稿した。
映像には、病院の椅子の下で静かに横たわり、飼い主の帰りを待ち続ける犬の姿が映っている。
投稿には「このことは今でもよく思い出します。彼は“この犬は自分の家族なんだ”と話していました」と書かれていた。
動画はすぐに話題となり、コメント欄には、「また知らない犬で泣いてしまった」「犬の忠誠心に人間は応えられているのだろうか」といった感想が並んだ。
アメリカでは犬が病院に入ることもある
日本では、衛生や安全の観点から病院への動物の立ち入りは禁止されているのが一般的だ。しかしアメリカでは、一定の条件下で犬が病院内に入ることが許される場合がある。
その一つが、介助犬(サービスドッグ)や感情支援動物(エモーショナル・サポート・アニマル)として正式に認定されているケースである。
アメリカでは「障害を持つアメリカ人法(ADA)[https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%9A%9C%E5%AE%B3%E3%82%92%E6%8C%81%E3%81%A4%E3%82%A2%E3%83%A1%E3%83%AA%E3%82%AB%E4%BA%BA%E6%B3%95]」という連邦法により、こうした動物の同伴が法律で保障されている。
もう一つは、今回のような緊急時の例外的な対応である。飼い主が搬送される際に犬も同伴していたため、医療スタッフは状況を理解し、一時的に犬の待機を認めたと考えられる。
TikTokのコメント欄にも「犬を待たせてくれて本当によかった」といった声が寄せられており、通常とは異なる対応だったことがうかがえる。
その後、グレゴリーさんは地域のFacebookグループで男性と犬のその後について調べようとしたが、情報は得られなかった。
それでも、彼女にとってこの出来事は、今でも忘れられない思い出として心に残っている。
「とても慌ただしい一日でしたが、この犬のおかげで、私たちの家族にとって温かく大切な記憶になりました