アメリカのイエローストーン国立公園の近くで、オオカミの父親とピットブルの母親との間に8匹の子犬たちが産まれて話題になっている。
2024年、イエローストーン国立公園に住むオスのオオカミと、その近所の住人に飼われていたメスのピットブルの間に、8匹の子犬が産まれた。
このウルフドッグたちはコロラド州にある保護施設で、幸せに暮らせる家庭に引き取られる日を待ちながら元気に暮らしている。
だがオオカミとピットブルのハイブリッドという、扱いの難しい星のもとに生まれた彼らにとって、「ずっとのおうち」を見つけるのは簡単なことではないようだ。
飼い犬と野生のオオカミの間に生まれた子供たち
2024年のこと、イエローストーン国立公園近くの森の端にあった民家で、1匹のメスのアメリカンピットブルが飼われていた。
このピットブルは避妊をしておらず、発情期を迎えた際、なぜか家の外に出されていたという。そこにやってきたのが、公園内で暮らしていたはずのオスのオオカミだったのだ。
オオカミとピットブルは交尾し、やがて8匹の子犬が生まれた。オオカミとピットブルのハイブリッドという血筋を持つ、ウルフドッグの子供たちだ。
アメリカではオオカミと犬のハイブリッドは「飼育動物である」と規定されている。だが州やその下にある自治体によって、飼育に関する規制が異なる。
実は「ウルフドッグ」という言葉には2つの意味があって、ひとつは血統のどこかの段階でオオカミの血を引く犬のこと、もうひとつはオオカミと犬の間に生まれたハイブリッドのことを言う。
広義には前者の意味で使われているが、狭義では後者のハイブリッドのみをウルフドッグと呼ぶ。
このふたつを区別するために、後者を「ウルフドッグ・ハイブリッド」あるいは単に「ハイブリッド」と呼ぶことも多いそうだ。
8匹の子供たちは紛れもなくハイブリッドであり、DNA 検査が行われた結果、50%がハイイロオオカミ、45%がアメリカン ピットブル、残りの5%がチェサピーク・ベイ・レトリーバーのDNA であることが判明した。
州や自治体によって違うウルフドッグの扱い
子犬たちは最初、モンタナ州にあるオオカミの保護施設に引き取られた。モンタナ州では、ウルフドッグの扱いは郡や市町村ごとに飼育の禁止・規制の状況が違い、一般の飼育は難しいとされている。
それに対し、コロラド州はウルフドッグの飼育が禁止されていない数少ない州の一つである。
自治体による規制はあるが、子犬たちの里親を探すには、モンタナ州よりもコロラド州に移送する方が望ましかったのだ。
そこで母犬と子犬たちは、コロラド州にある保護団体、「Pack 22 Alpha」が引き取ることになった。残念ながら、彼らの父親のオオカミは、子犬たちが生まれた直後、家畜を襲ったとして安楽死させられたという。
ピットブルとオオカミというふたつの難しい血筋
動物保護団体の「Pack 22 Alpha[https://www.instagram.com/pack22alpha/]」では、ウルフドッグの保護を積極的に行っており、現在約110頭のウルフドッグたちが暮らしているんだそうだ。
子犬たちはこの施設で、仲間たちと自由に走り回り、のびのびと暮らし始めた。 だが2025年11月現在、新しい家庭に迎えられたのは8匹のうち2匹だけ。残る子供たちは現在も慎重に里親を募集中とのこと。
オオカミの血を引く子犬たちは、身体も大きく、オオカミの特性も受け継いでいて、普通の犬と同じように飼育するのは難しい。
また、母親の血統であるピットブルも、決して飼いやすい犬種ではない。それどころか、オオカミと同様に「危険」な生き物だと言われることも。
この団体の創設者・CEOであるドリュー・ロバートソンさんは、次のように語っている。
子犬たちを保護したのは、ピットブルやオオカミを恐れる人間たちの偏見から彼らを守り、安全な環境で育てるためでした
多くの飼い主はピットブルという犬種を正しく理解できていない。そのため、彼らの多くが最終的に保護施設に行きついてしまうことになる。
そのピットブルにオオカミの血が混じったとなれば、人々の持つ誤解や偏見は、一層強まることになるだろう。
この2種のハイブリッドを育てるには、膨大な時間と彼らに対する理解、忍耐、そして正しい知識が不可欠なのだ。
彼らは私たちの施設で、他の110頭のオオカミやウルフドッグと一緒に育てられ、ありのままの自分でいる自由を与えられています。
遠吠えしても吠えてもいいんです。彼ら自身がより自然に感じるなら何でも、私たちにとっては最高に聞こえるんです
背景にはオオカミとの共存の困難さも
オオカミとの共存は、アメリカでも大きな課題となっている。2025年10月には、カリフォルニア州で4頭のオオカミが安楽死させららた。
この地域では、2011年に牧場主たちの反対を押し切って、オオカミの再導入・保護政策が実施された経緯がある。
都市部の住人が賛成に回り、実際にその地域で暮らす牧場主たちの意見が無視された結果、オオカミの生息数が増加し、家畜を襲うようになったのだ。
人為的に導入され、過剰な保護政策で数を増やしたオオカミたちは、食料を牧場にいる家畜に依存するようになった。
2025年までに70頭を超える牛などの家畜がオオカミの犠牲になり、牧場主たちの怒りは頂点に達した。
彼らは再三にわたって当局に苦情を寄せ、今回の安楽死につながった。
ウルフドッグの特性を知る、信頼できる引き取り手を募集中
8匹の子供たちの動画には、世界中からたくさんのコメントが寄せられている。
- ピットブルの飼い主は、発情期のメス犬を外に放していたってこと? それでこうなったの? ごめん、混乱してる
- 犬を飼う資格のない人たちだよ
- 科学的な質問なんだけど、ウルフドッグ同士って繁殖できるの? それともラバみたいに子孫を残せないの?
- 繁殖はできますが、この子たちは避妊・去勢手術済みです(Pack 22 Alphaコメ)
- ちょっと待って、この子たちって吠えるの? それとも遠吠えするの?
- 両方しますよ(Pack 22 Alphaコメ)
- かわいそうなお父さん。彼は生き延びようとしただけなのに…
- この子たちは本当に美しい。父親に会えなかったのは悲しいけど
- 子供たちがあなた方の保護施設に行って本当によかった! とても美しいけど、生まれ方を考えると切ないね
- とてもきれいで、よく世話されていて健康そう。自然の中でこんなことが起きるなんて思ってもみなかった。お母さんはきっと魅力的だったんだろうね
- 頭と肩にピットブルっぽさがあるね。オオカミの血が入ってる分、普通のピットブルより大きくなるんじゃないかな?
- ピットブルって、どんな犬と交配しても結局“あのピットブルの頭”になるのが面白いよね
- もし里親になりたい場合は、どうすればいいですか?
- メールをください。あなたの州で合法で、適切な環境が整っているなら、ぜひ歓迎します(Pack 22 Alphaコメ)
Pack 22 Alphaでは、オオカミの血を引く彼らを安易に扱うことのないよう、理解のある里親にのみ譲渡する方針を示している。
彼らを引き取りたいという申し出はたくさん寄せられているが、誰にでも飼える犬種ではないため、引き取り先の見極めには神経を使うそうだ。
難しい犬種であることをしっかりと理解してもらった上で、8匹が幸せに暮らせる「ずっとのおうち」が見つかることを祈りたい。











