iPhoneを「探す」機能が解決の糸口に。大量の盗難スマホを中国に送っていた窃盗団逮捕

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 2024年12月24日、クリスマスイブでにぎわうイギリス・ロンドンの街角で、ある女性のiPhoneが盗まれるという事件があった。

 女性が「iPhoneを探す」機能で端末の位置を特定したところ、大規模な窃盗組織の摘発につながった。

 盗難に遭ったスマホは、その多くが中国に送られて違法に販売されていることが判明したのだ。

1台の盗難スマホの発見が大規模窃盗団の摘発につながる

 ロンドン警視庁(MPS)で今回の摘発作戦を担当したマーク・ギャビン警部は、事件について次のように説明する。

それはクリスマス・イブのことでした。盗まれたiPhoneを被害者が「探す」機能で探したところ、ヒースロー空港近くの倉庫にたどり着いたのです。

現場の警備員は喜んで協力してくれました。そのiPhoneは他の894台もの携帯電話といっしょに、荷物の中に入っていたのです

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 この荷物の鑑識結果を行った結果、警察は窃盗犯の身元を特定。私服警官が窃盗犯の車を囲み、逮捕することに成功した。

 この時逮捕された窃盗犯は、アフガニスタン国籍の30代の男2人で、車からは10台以上の携帯電話が押収された。

 中にはアルミホイルで包まれたものもあったが、アルミホイルは「iPhoneを探す」機能を妨害する手法として知られている。

 さらに、逮捕された容疑者に関連する物件約28軒を家宅捜索した結果、女性1人を含む15人が逮捕される事態に。

 その後の2週間にわたる捜査で、最終的に今回の事件を含め、46人の携帯電話窃盗犯の逮捕に至ったそうだ。

 その中にはiPhoneを輸送するトラックを襲撃したグループや、マネーロンダリングにかかわった容疑者、実際に空港で盗難品を所持していた容疑者も含まれているという。

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 MPSの携帯電話窃盗対策責任者であるアンドリュー・フェザーストーン警視は、今回の作戦についてこう語っている。

これはイギリスにおける携帯電話の窃盗と強盗に対する最大規模の取り締まりであり、MPSがこれまでに実施したこの種の捜査の中で最も異例な一連の捜査であります。

私たちは街頭レベルの窃盗犯から、毎年数万台の盗難機器を輸出する国際的な組織犯罪グループに至るまで、あらゆるレベルの犯罪ネットワークを壊滅させてきました。

ロンドン市民は安全を感じる権利があり、これはロンドン警視庁が市民を守り、犯罪を撲滅するという強い決意の明確な表れです

ロンドンで盗まれたスマホが中国で売られている理由

 MPSによると、イギリス全体の携帯盗難の4分の3はロンドンで発生しており、この4年間で件数は2020年の2万8,000件超から2024年には8万件超と、約3倍に増加している。

 MPSは、ロンドンで盗まれたスマートフォンやその他の機器の約40%が、今回の女性の携帯電話を盗んだのと同じ窃盗団によって、海外へ出荷されていたと報告している。

このグループは、海外での収益性の高さから、特にApple製品を標的にしていました。

私たちは、街頭窃盗犯が端末1台あたり最大300ポンド(約6万円)の報酬を受け取っていたことを突き止めました。

さらに中国では、その端末が1台あたり最大4,000ポンド(約80万円)で販売されていた証拠も発見しました

 ギャビン警部は中国で盗難品のiPhoneが売られている状況について、こう述べている。

 現在、中国政府はいわゆる「グレート・ファイアウォール(中国のインターネット検閲システム)」によって、国外のSNSやWikipediaなどへの接続を遮断している。

 ところが、海外で販売されたSIMフリーのiPhoneなら、検閲をすり抜けて国外のネットワークへ直接接続できるのだそうだ。

 つまりたとえ盗難品だろうと、海外版の端末を手に入れれば、海外のニュースサイトやSNSにアクセスし、Googleのサービスを自由に使えるようになる。

 こうした需要は中国国内に確実に存在する。そのため盗難品のiPhoneが特別な価値を持ち、高額で取引される構図を形作っているのだ。

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ロンドン警視庁が対策に乗り出した結果

 これまでMPSは携帯電話の盗難防止や、盗難端末の回収に十分な対策を講じていないとして、しばしば批判の的となって来た。

 こういった批判を受け、MPSはここ数か月、携帯電話の窃盗犯を取り締まる様子を写した動画などをSNSに投稿し続けている。

 そして取り締まりの成果が表れたのか、今年に入ってロンドンではひったくりなどの強奪事件が13%、窃盗全体も14%減少したと発表している。

 また、携帯電話強奪などの街頭犯罪対策に重点を置くため、ウェストエンド地区(ロンドン中心部の繁華街)のチームに、最大80人の警官を増員する予定だという。

 犯罪者の中には、より儲かるという理由で麻薬取引をやめ、電話ビジネスに移行している者もいると聞いています。

携帯電話を1台盗めば数100ポンドになるとしたら、一歩先を行く犯罪者が、なぜその世界に目を向けるのか理解できるでしょう

 イギリスの犯罪・警察・消防担当閣外大臣サラ・ジョーンズ氏は、携帯電話の盗難が増える背景についてこのように述べた。

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 今回の一連の摘発作戦は、イギリスの携帯電話窃盗問題の深刻化を浮き彫りにし、犯罪の国際的な側面や警察のリソース不足など複雑な課題を示した。

 この問題を解決するために、今後はより多面的なアプローチと継続的な取り組みが求められることになるだろう。

 ロンドン市長のサディク・カーン氏は、盗難に遭った携帯電話の再利用が容易であることを批判し、次のように語っている。

私は携帯電話業界に対し、盗難された機器を使用不能にすることで、この犯罪を排除する取り組みを一層強化し、迅速に行うよう引き続き要請していきます。

この取引を止め、誰にとってもより安全なロンドンを築くために、世界的に協調して行動する必要があるのです

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追記(2025/10/23)誤字を訂正して再送します。

References: Met dismantles suspected smuggling gang in UK’s largest phone theft crackdown[https://news.met.police.uk/news/met-dismantles-suspected-smuggling-gang-in-uks-largest-phone-theft-crackdown-501804]

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