
中国のネット上では、近頃思わず眉をひそめたくなってしまうような「商品」が取引されているという。
それは、なんと爪切りで切った人間の爪。
この背景には、中国の伝統医学において、爪が「薬」として扱われてきた歴史があるようだ。
切った爪を集めてキロ単位でネットで販売
中国河北省出身の女性が、自分が切った爪を集め、1kgあたり150元(約3,130円)で販売したとして、注目を集めている。
彼女は子供の頃から、爪切りで切った自分の爪を集め続けていて、いつかこれでお金が稼げるかも、と思っていたそうだ。
人間の爪は1日に約0.1mm伸びるという。1か月で約3mmとすると、ネイルのために伸ばしているんじゃない限り、だいたいみんな月に1~2回は爪切りをするんじゃないだろうか。
それを1年分集めても、きっと大した量にはならないはず。この女性がkg単位で販売するほど集めたというのが本当なら、いったい何十年集め続けたんだろう。
爪は伝統的な中国医学で薬として使われていた
そもそも、切った爪なんていったい何にするんだ?と思うかもしれないが、中医薬学、つまり伝統的な中国医学の薬学では、爪も薬のひとつなんだそうだ。
人間の爪は「爪甲」「筋退」などと呼ばれ、時代や書物によっても違うが、止血や解毒、解熱、利尿といった薬効のほか、子供の腹部膨満や扁桃炎にも効くとされているらしい。
もちろん、爪をそのまま使うのではなく、洗浄・殺菌した上で、焼いて灰になったものを粉にして、内服したり塗ったりして用いるのだそうだ。
だがいくら消毒して焼いてあるとはいえ、他人の爪を内服するとなると、現代人のほとんどが拒否反応を起こすのではないだろうか。
とはいえ、実際に爪を薬効成分として処方される例は、現代においても確かにいくつかあるようだ。
2018年には中医薬学由来の特許薬で、のどの炎症を抑える「喉炎丸」という薬に、人の爪が含まれていたとしてニュースになった。
さらに2025年2月には、腸にポリープができた天津の女性が中医の治療を受けたところ、「処方箋に人間の爪を焼いたものが含まれていて驚いた」というニュースが話題になった。
ネットの反応は「無理!」一択
しかしさすがに現代の中国では、「他人の切った爪を薬として服用する」という発想は、受け入れられないとする意見が大半だったようだ。
- 爪なんて汚れでいっぱいじゃないか
- 中医には衝撃的な知識が満載だな
- 爪を食べるくらいならアヒルの糞を食べたほうがマシ!
- 中医の不思議なところは、理屈や論理を語らないとこなんだよね。効けば名薬だし、効かなければ「続けろ」って言われるだけ
- 次からは自分の切った爪を全部とっておくよ。自分のを食べる分には他人に迷惑かけないし
- 俺も中医(中国伝統医学)が「治せない病気はない」っていうのを見てきた。出会った中医はみんな「調整すれば良くなる」って言うけど、結局良くならないときもあるんだよな
- これぞ中医の神秘的なところ。材料は受け入れがたいけど、効果はものすごいかもしれない
- 伝統医学は文化であり、現代医学は科学なんだよ
- プラセボ効果じゃないの?
2023~2024年にかけて、イラクの大学が若い女性を対象に、爪の下にいる細菌を検出する研究[https://www.biosciencejournal.net/archives/2024.v6.i1.A.66/isolation-and-diagnosis-of-bacteria-from-under-long-nails-natural-and-artificial-in-young-females]を行ったことがある。
その結果、18~25歳の110人の女性のうち、86人の爪から何らかの細菌が検出された。一番多かったのが大腸菌で、表皮ブドウ球菌なども見つかったらしい。
いくら手をきれいに洗っていても、爪の隙間まで清潔に保つのはなかなか難しいということなんだろう。
中国で書かれた「本草綱目」や「新修本草」といった本草書(薬学百科全書)には、人間の爪や髪の毛、垢、歯垢、唾液、精液、排泄物など、ありとあらゆるものが薬として掲載されているという。
ちなみにこの女性の爪が実際に売れたのかどうかは、現地の報道でも確認されていないみたいだ。
References: People in China Are Selling Their Fingernail Clippings Online[https://www.odditycentral.com/news/people-in-china-are-selling-their-fingernail-clippings-online.html]