野生のクマが動物園に侵入、仲間になりたそうに飼育されているクマたちを見つめる
動物園に侵入した野生のアメリカグマ / Image credit:<a href="https://www.facebook.com/SequoiaParkZoo?__tn__=-UC*F" target="_blank">Sequoia Park Zoo</a>

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 動物園から逃げ出す動物の話はよく聞くが、野生動物がわざわざ動物園に“入ってくる”という話はめったにない。そんな珍しい出来事が、アメリカ・カリフォルニア州の動物園で起きた。

 園の周辺に生息している野生のアメリカグマ(ブラックベア)が施設内に現れ、まるで仲間になりたそうに、同種の3頭のクマたちが飼育されている展示ブースの囲いの中を覗き込んだのだ。

 動物園の報告によると、このクマはとても礼儀正しいクマだったという。暴れることもなく、少しだけフェンス越しから飼育クマたちとの交流を楽しんだ後、森へと帰っていったという。

動物園に野生のクマが突如侵入、目指した先はクマの飼育ブース

 2025年10月18日、カリフォルニア州北部にあるセコイアパーク動物園は公式Facebookで、園内に野生のアメリカグマが侵入したことを写真付きで報告した。

 このアメリカグマは、園内を静かに歩き、騒ぎ立てることもなく、まっすぐにアメリカグマの展示ブースに向かうと、そこにいた3頭、トゥリー、イシュング、クナブリルをフェンス越しからじっと見つめていたという。

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 クマは、ライオンやオオカミなど他の動物のブースにはいかず、しばらく自分と同じ種の仲間たちのブースの近くにいたという。フェンス越しから飼育クマたちと交流しているところも観察されたそうだ。

 動物園の公式Facebookでは、当時の様子が次のように報告されている。

このクマは、とても「礼儀正しい訪問者」でした。

スタッフが点検中に発見したとき、クマは木製の遊歩道(ボードウォーク)から移動することなく、柵を乗り越えようとする様子もありませんでした。

展示ブースのフェンス越しに飼育クマたちをじっと観察したり、建物の周辺に設置された小屋の中にあるクマ用の知育おもちゃを少しいじった程度でした

 その後、職員により安全に誘導され、施設裏手のセコイアパークの森へと戻っていった。 フェンスや設備に破損は一切なく、動物たちも全員無事だ。

 ただし侵入経路も不明なままだという。

 

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クマの好奇心?仲間になりたかった?

 通常、野生動物が人間の施設に現れる場合、目的は餌や水であることが多い。

 しかしこのクロクマは、園内で最も人目に付く場所にいたにもかかわらず、物陰に隠れることも、何かを荒らしたり、暴れることもなかった。

 一直線にクマのブースに向かい、そこでただ静かに立ち止まり、飼育されている仲間たちを観察し、フェンス越しからの交流を試みた。

 野生動物の行動は、人間のように感情を読み取れるわけではない。しかし、他の動物には見向きもせず、自分と同じ種のクマたちだけを見つめていたという点に、この訪問の意味を感じる人も少なくない。

 好奇心旺盛な野生のクロクマは、もしかしたら園のクマたちと仲間になりたかったのかもしれない。

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野生動物とは距離を置くべき、動物園が注意を呼びかけ

 今回の出来事は、珍しく「礼儀正しい訪問者」として話題を呼んだが、セコイアパーク動物園では、来園者や地域住民に向けて野生動物との向き合い方について注意を呼びかけている。

このクマはたまたま穏やかでしたが、あくまでも野生動物です。野生動物は本能によって予測不能な行動をとることがあり、常に注意が必要です。

クマを見かけた場合は近づかず、十分な距離を保ってください

 実際、カリフォルニア州ユーレカ周辺では野生のアメリカグマが姿を見せることも多く、1か月ほど前にも近隣で目撃例が報告されていた。

 このような平和な出会いがある一方で、クマは状況次第で防衛本能から攻撃に転じる可能性もある。

 野生動物と人間の距離感を正しく理解し、必要以上に干渉しないことが、安全な共存につながると動物園は強調している。

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日本で相次ぐクマ被害 

 日本では現在、クマ(ヒグマ・ツキノワグマ)による被害が相次いでいる。 

 環境省[https://www.env.go.jp/nature/choju/effort/effort12/effort12.html]によると、2025年9月末時点でクマによる人身被害は108人、死者は9人。すでに過去最多を更新しており、被害の多くは本州に生息するツキノワグマによるものとされる。

 特に問題なのは、住宅地や街中での出没が増えていることだ。全体の約66%が人里での被害だった。

 人を襲うクマが増えた理由は、複数の要因が重なっていると専門家は指摘する。

・餌となるドングリやブナの実の不作
 気候変動による猛暑や台風などの影響により、山の実りが少なくなっている。冬眠前に大量の栄養を必要とするクマが、餌を求めて人里に下りてくるケースが増加している。

・クマの個体数の増加
 1990年代末には全国で約8,000頭とされていたツキノワグマの推定個体数は、現在では20,000~50,000頭にまで増えている可能性[https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/2247867]がある

・過疎化と高齢化の進行
 山間部では人の生活圏が縮小し、かつてクマを追い払っていた人の存在が減っている。そのため、クマが人の気配を感じにくくなり、警戒心を失いつつある。

・耕作放棄地に残された果樹や農作物の存在
 人里近くに放置された果樹や畑がクマにとって格好の餌場となっており、「人の暮らす場所には食べ物がある」と学習したクマが、翌年以降も出没を繰り返す傾向がある。

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ツキノワグマとアメリカグマの違いは?

 今回セコイアパーク動物園に現れたのはアメリカグマ(Ursus americanus)で、北米に広く分布するクマの一種だ。日本のツキノワグマと同じく雑食性で、体格もおおむね近い(体重は100~180kg前後)とされている。

 だが、性格や行動傾向には違いがある。

  アメリカグマは比較的おとなしく、臆病な性質を持つ個体が多い。

人と遭遇すると、自ら距離をとって逃げる行動をとることも多い。

 北米でもクマが市街地や住宅地に出没する例は非常に多いが、人に危害を加えるケースは少なく、よっぽどのことがないかぎり、立ち去っていくような行動が目立つ。

 一方、日本のツキノワグマは、かつては人を避ける臆病な動物とされていたが、近年では若い個体を中心に人への警戒心が薄れているとの指摘もある。

 特に餌を求めて人里に頻繁に現れる個体では、過去に人と遭遇しても危険がなかった経験から、人を恐れなくなっている場合がある。

 その結果、ツキノワグマの中には、都市部や住宅街に繰り返し現れる「人間の暮らしに慣れたクマ」も増えており、接近時にパニックを起こして攻撃行動に出る危険性がある。

 体格や食性が似ていても、アメリカグマとツキノワグマでは、人間との関わり方やリスクの度合いに大きな違いがある。

 だがどちらも野生動物であることに変わりはない。常に警戒を怠らないようにしよう。

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References: Facebook[https://www.facebook.com/SequoiaParkZoo/posts/pfbid02EWaVPPELFA8ykeZzsEwyHdzeX6JxGziNAR1UMqxvb1U7Gn9ZoboHYJEi68JjxGkSl]

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