客が取りに来ない服を着て「はいチーズ!」クリーニング店の老夫婦のツーショットが話題に

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 台湾でクリーニング店を営む老夫婦が、客が取りに来ない服を着て写真を撮影し、Instagramでシェアして話題になったのは、2020年のことだった。

 古い服を新しく着こなす「オシャレな2人」のおかげで、忘れ去られていた衣類が再び注目を集める存在となった。

 彼らのコンテンツは、物珍しさからくる「バズリ」だけでは終わらなかった。なんと全国のクリーニング店をつなぐ活動に発展。

 障がい者の雇用創出も視野に入れたプラットフォームも開設し、持続可能な社会変革の動きを生み出すきっかけになりつつあるという。

「客が取りに来ない服」を着てポーズをとる老夫婦が話題に

 台湾の台中市で、張萬吉(チャン・ワンジ)さん・許秀娥(スー・シウエ)さん夫妻が長年にわたって守ってきたクリーニング店とコインランドリー、その名も「萬秀洗濯店[https://www.wantshowlaundry.com/]」。

 1951年創業で、当初は「日和洗衣店」という店名だったが、のちにそれぞれの名前から一文字ずつ取って、新たに命名したんだそうだ。

 2人がInstagramを始めたのは、新型コロナウイルスが猛威を振るっていたパンデミック中の2020年のこと。

 孫のリーフ・チャンこと張瑞夫(チャン・ルイフー)さんが、誰も取りに来ない「忘れ物の服」を祖父母に着てもらって写真を撮り、SNSに投稿することを思いついたのだ。

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(パンデミックの最中は)商売もうまく行かず、ぼんやりと街を眺めていることが多くなりました。私は2人が楽しめる何か新しいことを見つけたいと思ったんです。

祖父はすぐにこのアイディアにOKしてくれました。こんなに大成功するとは思っていなかったみたいですけど。

でも、祖母は最初乗り気じゃなかったんです。自分の見た目に自信がなくて…。

髪を整えたりしないといけないのでは?と心配していました

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人気コンテンツとなったことで「忘れ物」を取りに来る客も出現

 瑞夫さんはInstagramに「萬秀的洗濯店(WANT SHOW as young)[https://www.instagram.com/wantshowasyoung/]」というアカウントを作って、「忘れ物」を見事なコーディネートで着こなす祖父母の写真を投稿し始めた。

 祖父は仕事柄、身なりに気を使うタイプだったし、 もともとオシャレが大好きだった祖母は、若い頃のワードローブを引っ張り出して、「忘れ物」とのコーディネートを楽しむようになった。

 生き生きとした老夫婦の姿はネット上で人気を博し、2025年11月現在でフォロワー数72万人近くにのぼる人気コンテンツに成長した。

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 もちろん、「お客様の服」を着てしまうことは、クリーニング店としては大きなタブーを犯すことになりかねない。

 だが瑞夫さんには、「写真を見て服の持ち主が取りに来てくれるかもしれない」という期待もあったのだそうだ。

 実際に、老夫婦のコンテンツが広く知られてくると、「忘れ物」を思い出して取りに来る客も現れるようになったという。

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同じ悩みを持つクリーニング店をつなぐ役割を担う

 また、想定していなかった反応もあった。SNSを通じて、多くのクリーニング店から「うちも同じ悩みを抱えている」という声が届くようになったのだ。

この店が注目を集めたおかげで、祖父と一緒に他のクリーニング店を巡ったり、祖父母と一緒に障がい者向けのシェルターに行ったりしました。

そこでは皆が、どう解決すればいいのかわからない問題を抱えていると話していたんです

 それを受けて瑞夫さんは仲間を募り、全国のクリーニング店から「忘れられた衣類」を集め、きれいに洗濯してリユース・リメイク・リサイクルする、「重新定衣(再定義)」というプラットフォームを立ち上げることにした。

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このプラットフォームでは、私たちがこれまで行ってきた「古い服を新しく着こなす」例を共有し、スタイリストやデザイナー、ライターなど、共感していただけた方々を招きたいと考えています。

そして古着の着こなし方や保管方法、地球に優しい暮らしや環境保護に関する記事などを発信していくつもりです。

この場を通じて、多くの服やライフスタイルが、使い方を知らないだけで無駄になっていることを、より多くの方に知っていただきたいと考えています

 瑞夫さんたちはこのプラットフォームを通じて、台湾各地のクリーニング店で長期間放置されている衣類を再び流通に乗せ、店舗が失ってきたコストを回収できるようにすることを目指している。

