絶滅危惧種のガラパゴスアホウドリがアメリカで初めて目撃される
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 2025年10月、アメリカ・カリフォルニア州で海鳥観察ツアーに参加していたグループが、見慣れない海鳥を発見した。

 その鳥は南米の太平洋岸でしか見られないはずの、「ガラパゴスアホウドリ」であることが確認された。

 同種が中米以北、アメリカ国内で目撃されたのは初めてで、参加者のバードウォッチャーたちの間に驚きが広がった。

 生息地から遠く離れた場所に、なぜこの鳥がやってきたのかは不明である。単なる迷い鳥なのか、あるいは生息地を襲う環境の変化が影響しているのだろうか。

バードウォッチングのツアー中に見慣れない鳥が…

 このツアーは、鳥類の観察と保全を軸に活動する非営利団体、「レッドウッド地域鳥類学会(Redwood Region Ornithological Society[https://www.rros.org/])が主催したものだ。

 2025年10月5日、カリフォルニア州のソノマ郡・マリン郡の沖合で行われた海鳥観察ツアーの参加者たちは、見たことのない鳥が空を舞っているのに気づいた。

 参加者のグレン・テプケさんは、最初に鳥に気づいた時の様子を次のように語っている。

その鳥は最初、ボートの後方遠くに姿を見せました。すぐに目に入ったのは、大きく突き出た白い頭でした。鳥が近づくにつれて、背中と翼の裏側が黒いこと、そして黄色いクチバシがはっきり見えたんです

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 鳥類識別のスペシャリストとして、地域の観察会などでも活動しているリサ・ハグさんもこのツアーに参加しており、この鳥がガラパゴスアホウドリであると判断。

 のちに映像をコミュニティでの照合を経て、コスタリカ以北での初記録であることが確認された。

遠くからでも、何か特別な鳥だとわかりました。あんなに大きな鳥はこの辺りでは見られませんから。船の上ではみんなが歓声を上げて、跳びはねて喜んでいました。



もう今ごろは何マイルも離れたところにいるかもしれません。彼らは短時間で驚くほどの距離を移動できますからね。

もしこの海域で餌が見つかれば留まるかもしれませんが、別の場所を探すと決めればすぐに行ってしまうでしょう。再び見つけられたら、とても幸運なことだと思います

 ツアーの主催者であり、RROSの長年のメンバーでもあるピーター・コラサンティさんも、この「発見」に興奮を隠せない。

もう、船上は大混乱でした。この鳥は絶滅危惧種で、とても魅力的で大きく、美しいのですが、アメリカで観察されたことは一度もなかったんです。

ガラパゴスではこの種は船に惹かれて近づくことが多く、とくに漁船の後をついて回る。性質としてはスカベンジャー(死肉食)なんです

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アメリカ国内で初めての目撃例

 ガラパゴスアホウドリは、体長約80~90cm、翼開長は約220~250cmの中型のアホウドリである。

 主にガラパゴス諸島のエスパニョーラ島で繁殖することが知られており、繁殖期以外はコロンビアやエクアドル、ペルー、チリでも見られる。

 だがが、これまでアメリカ国内で目撃されたという報告はなく、最北の記録はコスタリカで観察されたものだったという。

珍しい鳥を追い求めるバードウォッチャーとして、そして生物多様性の喪失を懸念する保全活動家として、この発見は本当に嬉しいものでした。

鳥が(ガラパゴスアホウドリであると)同定された瞬間、船上の興奮は最高潮に達し、悲鳴と歓声が次々に上がっていました。

その後は、夢がかなったような幸福な笑顔でいっぱいでした

 テプケさんはその瞬間をこう振り返る。また、参加者の1人のマイク・カロッツァさんも、初めてガラパゴスアホウドリを目にした時の興奮が忘れられないようだ。

船酔いと闘っていた時に、水平線上にその鳥を最初に見つけたんです。こんなにも信じられないほど希少で巨大な鳥を目にできたのは、胸が躍ると同時に畏敬の念を覚える体験でした。

これまで世界中の珍しい生き物を見てきた自然愛好家たちが、まるで「鳥のスーパーボウル」で優勝したみたいに大騒ぎする光景を目の当たりにできたのも、同じくらい最高の経験でした。

海の真ん中で見知らぬ人と抱き合うなんて、滅多にありませんからね

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 実はこの日のツアーは参加者が集まらず、実現が直前まで危ぶまれていたものだったんだとか。

 結局少人数のツアーにすることで無事に開催され、この素晴らしい発見が世界中に共有されることになったのだ。

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 今回確認されたガラパゴスアホウドリが、いったいどんな理由で、生息地から遠く離れたカリフォルニア沖にやって来たのかはわからない。

 だが若いアホウドリが、故郷から遠く離れた場所で「迷い鳥」として見つかることは、珍しいことではないそうだ。

 生息地では気候変動や水質汚染などの環境の変化や、違法な延縄漁や密猟のために、ガラパゴスアホウドリの個体数は激減しており、レッドリストでは「絶滅寸前」に分類されている。

 もしかすると故郷の環境の悪化が、この鳥をしてカリフォルニアまで長旅をさせる原因になったのかもしれない。

 約5,000km離れた海から飛来したとみられるこの一羽は、東太平洋におけるガラパゴスアホウドリの行動域を考える上で、貴重な観察例となったようだ。

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References: Bird-Watchers 'Cheer' When They Spot Critically Endangered Bird 3,000 Miles From Home[https://www.thedodo.com/daily-dodo/bird-watchers-cheer-when-they-spot-critically-endangered-bird-3000-miles-from-home]

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