バルカン半島にある小さな国アルバニアで、世界でも初のバーチャルなAI大臣「ディエラ」が登場したのは、2025年9月のことだった。
それから1か月。
しかもなんと、彼女がみごもった「子供」の数は83人だという。
今年中にはすべての子供たちが「誕生」するとのことで、アルバニア国内はもとより、世界中に衝撃が走っている。
AI大臣のディエラが「妊娠」した?
ディエラの「妊娠」が発表されたのは2025年10月25日。
この日、ドイツのベルリンにあるビジネススクールでは、「ベルリン・グローバル・ダイアログ(BGD)」という各国の政財界代表を招いたイベントが行われていた。
BGDに参加していたラマ首相は、本会場で行われたスピーチの中で、次のように述べたという。
今日は、ディエラが「妊娠」していることを皆さんにお伝えしなければなりません。彼女は83人の子供を身ごもっています。
それぞれの子供は生まれてすぐに、我々の議会の議員1人につき1人ずつアシスタントとなり、議会の会合に参加して、そこで起こるすべてを記録し、議員に報告や助言を行う役割を果たすでしょう
「子供」とは議員に配られるAIアシスタントのこと
もちろん、AIであるバーチャルなディエラが物理的に「妊娠」することは不可能だ。ラマ首相が比喩的に語ったのは、83名の国会議員それぞれに、AIアシスタントを「1人ずつ」割り当てる、ということなのだ。
この子供たちは、母であるディエラの知識、とりわけEUの法制度や関連情報に関するものをすべて受け継ぐことになります
ラマ首相は、ヨーロッパの政界の中でも異彩を放つ存在である。彼はもともと芸術家で、スピーチやパフォーマンスを通して政治的メッセージを発信する手法を得意としている。
そんな彼が9月に打ち出したのが、世界初のAI大臣「ディエラ」だったわけだが、人間の代わりに人工知能が閣僚として行政に関与するという構想は、当初から国内外で賛否を呼んだ。
ディエラはもともと、政府の電子行政ポータルにおいて、各種証明書の発行などを支援するバーチャル・アシスタントだった。
そんなディエラを政府の閣僚として導入した名目は、長年アルバニア社会を蝕んできた「縁故主義」と「利益相反」の排除である。
首相は、「AIならば人間同士の関係や癒着の影響を受けず、透明な意思決定ができる」と説明し、「100%汚職のない国」を目指す象徴としてディエラを登場させた。
もっとも、大臣と言っても実際に政策を担うわけではなく、あくまで最新テクノロジーの「AIを活用している」政府の象徴的存在としての登用だったのだろう。
野党による批判をものともせず、「子供たち」を年内に配備予定
しかし、そんな演出は野党の怒りを買うことに。ディエラの「就任演説」が議会で上映された際、右派野党の議員らは激怒。
AIを閣僚にすることは「国民を侮辱している」として、ラマ内閣の閣僚にゴミを投げつけるなどの抗議行動を起こした。
だがそれでもラマ首相は一歩も引かず、そういった野党の批判を「古い政治文化の抵抗」として一蹴。ディエラの登用を続けたのだ。
例えばコーヒーを飲みに出かけて、そのまま仕事に戻るのを忘れてしまったとしましょう。この「子供」は、あなたがいない間に何が話されたのかを教えてくれます。
あなたの名前が言及され、もし誤った理由であなたを批判した人がいれば、誰にどんな反撃をすべきかを教えてくれるのです
ラマ首相が頭に描いているのは、AIを通じて人間中心の政治構造を揺さぶり、旧来の汚職まみれの権力構造に風穴を開けるというビジョンである。AI大臣としてのディエラは、言わばその理念を象徴する「顔」にすぎない。
野党からの批判をいくら浴びても首相が引かないのは、このプロジェクトが、アルバニアの政治そのものを変えるためのものだからだ。
アルバニア政府は、この83人の子供たちの配備を、年内に試験的に行う方針だ。
83という数字は与党・社会党の議席数と一致しており、AIアシスタントは首相に忠誠を誓う社会党の各議員に1体ずつ配備される予定だと言われている。
ラマ首相によると、「子供たち」の本格稼働は2026年末を目標としているとのこと。議会での実装方法やデータ管理の枠組みなど、詳細は今後明らかにされる見通しである。
References: World’s First AI Minister is “Pregnant” With 83 Offspring Government Announces[https://futurism.com/artificial-intelligence/rama-diella-albania-pregnant]











