チェルノブイリで青い犬が出現。ただしその原因は思わぬところにあった
チェルノブイリの立ち入り禁止区域にいた青い犬 / Image credit:<a href="https://www.instagram.com/cleanfuturesfund/p/DP6YPgFEY8W/" target="_blank" rel="noreferrer noopener">Clean Futures Fund/Instagram</a>

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 ウクライナのチェルノブイリ立入禁止区域で、、青い毛におおわれた3匹の犬が目撃された。ここは1986年に原子力発電所事故があった場所で、放射線による突然変異が疑われたが、その原因は意外なところにあった。

 調査の結果、犬たちは、現地に残された古い仮設トイレから漏れ出した青い消臭・洗浄液の上に転がり、毛が染まってしまったとみられている。

 青く染まった毛が犬の健康に影響を及ぼすことはほとんどないとされており、時間とともに色も自然に薄れていくと考えられている。

青く染まった3匹の犬、チェルノブイリで発見される

 今から約40年前、1986年に起きたチェルノブイリ原子力発電所事故によって、周辺の町プリピャチを含む広い地域が放射能汚染地帯となり、今も立入禁止区域として閉ざされている。

 しかし、避難の際に置き去りにされた犬や猫は数十年を経てもなお生き延び、その子孫たちが現在も廃墟の町や森の中で暮らしている。

 非営利団体「クリーン・フューチャーズ・ファンド(Clean Futures Fund)」が運営する「ドッグス・オブ・チェルノブイリ[https://clean-futures-fund.myshopify.com/]」チームは、ここで暮らす野良犬や野良猫に去勢・避妊手術、ワクチン接種などの健康管理を行い、個体数の安定化と感染症の拡大防止を目的として活動している。

 2017年から活動を開始し、これまでに1000匹以上の犬猫の管理を行った。

 2025年10月、現地で活動を行っていたチームは、3匹の青い犬を発見した。犬たちの被毛は均一に青色になっており、元々青色の犬のようにも見える。

 チームはこれらの犬を撮影し、位置情報付きの写真と動画をSNSに公開した。

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 チェルノブイリの青い犬は注目を集め、SNSでは、「放射線の影響なのでは?」という声や、「画像を加工しているのでは?」「わざと染めたのではないか?」といった疑いの声も上がった。

 これに対し、クリーン・フューチャーズ・ファンドは、画像や動画には位置情報(ジオタグ)が記録されており、撮影場所は確かにチェルノブイリであること示した。

 そのうえで、「私たちは犬を染めていません。現地で去勢・避妊活動を行っている最中に偶然見つけたものです」と説明した。

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青く染まった原因は漏れ出したトイレの青い消臭・洗浄液

 チームは、青い犬が現れた原因を突き止めようと調査に当たった。

 同団体の獣医医療ディレクター、ジェニファー・ベッツ博士によると、犬たちが青くなったのは放射線の影響ではなく、古い仮設トイレから漏れ出した青い消臭・洗浄液の可能性が高いという。

 「犬たちは体に何かをこすりつけていたようです。現場には古い仮設トイレがあり、漏れ出た液体が毛に付着した可能性があります」と博士は語る。

 仮設トイレで使われていたのは、青や緑の液剤で、主成分はメチレンブルー[https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A1%E3%83%81%E3%83%AC%E3%83%B3%E3%83%96%E3%83%AB%E3%83%BC]や第四級アンモニウム化合物[https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%AC%AC%E5%9B%9B%E7%B4%9A%E3%82%A2%E3%83%B3%E3%83%A2%E3%83%8B%E3%82%A6%E3%83%A0%E3%82%AB%E3%83%81%E3%82%AA%E3%83%B3]などだ。これらの成分には抗菌・防腐作用があり、臭いを抑え、細菌の繁殖を防ぐ目的で使用されている。

 犬たちはその液体が染み出た場所にゴロゴロと転がり、毛が青く染まってしまったと考えられる。

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青い色は一時的なもの 健康への影響はほとんどない

 専門家によれば、この青い色は一時的な付着によるものであり、永久的なものではないという。

 主成分のメチレンブルーは水溶性の消臭・洗浄液で、時間の経過とともに自然に薄れていくとみられている。

 「犬たちが毛についた物質を大量に舐めないかぎり、ほとんど無害だろう」とベッツ博士は話す。

 また、チームが現地で犬の去勢手術を行う際に識別のためにつける色マーカー(青・赤・緑・紫など)も、通常は2~3日で落ちるという。

 今回の青い犬たちはより濃く染まっているが、雨や泥、日光など自然環境の中で徐々に色が消えていくと見られている。

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立入禁止区域に残る“人間の痕跡”

 「人が立ち入らないはずの場所に、なぜ仮設トイレがあるのか」と不思議に思う人もいるかもしれない。

 実はチェルノブイリ立入禁止区域は、完全な無人地帯ではない。

 放射線量を監視する科学者や調査員、区域を管理する職員、取材許可を得た報道関係者、そして「ドッグス・オブ・チェルノブイリ」のような野生動物管理チームが、今も定期的に活動している。

 そうした作業拠点の周辺には、過去の活動で使用されていた仮設トイレなどの設備が今も残されている。

 今回犬たちが発見されたのは、そのうちの一つ、比較的古い仮設トイレの近くで、 内部の容器が劣化し、青い液が漏れ出してていたところに体をこすりつけていたとみられる。

 青い犬たちは、人間の活動の“名残”が残る場所で偶然に色をまとってしまったようだ。

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 チェルノブイリ立入禁止区域では、犬や猫のほかにも、イノシシ、アカギツネ、タヌキ、鳥類、オオカミなど、多くの野生動物が確認されている。

 人間がいなくなった土地は、皮肉にも豊かな生態系を築き上げ、野生動物たちの安住の地となりつつある。

References: Blue Dogs Have Been Spotted In Chernobyl: What Is Going On?[https://www.iflscience.com/blue-dogs-have-been-spotted-in-chernobyl-what-is-going-on-81356] / Dogs Reportedly Seen Turning Bright Blue in The Chernobyl Exclusion Zone[https://www.sciencealert.com/dogs-reportedly-seen-turning-bright-blue-in-the-chernobyl-exclusion-zone]

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