
繁殖犬として長い間、狭い小屋に閉じ込められていたゴールデンレトリバーのブルースは、ようやく保護され、温かい家族に迎え入れられた。
過酷な過去を乗り越えたブルースだが、家族がどこかに出かけるたびに強い不安に襲われていた。
そんなブルースに寄り添って励まし、心を支えようとしていたのは、元保護猫のダンテだった。
異なる動物のあいだに芽生えたやさしい絆は、リビングに設置された見守りカメラにしっかりと記録されていた。
パピーミルから救助され、ようやく見つけた「ずっとの家」
ブルースは2025年に10歳となるオスのゴールデンレトリバーで、これまでの人生のほとんどを「パピーミル(子犬工場)」と呼ばれる悪質な繁殖業者の元で過ごしていた。
パピーミルでは、犬たちは利益優先で繁殖のためだけに扱われる。狭いケージに閉じ込められ、十分な医療も世話も受けられないまま、次々と子犬を産ませられる環境に置かれていた。ブルースもその例外ではなかった。
その後、アメリカ・インディアナ州にある動物保護施設「ヒューメイン・フォートウェイン」で保護され、2024年、オーブリー・ターナーさんとその妻コリ・ホルターさんに引き取られた。ふたりはブルースにとって、初めての「ずっとの家族」となった。
飼い主が外出すると不安が止まらないブルース
こうして温かく、やさしい家族を得たブルースだが、心の傷は完全には癒えていなかった。
ターナーさんとホルターさんは共にフルタイムで働いているため、ブルースは日中ひとりで過ごさなければならないのだが、彼らが外出するたびに怯えるという。
ターナーさんは毎日昼休みに一度帰宅してブルースと過ごしていたが、それでも心配は尽きなかった。
「私たちが外出すると、彼は玄関からまったく動こうとせず、できるだけ小さくなって身を縮めていました」とターナーさんは語る。
そこでふたりは、ブルースの様子を見守るため、リビングにペット用の見守りカメラを設置した。
不安を察した猫のダンテが、ブルースに寄り添う
幸いなことに、ブルースの苦しみに気づき、そばで支えてくれた存在がいた。猫のダンテだった。
ダンテは1歳のオス猫で、以前トレーラー火災の現場から救出された保護猫だ。見守りカメラは、ブルースのそばに体をこすりつけながら「ボクがそばにいるから大丈夫だよ」と伝えるかのような行動を見せていたのだ。
その姿に、ターナーさんとホルターさんは胸を打たれたという。
「とても微笑ましい光景でした」とターナーさんは振り返る。
ダンテの行動は、ただの偶然には思えなかったという。ターナーさんは彼のことを「共感力に優れた猫」と表現している。
「正直に言って、彼は人間の脳の一部を持っているんじゃないかと思うことがあります。話しかけると、私たちの気持ちが伝わっているような気がするんです」
もちろん、ブルースとダンテは、最初から仲良しだったわけではない。ブルースはこの家にやってきた当初、猫を怖がっていたという。
「しばらくすると、お互いが安全な存在だと理解し合って、今ではすっかり仲良くなりました」とターナーさんは話す。
猫たちにより不安が和らいできたブルース
当時、家には猫が2匹いたが、その後さらに2匹を迎え、現在は4匹の猫とブルースが一緒に暮らしている。
「私たちが家にいるときには、猫たちとブルースはあまり関わらないんです。
家族や猫たちの支えもあり、ブルースは不安が軽減されたようだ。
飼い主たちが外出しても、以前のように玄関の前で何時間も待ち続けることはなくなった。
2階の寝室で過ごしたり、猫たちと昼寝をしたりじゃれ合ったりしている。そして飼い主たちが帰ってくると、階段を降りて出迎えるようになった。
「ブルースは180度変わりました」とターナーさんは語る。
「迎えたばかりの頃はとても臆病でした。すべてのことに怯えていたんです。でも今では、外の世界にはまだ少し怖がるところがありますが、家の中ではとても自信に満ちていて、おどけたり、笑顔をみせてくれるんです」
高齢の保護犬にも希望がある
ターナーさんは、高齢の保護犬にも希望があることを知ってほしいと話す。
「多くの人が、高齢の犬を迎えることは別れが早く来るリスクがあると感じています。でも、これは人間側の問題であって、本質はそこではありません」
ブルースは、思いやりと許しの心を教えてくれた存在だという。
「これまでに、あらゆる動物や人間に対して、こんなにも優しく、すべてを受け入れてくれる犬には出会ったことがありません」
「別れのリスクがあったとしても、それ以上の喜びや感動、貴重な思い出をもたらしてくれます。