生態学者も大興奮!30年ぶりのレアな記録を初公開。オーストラリアの一部地域からすでに絶滅と思われていたアシナガネズミカンガルー発見のうれしいニュースが舞い込んだ。
公開されたのは夜に移動するアシナガネズミカンガルー。ニューサウスウェールズ州の国立公園のトレイルカメラが偶然とらえたという。
2025年7月にも絶滅危惧種のフクロモモンガダマシが発見され、朗報が続く現地だが、専門家にとって ”森林の生態系エンジニア” であるアシナガネズミカンガルーの記録は特に重要で、環境大臣も「希望の光」と述べている。
ウサギサイズで足長のアシナガネズミカンガルー
アシナガネズミカンガルーは、オーストラリア有袋類 双前歯目 ネズミカンガルー科 ネズミカンガルー属に分類される。
ちなみにオーストラリア有袋類 双前歯目の仲間にはおなじみのカンガルーやウォンバット、コアラがいる。
アシナガネズミカンガルーの特長はその名の通り、頭部よりも長い足。ニューサウスウェールズ州政府環境遺産局によると、大きさは一般的なウサギぐらいだそう。
体長40センチ前後、体重1.6から2キロほど。長い鼻とほとんど毛のない尻尾をもつ。夜行性で食性は雑食だが主に菌類や植物を好む。
標高100 から 1,200メートル以上の高山帯に生息し、昼は下生えや倒木の中などで過ごすそう。
かつては雨量の多い湿った森林で繁栄していた彼らだが、捕食者の増加、木材の伐採、生息地の分断などで長年にわたり数が減っていった。
専門家も大興奮!約30年ぶりの貴重な記録
厳密には、ニューサウスウェールズ州南東部、ビクトリア州東部の固有種であるアシナガネズミカンガルーだが、1988年にビクトリア州で絶滅危惧種となり、ニューサウスウェールズ州でも1995年に絶滅危惧種となった。
ニューサウスウェールズ州では1990年より目撃例がないことから、すでに絶滅したと思われてたが、同州コジオスコ国立公園の野生動物モニタリング用トレイルカメラによって、希少な個体が動いているきわめて珍しい記録がとらえられた。
そこには暗闇もへっちゃらで跳ねるように移動するアシナガネズミカンガルーが。一瞬立ち止まってまた走るなど慎重な様子もうかがえる。
2025年10月16日ニューサウスウェールズ州国立公園野生生物局(NPWS)がFacebookに公開したこの動画[https://www.facebook.com/NSWNationalParks/videos/3332181096944942/]を見た専門家たちは大興奮。
まさかこの州で最も希少な哺乳類の1種でありながら、幻と化したアシナガネズミカンガルーが動く姿を再び目にするとは夢にも思わなかったのだ。
ユーカリの生育を助ける”森林の生態系エンジニア”
実はこの種の喪失はただ悲しいだけでなく、環境にも大打撃になる。
アシナガネズミカンガルーは、いわば”森林の生態系エンジニア”として重要な役割を果たすからだ。
彼らは主食の菌類を探すため、土を掘り返す。その掘り返しにより土壌の通気性が維持され、森林植物の成長を助けるのだ。
とりわけこの種が「ユーカリや菌類との三者共生関係の一翼を担っている」と語るのは、国立公園野生生物局の上級生態学者、ダグ・ミルズ氏だ。同氏もこの発見に「とても興奮している」そう。
彼らの食性は主に地下菌類、つまりトリュフ(地下に子実体を作る菌類)です。彼らはそれを食べる時に胞子を周囲に撒き散らし、胞子を拡散できない菌類の拡散を助けています。
実は、それらの菌類の胞子が、(オーストラリア原産のフトモモ科ユーカリ属の樹木)ユーカリの栄養吸収を助けてくれるのです (ダグ・ミルズ氏)
健全な森林にアシナガネズミカンガルーがいれば、菌類が増え、おまけにユーカリがより良く育つ、というわけだ。
定着した個体群かどうかの見極めも
なお今回の目撃場所からわずか50キロメートル離れた州立森林公園でも、アシナガネズミカンガルー個体群が確認されている。
ただミルズ氏は、その群れの食性には菌類がさほど含まれていないため、ユーカリへの影響は小さいという。だがそこに別の中型有袋類が生息していれば、「重要な追加要素」になるりうるという。
まず、今回の新記録が何を意味するのか。遠くから来た個体なのか、もとからいた個体群の一部なのか。その答えを得るにはまだ少し時間がかかりますが、私たちはそれを解こうとしています
アシナガネズミカンガルーの正確な数は不明だ。個体数は推定約1万匹だが、その5倍の可能性もある。だが国際自然保護連合(IUCN)は依然として、個体数減少の警告を発している。
長期的な生存にとって希望の光
今回のうれしいニュースに、同州ペニー・シャープ環境大臣は、国立公園内での外来種管理の重要性を「浮き彫りにする」とし、こう述べた。
絶滅が危ぶまれているアシナガネズミカンガルーの重要な発見は、この種の長期的な生存にとって希望の光です
彼女の省庁(気候変動・エネルギー・環境・水源省:DCCEEW)では現在、このアシナガネズミカンガルーと前回発見され話題となった、オポッサムの仲間で絶滅危惧種のフクロモモンガダマシの保護を検討中だ。
それに先立ち、彼らの捕食者となる野生の動物や火災の管理も必要になる。小さな動物は、主にキツネや火事に脅かされているからだ。
地元の誇りになる刺激的なニュース
地元住民のスティーブ・ワン氏も今回の発見を喜んでおり、ニューサウスウェールズ州から発信された「最も刺激的な自然保護ニュース」の一つと評している。
ニューサウスウェールズ州に生息する動植物について、我々がまだ学ぶべきことが多くあることが明らかになってきました。
こうした発見の一部が我々の地元でなされていることに誇りを感じています
地元の人も大喜びのうれしいニュース。絶滅危惧種のこうした発見は、長らく続けられている保全活動のたまものといえそうだ。
ニューサウスウェールズ州でアシナガネズミカンガルーの群れが住み、ユーカリが生い茂る森が増える日もそう遠くないのかもしれない。
References: Thedodo[https://www.thedodo.com/daily-dodo/trail-camera-captures-rare-footage-of-animal-who-hasnt-been-seen-since-the-90s] / Wikipedia[https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%82%B7%E3%83%8A%E3%82%AC%E3%83%8D%E3%82%BA%E3%83%9F%E3%82%AB%E3%83%B3%E3%82%AC%E3%83%AB%E3%83%BC]











