生まれた!クマムシの卵が孵化し、脱皮殻を破って出てくる瞬間をとらえた顕微鏡映像
母親の脱皮殻の中に産み付けられたクマムシの卵 / Image credit:<a href="https://www.youtube.com/@Oneminmicro" target="_blank">Walt (oneminmicro)</a> / Youtube screenshot

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 極寒、真空、放射線などなど、過酷な環境でも生き延びる最強生物として知られるクマムシの、貴重な誕生の瞬間をとらえた顕微鏡映像が話題となっている。

 クマムシには、1,000種を超える仲間が存在し、卵の産み方も種によってことなるが、今回撮影されたのは、母親の脱皮した殻の中に産み付けられた卵が孵化する瞬間だ。

 卵を割って出てきたクマムシの赤ちゃんたちは、さらに硬い脱皮殻から脱出しなければならない。生まれた瞬間からすでに命がけのミッションが始まっていたのだ。

最強生物クマムシのユニークな孵化

 クマムシは、「ウォーターベア(水のクマ)」とも呼ばれる微小な緩歩動物だ。彼らはカンブリア紀以前に登場し、以降何度も大量絶滅を潜り抜け、現代まで生き延びてきた。

 極度の乾燥、高温・低温、真空、高圧、放射線、さらには銃で射出されても、砂に叩きつけられても死なない。

 その秘密は「乾眠(かんみん)」と呼ばれる特殊な休眠状態にある。水分をほぼ失い、代謝を停止させた仮死のような状態になることで、極限環境でも生存できる。この乾眠能力こそが、クマムシを「最強生物」たらしめているのだ。

 さらに2024年の研究では、ナノレベルのマイクロプラスチック粒子でさえ、体内への侵入を防いでいることが確認されている。防御性能においても抜かりはない。

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 そしてクマムシの種類は実に多様だ。世界中に1,000種以上が知られ、南極から高山、深海、都市部のコケの間まで、あらゆる環境に分布している。繁殖の方法も、卵の産み方も種によってさまざまだ。

 繁殖には、オスと交尾して体内で受精する種もいれば、メスだけで卵をつくる単為生殖の種も存在する。

 卵の産み方も、水中にそのまま産むもの、コケや土に産みつけるもの、さらに今回のように、母親が脱皮した皮の内側に卵を産みつけるユニークなタイプもいる。

 今回紹介する映像は、まさにその「脱皮殻の中で卵が孵化する瞬間」を1000倍の顕微鏡でとらえたものだ。

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母親の脱皮殻の中から卵が誕生する瞬間の顕微鏡映像

  オーストラリアを拠点に、科学的で興味深いコンテンツをYouTubeで発信しているウォルトさんは、コケを顕微鏡で観察していた際、偶然にもクマムシが生まれる貴重な瞬間をとらえることに成功した。

 動画には、母親が脱皮したあとの脱皮殻の内側に、たくさんの卵が産みつけられている様子が映し出されている。

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 脱皮殻は見た目には柔らかそうだが、意外にもしっかりとした構造を持ち、乾燥や外敵から卵を守る「天然の保育器」のような役割を果たしている。

 卵はその中で成長を続け、やがて赤ちゃんクマムシの体ができあがると、卵殻を破って孵化する。

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 しかし彼らにはもう一つ、大きな試練が待ち受けている。母親が残した脱皮殻から自力で脱出しなければならないのだ。

 脱皮殻のどこかにある小さな開口部を見つけ出し、そこから自力で這い出さなければならない。

 脱皮殻は卵の殻よりもずっと硬いため、出口を見つけられなければ、中に閉じ込められたまま命を落としてしまう可能性もあるという。

 ナレーションによれば、クマムシたちは必死に動き回りながら出口を探し、約15分の短いあいだに、一匹、また一匹と脱皮殻の外へと這い出していったそうだ。

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 動画には、誕生したばかりのクマムシたちが、小さな足を一生懸命に動かしながら、力強く動いている様子が収められている。

 最強生物として知られるクマムシにも、こんなにも繊細でドラマチックな「はじまり」の瞬間があるのだ。

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 この孵化のプロセスは、通常であれば自然界の中でも観察するのが極めて難しい。なにしろ体長はわずか0.05~0.1 mmほど。顕微鏡なしでは決して見ることができないからだ。

 今回は偶然が重なったことで、1000倍の顕微鏡を通してその決定的瞬間が記録された貴重な映像と言えるだろう。

 「誕生」はすべての生き物にとって特別な瞬間だ。最強生物クマムシだってそれは例外じゃないのだ。

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