ウクライナ最前線で兵士を癒した野良猫、命がけの作戦で後方の基地へと移送
Хартія – 13 Бригада Національної гвардії України

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 ウクライナ東部の最前線の戦場に、一匹の痩せこけた茶トラの野良猫が現れた。兵士たちはその鳴き声に気づき、仲間として迎え入れた。

 「プラポール(旗)」と名付けられたそのオス猫は、砲弾の飛び交う塹壕(ざんごう)で、兵士たちの心を癒やし、そばに寄り添いながら数か月を共に過ごした。

 だが、そこは常に命の危険にさらされる場所だ。兵士たちは、プラポールの安全を考え、彼を中隊の基地へ避難させることを決意する。

 兵士たちは一匹の猫の命を守るため、無人地上車両を使い、特別な作戦を命がけで遂行した。そしてその作戦は成功し、プラポールはよりましな環境に移された。

戦場に現れた小さな命は彼らの希望となった

 2025年の春、ウクライナ、ハルキウ北部の最前線にいた第13特務旅団の兵士たちの塹壕の近くで、か細い鳴き声が聞こえた。

 様子を見に行った兵士たちは、痩せこけた若い茶トラの野良猫を発見する。すぐに保護し、「プラポール(旗の意味)」と名付け、餌を与え世話を始めた。

 それから数か月、プラポールは最も危険な戦場で兵士たちと生活を共にし、砲火の飛び交う塹壕で緊張と疲労に晒される彼らの心を癒す存在となった。

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これ以上は危険と判断、前線からの脱出ミッション

 だがこれ以上ここにいては危険だ。いつ命を失ってもおかしくない場所だからだ。そこで兵士たちはプラポールに少しでも穏やかな生活を与えるため、最前線から避難させることを決断した。

 しかし戦地では、動物一匹を安全に運ぶことも簡単ではない。

 彼らは無人地上車両(UGV)を使う作戦を行った。

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 UGVは通常、物資の補給や負傷兵の救出に使われているが、今回は物資を前線に届けにきたUGVに、キャリーケースに入れたプラポールを乗せて、基地まで送り届けることにした。

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 ケースには毛布が敷かれ、扉は結束バンドでしっかり固定された。

 移動にはおよそ3時間を要したが、プラポールは無傷で目的の基地へと到着した。

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 迎えに出た兵士はこう語った。

「彼は正式な兵士としての称号を与えてもいいくらいだ。何か月も最前線で危険にさらされながらも兵士たちの心を支えてきた。彼は称賛されるべき存在なんだ」

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塹壕から光の中へ 新しい日々のはじまり

 到着したプラポールには、新しい住処と温かなケアが待っていた。兵士たちは毛布でくるみ、ごはんと水を与え、少しずつ落ち着かせていった。

 「最初はショック状態だったけど、今では光のある場所を見て、不安そうに周囲を確認し始めている。もう塹壕じゃない。これからはここが、彼の家になるんだ」

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 その後、プラポールは基地で暮らすことになったようだ。

 兵士たちは動画でこうも語っている。

 「豚肉を焼いて持ってきた。キャットフードじゃなくて、本物の肉だよ」。まさに“戦友”として、敬意と愛情を込めて迎えられている様子が印象的だ。

 プラポールを救った第13特務旅団(ウクライナ国家親衛隊)は、ロシアによる全面侵攻が始まった2022年3月19日に、ハルキウ州で「ハルティヤ領土防衛隊」として設立された。

 母体はウクライナ領土防衛隊第127独立旅団であり、戦争の初期に地域防衛を担うべく組織された。

 戦火のなかで、兵士たちは一匹の猫に出会い、その命を救った。そして猫は、兵士たちの傷ついた心を救ってくれた。

 人と人が争う過酷な戦場にあっても、人と動物はいたわり合い、支え合うことができる。そこに言葉はいらない。相手を思う気持ちがあれば、人と人も分かり合えるはずだと信じたい。

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References: Defence Blog[https://defence-blog.com/ukrainian-troops-use-ground-robot-to-rescue-cat-from-frontline/]

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