
あなたの生まれた順番は?ちなみに私は長女だが、「長女はしっかり者」、「真ん中の子は社交的」、「末っ子は自由奔放」そんなステレオタイプなイメージを一度は耳にしたことがあるだろう。
生まれ順と性格の関係は昔から語られてきたが、いま海外のSNSを中心に注目されているのが「長女症候群(Eldest Daughter Syndrome)」という概念だ。
これは、きょうだいの中で最年長の娘が家庭内で過剰な責任を担い、その影響が大人になっても残るというもので、医療分野でも注目されており、多くの長女たちがTikTokなどで自身の体験を共有し、共感の声が広がっている。
医療機関も注目する「長女症候群」
アメリカの医療機関クリーブランド・クリニックでは、心理学者のケイト・エシュルマン博士が「長女症候群[https://health.clevelandclinic.org/the-deal-with-eldest-daughter-syndrome](EDS)」についての見解を示している。
これは正式な診断名ではないが、長女として育った人に共通して見られる性格傾向や心理的影響を指す言葉として使われているという。
博士によれば、長女は責任感が強く、自立的で思いやりがある一方で、完璧主義や不安傾向、他人を優先しすぎる傾向も見られやすいという。
特に注目すべきは、これらの傾向が本人の性格や人間関係、心の健康に長く影響を与える可能性があるという点だ。
SNSで可視化された長女たちの声
こうした「長女であること」の生きづらさは、SNS上でも共感の連鎖を生んでいる。TikTokでは「#eldestdaughtersyndrome」のハッシュタグが付けられた投稿が相次ぎ、「自分の子ども時代を返してほしい」「“しっかりしてるね”で全部片づけられてきた」といった動画に多くの「いいね」が集まっている。
あの有名な歌手、テイラー・スウィフトが「Eldest Daughter(長女)[https://www.youtube.com/watch?v=tQylxS3OIQE]」という楽曲をリリースしたことで更に「長女」に注目が集まった。
アメリカ・カリフォルニア州の公認結婚家族療法士(LMFT)、ケイティ・モートン氏は、自身のTikTokでこう語っている。
長女症候群は医学的な診断名ではありませんが、私たちが長女として育った中で経験してきた責任の重さ、感情的な負担、家庭内での役割とその影響を説明するための言葉として、多くの人に響いています
長女症候群に見られる8つの傾向
モートン氏は、長女の多くが他のきょうだいたちよりも多くの家事や兄弟の世話を任されて育ち、それが性格や生き方に影響を与えているとし、次のような8つの特徴的な傾向を紹介している。
1. 過剰な責任感を抱えがち
弟妹の世話、家事の手伝い、親の相談相手など、本来は大人が担うべき役割を幼い頃から任され、「小さな大人」として振る舞っていた人も多い。
このような状態は「親化(Parentified)」と呼ばれ、大人になってからも他人の世話を焼く傾向が残る。
2. 完璧を目指しすぎてしまう
「長女なんだからちゃんとしなさい」と言われ続けてきたことで、ミスを恐れ、失敗を許せず、つねに理想的であろうとする完璧主義に陥る。人から認められることでしか自己価値を感じられなくなってしまうこともある。
3. 不安を感じやすい
常に「何か問題が起きるのでは」と気を張ってきた長女は、緊張状態が続きやすい。ちょっとしたことでも心配し、気持ちが落ち着かず、過剰に警戒してしまう傾向がある。
4. 人の顔色をうかがってしまう
家族内で「いい子」としての役割を求められ続けた結果、自分の気持ちよりも他人の感情を優先するクセがついている。「嫌われたくない」「迷惑をかけたくない」という思いが先行し、本音を押し殺してしまう。
5. 境界線を引くのが苦手
「自分の意見を言うのはわがまま」「断ると悪い」という思いから、他人との間に健全な距離を保つのが難しくなる。自分の時間や気持ちよりも、常に他人の都合を優先してしまう。
6. 家族に対する複雑な感情
自分だけが負担を強いられていたという思いが、怒りや虚しさとして残ることがある。頭では「親も大変だった」「弟や妹に罪はない」と理解していても、感情として納得できない部分がある。
7. 罪悪感を手放せない
常に「もっと頑張れたかもしれない」「あのとき助けられたかも」と自分を責めてしまい、過度の罪悪感を抱えることがある。完璧を目指す気持ちが裏目に出て、自信を持てなくなってしまう。
8. 人間関係に負担を感じやすい
恋愛や職場、友人関係でも、「面倒を見る側」になりやすく、つねに相手を優先しすぎてしまう。時には、相手をコントロールしようとしたり、逆に尽くしすぎて疲れ果てたりと、バランスを取るのが難しくなる。
「長女だったこと」を見つめ直すという選択
もちろん、ここまで紹介してきた特徴がすべての長女に当てはまるわけではない。人それぞれの家庭環境や性格によって、その影響の受け方も違ってくる。
8つのうちいくつかに思い当たる人もいれば、まったく当てはまらなかったという人もいるだろう。
でも、もし少しでも「わかる気がする」と感じたなら、それは自分でも気づかないうちに、長女としての考え方や振る舞いが身についていた証なのかもしれない。
いまの自分を改めて見つめ直し、「なぜそう感じるのか」「なぜそう動いてしまうのか」を理解することで、楽になれるための糸口が見えてくることもある。
そしてもし、今の自分に少しでも疲れを感じているなら、一人で抱え込まずに、カウンセリングなど専門家の力を借りることも選択肢のひとつだ。
自分を変える必要はない。ただ、自分をもっと大切にする方法を見つければいいのだ。
References: Is ‘Eldest Daughter Syndrome’ Real?[https://health.clevelandclinic.org/the-deal-with-eldest-daughter-syndrome] / 8 Signs You Might Have Eldest Daughter Syndrome[https://www.vice.com/en/article/8-signs-you-might-have-eldest-daughter-syndrome/]