
モンゴル・ゴビ砂漠の約1億1000万年前の断崖から、これまでで最も古いドーム型の頭をもつ恐竜の化石が見つかった。
新種新属として報告されたのは、「頭突き恐竜」として知られるパキケファロサウルス類で、「ザバケファレ・リンポチェ(Zavkaphalce rinpoche)」と命名された。
ザバケファレ・リンポチェとは、チベット語で起源を意味する「ザバ」と、ラテン語で頭を意味する「セファル」、そしてチベット語で尊いものという意味の「リンポチェ」を組み合わせた言葉である。
研究チームの一員である日本、岡山理科大学の研究者は、この発見は「アジアにおけるパキケファロサウルス類の起源と進化を理解する上で、極めて重要」だとしている。
この研究成果は、『Nature[https://www.nature.com/articles/s41586-025-09213-6]』誌(2025年9月17日付)に掲載された。
ゴビ砂漠で見つかった「最古」の頭突き恐竜の化石完全版
研究に携わったのは、日本の岡山理科大学恐竜学科の高崎竜司助教らと、アメリカのノースカロライナ州立大学兼モンゴル古生物学研究所のチンゾリグ・ツォクトバートル博士、福島県立博物館の吉田純輝学芸員らによる研究グループだ。
ザバケファレ・リンポチェが見つかったのは、モンゴル・ゴビ砂漠東部のクーレンドゥフにある、白亜紀前期(約1億1000万年前)の地層である。
今は砂漠に覆われているが、白亜紀前期には湖が点在する、断崖に囲まれ草に覆われた谷だったらしい。
2019年、研究チームはこの地層から、恐竜の全身骨格の化石を発見した。化石は約1億800年前のパキケロファロサウルス類で、体長は約1m、体重は約5~6kgほどだという。
下が発見時の状況で、右が頭、中央が胴体、左には足の部分が見えている。柔らかい堆積物に覆われていたため、ほとんど歪みもない状態だったそうだ。
保存状態が非常に良く、これまで見つかったことのなかった前足の骨や胃石、さらには尻尾までが完璧に保存されていたという。
研究者が足の骨の成長線を調査した結果、この化石は2歳以上の若い個体であることが判明した。人間でいうと十代の育ちざかりといったところだろうか。
これまで見つかった頭突き恐竜より1400万年も古い化石
パキケロファロサウルス類は、これまではほとんど白亜紀後期(約8600万~6600万年前)の地層から見つかっていた。
今回のザバケファレ・リンポチェの発見は、彼らがさらに1,400万年も古い時代から生息していたことを示す、最古の化石となった。
パキケファロサウルス類は、「頭突き恐竜」の異名を持つ石頭恐竜で、分厚いドーム状の頭骨が特徴だ。
この特徴から、彼らはお互いに頭部を激しくぶつけ合う「頭突き」を繰り返していたのではないかと想像されている。
分厚い頭の骨は何のため?
今回発見されたザバケファレ・リンポチェの頭部の骨も、このドーム状の構造を持っており、おそらくパキケファロサウルス類は進化の初期の段階から、この特徴を維持していたことが伺える。
本当に頭突きをしていたのか、していたとしたらいったい何のためだったのかはまだ想像の域を出ていない。
おそらくは縄張りや繁殖をめぐる争いを激しい頭突きで解決し、異性へのアピールにも使っていたのかもしれない。
研究チームの一員で、ノースカロライナ州立大学の准研究教授、リンゼイ・ザノ博士はこの頭部の構造について、次のように語っている。
この恐竜が頭部のドームを、社会的・性的な行動のために使用していたというのが、我々の共通の見解です
ドーム状の構造物は、捕食者から身を守ったり体温調節に役立ったりしたわけではありません。
おそらくは、自分を誇示したり、配偶者をめぐって競争したりするために使われていたのでしょう
研究チームはCTによる撮影を行い、この個体は死亡した時、まだ若年だったにもかかわらず、既に完全に形成されたドーム状の構造を持っていたことを確認した。
ザバケファレ・リンポチェについて「もっと詳しく知りたい!」という人は、発見者本人がVtuberとして説明してくれている楽しくわかりやすい動画があるので、ぜひこちらを見てほしい。
なお、2025年9月18日から10月19日まで、岡山理科大学C2号館1階の恐竜学博物館[http://dinosaur.ous.ac.jp/museum.html]で、ザヴァケファレの全身骨格レプリカが一般公開されている。興味のある人はぜひ訪問してみよう。
References: ‘Teen’ pachycephalosaur butts into fossil record[https://www.eurekalert.org/news-releases/1098386] / A domed pachycephalosaur from the early Cretaceous of Mongolia[https://www.nature.com/articles/s41586-025-09213-6]