最強パスポートランキング2025でアメリカがトップ10から転落
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 世界で最も強力なパスポートのランキング 2025年版 が発表され、アメリカのパスポートが12位に後退した。

 アメリカは、ランキングが開始されてから20年の歴史で初めてトップ10から外れた。

これは、国際協調性の無さや厳しい入国政策が影響しているようで、かつての輝きを失いつつあるという。

 こうした中、米国籍だけでは不十分とみる人が増え、二重国籍を求める動きが広がっているという。

 では日本の順位は?最新のパスポートランキングを見てみよう。

日本は3位!世界最強パスポートランキング最新 トップ10

 2025年10月16日公開されたヘンリー・パスポート・インデックス最新版[https://www.henleyglobal.com/passport-index/ranking]は、事前のビザなしで渡航できる目的地の数で全てのパスポートをランク付けしている。

 国際航空運送協会(IATA)のデータに基づき、199のパスポートと227の渡航先を対象にしたランキングでは、193の目的地に渡航可能なシンガポールが世界で最も強力なパスポートの1位となった。

 次いで2位が韓国、3位が日本に。この結果は、シンガポール同様、外交的な信頼度と前向きなビザ免除協定の拡大が背景にあると考えられる。

 その後はドイツ、イタリア、ルクセンブルク、スペイン、スイス同数4位に、オーストリア、ベルギー、デンマーク、フィンランド、フランス、アイルランド、オランダが同数5位を占めている。

世界最強パスポートランキング最新 上位トップ10
()内はビザなし渡航可能国数

1位:シンガポール(193)
2位:韓国(190)
3位:日本(189)
4位:ドイツ、イタリア、ルクセンブルク、スペイン、スイス(188)
5位:オーストリア、ベルギー、デンマーク、フィンランド、フランス、アイルランド、オランダ(187)
6位:ギリシャ、ハンガリー、ニュージーランド、ノルウェー、ポルトガル、スウェーデン(186)
7位:オーストラリア、チェコ、マルタ、ポーランド (185)
8位:クロアチア、エストニア、スロバキア、スロベニア、UAE(アラブ首長国連邦)、イギリス (184)
9位:カナダ (183)
10位:ラトビア、リヒテンシュタイン (182)

アメリカは20年ぶりにトップ10圏外に

 今回衝撃だったのは、トップ10入り常連だったアメリカがないことだ。なんと今回アメリカは、マレーシアと並び12位(180) と、過去20年のランキング史上初めてトップ10圏外となった。

 実はアメリカは、2014年にイギリスとともにトップの座を獲得したが、2016年に4位になるなど、以降順位がじわじわ下がり続けている。

 なお同率を含めアメリカより上位の国(1位から11位)は 36か国もあり、そこからもアメリカの後退ぶりがうかがえる。

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国際的な”人の移動のしやすさ”と”影響力”の根本的な変化

 ヘンリー・パスポート・インデックスは、イギリス・ロンドンを拠点に市民権・居住権コンサルティング会社 ヘンリー・アンド・パートナーズ が作成・発表するランキングだ。

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 同社は、国際航空運送協会(IATA)のデータにもとづき、20年にわたりこうしたランキングをまとめているが、同社会長で、このインデックスの作成者でもあるクリスチャン・H・ケリン氏は今回のプレスリリースでこう述べた。

過去10年間のパスポートの力の低下は、単なるランキングの入れ替え以上の意味を持ち、国際的な”人の移動のしやすさ”と”影響力”の根本的な変化を示している。

開放性や協調を受け入れる国は躍進しており、過去の特権に頼っている国は取り残されている

要因は「協調」と「開放」の不足

 ヘンリー・アンド・パートナーズが指摘する順位低下の要因は「開放」や「協調」を受け入れる姿勢が足らないことだ。

 今回のアメリカの順位でいえば、同国のパスポート保持者は180か国に渡航できるが、同国がビザ免除を認める国は 40か国程度 にとどまっている。

 つまり「自分の国民が多くの国に行けるのに、相手国の人をあまり受け入れていない」というバランスの悪さに加え、「入国条件が厳しく、他国に比べて門戸が狭い」と見られることが、ランキング停滞・低下の要因というわけだ。

 さらに、ブラジルが2025年4月にアメリカ・カナダ・オーストラリア向けのビザ免除を撤廃したこと、また中国やベトナムがヨーロッパを中心に免除を拡大する一方で、アメリカを対象外としたことも、相対的な低下に拍車をかけている。

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その他の動向・ランキング最下位の国々

 なお主要な他国の動向としては、ヘンリー・アンド・パートナーズの本拠、イギリスも2015年まで1位を獲得していたが、現在は8位に後退。

 中国は2015に年94位だったが、2025年に64位と大幅に上昇。ビザなし渡航可能国数もこの間に大きく増加した。

 またUAE(アラブ首長国連邦)は、過去約10年で順位を大きく伸ばし、ついにトップ10入り。観光客誘致に力を入れるなど、多角的で外交的な積極姿勢が功を奏しているもよう。

  一方、ランキングワースト3位はこちら。これらの国々は政情不安や外交関係の制約により、渡航自由度そのものが極めて限定的となっている。

世界最強パスポートランキング最新 ワースト3
()内は渡航可能国数

106位:アフガニスタン(24か国)
105位:シリア(26か国)
104位:イラク(29か国)

 ケリン氏が述べたように、アメリカのみならず、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドなど、自国民に広範な渡航の自由を与えながら、他国民に対してビザなし入国を制限する国では、近年、パスポートの強さが停滞または低下しているという。

リスク分散目的で多数のアメリカ人が追加国籍を取得

 さらにヘンリー・アンド・パートナーズは、アメリカのパスポートの急落から、「米国籍の象徴的な価値の揺らぎ」がうかがえると示唆。

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 つまりこうした下落が、アメリカ人の「二重国籍取得への欲求」をすでに煽っており、米国籍だけでは、もはやかつてのような”超大国”としての地位が保てなくなる可能性をほのめかしている。

 かつてアメリカ国籍といえば、世界中のどこへでも自由に行けるフリーパスといった象徴的な価値があった。

 だが、順位が下がってゆくことで「この国籍だけじゃ足らないかも…」と心配する人が増え、二重国籍でリスクを分散しようとする動きが出ているようだ。

 こうした傾向について、テンプル大学ロースクールのピーター・J・スパイロ教授は「今後数年間で、より多くのアメリカ人ができる限りの方法で追加国籍を取得するだろう」と述べている。

 この先アメリカでは、落ち続けるパスポートの順位を見ては、移動の自由や安全を確保するため多重国籍を持つ人が増えてくのかな。

 旅行の便利さだけでなく、アメリカらしさのブランド力まで失われてゆくようなランキング結果に多くの人が衝撃を受けてるようだ。

References: Nypost[https://nypost.com/2025/10/15/lifestyle/us-drops-out-of-worlds-top-10-most-powerful-passports/] / Cnn.co.jp[https://www.theguardian.com/us-news/2025/oct/15/most-powerful-passports-world-list%20https://www.cnn.co.jp/travel/35239220.html] / Henleyglobal[https://www.henleyglobal.com/passport-index/ranking]

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