地球の北半球と南半球で太陽光反射率のバランスが崩壊、何が起きているのか?
image credit:unsplash <a href="https://unsplash.com/ja/@orbisterrae?utm_source=unsplash&amp;utm_medium=referral&amp;utm_content=creditCopyText" target="_blank">Ga&euml;l Gaborel &ndash; OrbisTerrae</a>

地球の北半球と南半球で太陽光反射率のバランスが崩壊、何が起き...の画像はこちら >>

 奇妙なことに地球は長いあいだ、北半球と南半球でほぼ同じ量の太陽光を宇宙へ反射していた。

 なぜこれがおかしいかというと、北半球には陸地や都市、工場、そして大気汚染を生むエアロゾル(微粒子)が多く、太陽光を強く反射する。

それに対して南半球は広大な海に覆われ、海面は暗く光を吸収しやすい。本来なら北半球のほうが反射が多いはずなのに、長年どちらもほとんど同じだったのだ。

 しかしNASA(アメリカ航空宇宙局)の最新観測によって、この均衡が崩れ始めていることが明らかになった。

 地球が宇宙へ反射する太陽光のバランスが変われば、気候や天候の仕組みにも影響が及ぶ。今、地球に何が起きているのだろうか。

地球が保ってきた奇妙な均衡、その正体

 科学者たちは以前から、地球の両半球がこれほど均等に太陽光を反射していることに強い関心を寄せていた。

 北半球と南半球は地形も環境もまったく違う。北半球は陸地が多く、人間の活動が集中している。一方の南半球はほとんどが海で覆われ、自然のままの状態が多く残る。普通に考えれば、反射率が同じになるはずがない。

 それでも長年、ほぼ同じ反射率を保っていたのは、気候システムの中で「自動調整」が起きていた可能性がある。

 たとえば、北半球で工業活動が増えて大気中のエアロゾル(微粒子)が増えると、それが太陽光を反射し気温を下げ、雪や氷が増えることで反射率を保つという循環だ。

 また、南半球の広い海では、暗い海面を覆うように雲が発生し、太陽光を跳ね返していたとも考えられる。

 こうした複雑なエネルギーのやり取りが、偶然のように見える均衡を保っていたのだろう。

 だが、その見えないバランスが今、少しずつ崩れ始めている。

[画像を見る]

速いペースで暗くなる、NASAが捉えた北半球の変化

 この変化を明らかにしたのが、NASAラングレー研究センターの気候科学者ノーマン・ローブ博士率いる研究チームである。

 研究チームは、NASAの衛星ミッション「雲と地球放射エネルギーシステム(CERES)」による2001年から2024年までの24年間の観測データを分析した。

 CERESは、地球が吸収・反射する太陽光の“エネルギー量”と、宇宙へ放出される赤外線(長波放射)を測定している。

 その結果、北半球が南半球よりも速いペースで暗くなり、より多くの太陽光を吸収していることが判明した。北半球が熱をため込みやすくなっているということだ。

 この差は10年ごとに1平方メートルあたり約0.34ワットとわずかだが、地球全体で考えると莫大なエネルギー量になる。

 この研究には関わっていないが、メリーランド大学の気候科学者ジャンチン・リー博士は「この違いは小さく見えるかもしれませんが、地球全体では非常に大きな意味を持ちます」と語る。

 こうしたエネルギーの偏りは、今後の気候パターンや降水量、風の流れにまで影響を及ぼす可能性がある。

[画像を見る]

崩れゆくバランスの3つの要因

 研究チームは、部分放射摂動(Partial Radiative Perturbation:PRP)という解析手法を用いた。

 これは、雲やエアロゾル、水蒸気、地表の明るさなど、太陽光の反射や吸収に関わる要素を一つずつ変化させて計算し、それぞれがどの程度影響しているかを割り出す方法である

 その結果、北半球の暗化を引き起こしている主な原因は「雪氷の融解」「大気汚染の減少」「水蒸気の増加」であることがわかった。

 ローブ博士は「北半球では雪や氷が溶け、下の陸や海が露出して太陽光をより吸収するようになっています。

 さらに中国やアメリカ、ヨーロッパなどで汚染が減ったことで、太陽光を反射するエアロゾルが少なくなりました。

南半球はその逆の傾向を示しています」と説明する。

 また、気候変動(地球温暖化)が進む北半球では大気中の水蒸気が増えており、水蒸気は太陽光を反射せず吸収する性質を持つ。これも北半球が熱をため込みやすくなる要因の一つだ。

[画像を見る]

雲はなぜ変わらないのか

 興味深いのは、過去20年間で雲の量に大きな変化が見られなかった点だ。

 ローブ博士は「もし地球の気候システムが自然に均衡を保つ仕組みを持つなら、北半球では雲が増えて太陽光を反射し、バランスを取るはずです。しかし実際にはそうなっていません」と話す。

 リー博士も「エアロゾルと雲の相互作用を理解するのは今も難しい課題です。雲はエネルギーバランスを調整する最も重要な要素です」と指摘する。

 つまり、地球の反射バランスを支えてきた“雲の働き”が、今後の気候変化を左右する鍵になる可能性がある。

変わりゆく地球

 ノーマン・ローブ博士の研究は、地球の両半球に存在していた微妙なエネルギーバランスが確実に崩れつつあることを示した。

 「この非対称性は実際に存在し、無視できない現象です」とリー博士は語る。

 ローブ博士は「近く登場する新しい気候モデルを使って、この問題を再検証する予定です」と述べている。

 長年、自ら釣り合いを取るかのように太陽光を反射してきた地球。

その均衡が崩れるということは、地球が吸収する熱の量が変わるということだ。

 わずかな差の積み重ねが、気候や天候、そして私たちの暮らす環境にまで影響を及ぼしていくかもしれない。

 私たちの星は、これからどんな姿に変わっていくのだろうか。

この研究成果は『Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America[https://www.pnas.org/doi/10.1073/pnas.2511595122]』誌(2025年8月7日付)に掲載された。

追記(2025/11/02)
反射量を反射率に統一して訂正し再送します。

References: PNAS[https://www.pnas.org/doi/10.1073/pnas.2511595122] / Livescience[https://www.livescience.com/planet-earth/weird-symmetry-between-earths-northern-and-southern-hemispheres-appears-to-be-breaking]

編集部おすすめ