
西オーストラリア州の中西部で、2025年9月10日夜、奇妙な光が現れた。その光は、沿岸地域から内陸の数百kmに及ぶ広い範囲で多くの住民に目撃された。
その正体は今のところはっきりしておらず、UFO(UAP:未確認航空現象)の可能性があるという。
果たしてそれは大気の錯覚なのか、それとも私たちがまだ知らない“何か”なのか。現地で目撃された証言とともに、その謎を追ってみよう。
虹のように色が変化し、点滅する複数の光
2025年9月10日夜、西オーストラリア州パースの北約420km、ジェラルトン近くのポイント・ムーアで、父親のシェーン・プレーンさんと息子のブラッドリーさんが車で走行中に空に浮かぶ複数の光を発見した。
「灯台の方に向かって走ってたとき、空に光るものが見えたんだ。星にしては変だなと思って、ブラッドに“あの星、変じゃないか?”って聞いたんだ」とシェーンさん。
ブラッドリーさんもその様子をはっきり覚えていた。「光は三角形を構成しながら点滅し、虹のように色が変化した」と語る。
沿岸から内陸部まで、多数の目撃情報
この光の目撃はジェラルトン周辺だけにでなく、パース天文台には同日、州中西部全体にわたる広い範囲から多数の目撃情報が寄せられている。
天文台の広報担当マット・ウッズ氏は、「目撃報告はラバートン、マウント・マグネット、キューといった内陸の町からも届いており、それが海岸線にまで及んでいる。このような広範囲にわたる目撃はかなり異例です」とABC Perth[https://www.abc.net.au/news/2025-09-24/unexplained-uap-sightings-reported-across-midwest-wa/105803264]に話す。
航空機や軍の活動は確認されず
ウッズ氏はまず航空機を疑い、フライトレーダーをチェックしたものの、付近の空域に飛行中の機体は見当たらなかった。
また、オーストラリア国防省は、該当地域でこの日、軍事訓練や飛行活動は一切行われていなかったと発表している。
では、目撃された光は一体なんだったのか。
大気の屈折である可能性を港湾局が指摘
ミッド・ウェスト港湾局の港湾長ヒースクリフ・ピメント氏は、大気の屈折による現象ではないかと考えている。
寒気の層が暖かい空気の下に閉じ込められることで“ダクト”と呼ばれる状態が発生し、船の灯りや漁船の光が上空に浮かんで見えることがあるんです。それが突然消えたり、漂っているように見えたりすることもあります(ピメント氏)
このような現象は蜃気楼の一種で、レーダーには映らないため、実体が存在していないのに視覚的には「そこにある」ように見えるのが特徴だ。
天文台はこの説に反論
しかし、天文台のウッズ氏はこの説明に納得していない。
ミッドウェスト全域で同時に見えるほどの屈折が起こるのは、かなり大規模な現象になるはずです。理屈としては可能性はありますが、ラバートンのような内陸部でも見えていたという点を考えると、それだけでは説明がつきません。私も何だったのか非常に興味があります(ウッズ氏)
今回のような謎の現象は「未確認飛行物体(UFO)」の新しい呼び名として、近年では「UAP未確認航空現象)」と呼ばれている。
NASAはUAPを「空や海などで観測された、科学的な方法によって確認されていない物体や現象」と定義しており、軍や民間航空の動きとは無関係で、自然現象とも断定できないケースがこれに該当する。
今回のような一連の目撃情報は、科学的な調査対象としても十分な価値がある。
果たしてそれは、新たな自然現象なのか、それとも未知の技術の痕跡なのか。今後の調査と発表が待たれるところだ。