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慈善団体との協力も推進

 このコンテンツを始める前も、溜まりに溜まった「忘れ物」は廃棄せず、慈善団体に寄付していたという。

 なんせ、客が取りに来なかった衣類は常時200~400点ほどもあったそうで、何年も保管しておくわけにもいかないのだ。

 もちろん、客の側にもいろいろな事情があるのだろう。実際に離婚や急な転勤で遠くに引っ越したり、本人が急死したりといったケースもあったようだ。

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 そんな中、慈善団体とのかかわりを通じて、瑞夫さんはまた、新たな目標を模索するようになった。

物資の支援を受けられても、生活の厳しさから、毛布や厚手のコート、カーテンなど、大きくて洗いにくいものを清潔に保てない家庭が多いんです。そうした汚れは健康被害にもつながってしまいます。

だからこそ、私たちはこれまでの経験を活かし、慈善団体との連携を加速させたいと考えています。

プラットフォーム上に慈善団体を知ってもらうための専用のコーナーを設け、まずは当店の収益から、こうした家庭のクリーニングへの支援を始めていきます。

同時に障がい者が働くクリーニング工場での雇用を生み出し、より多くの人がこの問題に関心を持つきっかけになればと願っています

 下は今年の中秋節に、ウサギのコスプレをする瑞夫さんと萬吉さん。

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おばあちゃんの遺志を継いでお客さんに笑顔を

 非常に残念だが、おばあちゃんの秀娥さんは、2023年5月23日の朝、安らかに永遠の眠りについた。瑞夫さんによると、彼女は前年から体調を崩していたらしい。

今までの数年間、この奇跡的な旅に付き添ってくださった皆様一人ひとりに、心から感謝申し上げます。

皆様のおかげで、私たち家族とおばあちゃんは、他の人にはできないような、忘れられない思い出をたくさん作ることができました。



おばあちゃんと過ごした方々は、彼女の明るい笑顔を永遠に忘れないだろうと確信しています

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 おばあちゃんはもういないが、88歳になったおじいちゃんと瑞夫さんは、今もInstagramの更新を続けている。 

 店の経営を引き継いだ瑞夫さんは、台北にも支店を出したが(2024年12月に閉店)、そちらのお店でもやはり忘れ物が後を絶たなかったそうだ。

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 また、瑞夫さんは他業種とのコラボにも積極的に取り組んでいて、お店のロゴの入ったベスト[https://www.story-wear.com/products/want-show-collaboration-vest?fbclid=IwY2xjawN-NyFleHRuA2FlbQIxMABicmlkETFuRlBwOE9WbVRZSDVzTThGc3J0YwZhcHBfaWQQMjIyMDM5MTc4ODIwMDg5MgABHupAXwNmaXydG2fH_rJLtoC6yZ1jYel9S66wnzcs3w_TG3Zs8icoCnbn_w7z_aem_i1nDIlpGR_IZXA_TJmo6DA]やトートバッグ[https://www.facebook.com/photo/?fbid=1154774653526448&set=a.551323453871574]なども販売している。

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 なお、瑞夫さんはクリーニング屋さんの「日常の音」をASMRとして音源化[https://reefchang.lnk.to/HOL?fbclid=PAZXh0bgNhZW0CMTEAc3J0YwZhcHBfaWQMMjU2MjgxMDQwNTU4AAGnI3I4E-rILpGJlHyT6-oeNi-sQ8Ce3ya6ArMxJRnUIdDXh17dpee2z8R73n4_aem_bfecTv8WCeBDUBHPUhmg7w]し、さまざまなプラットフォームで公開している。

 音源には「コインがこぼれる音」「乾燥機のささやき」「ビンテージな洗濯機」といった音が含まれていて、萬吉さん自身が録音したものだそうだ。

 萬吉さんがあいさつする優しい声も聞こえてくるので、興味のある人はぜひ聞いてみてほしい。

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References: 連我奶奶都比你潮:「萬秀洗衣店」爺爺奶奶穿搭紅遍全球[https://dq.yam.com/post/12809] / Old But Not Forgotten: Old Couple Find Fun Wearing Clothes Left At Their Laundry[https://flashbak.com/taiwan-laundry-couple-want-show-was-young-479505/] / 萬秀洗衣店爆紅後,意外點出產業困境:衣物囤積、把店當自家衣櫃[https://www.gvm.com.tw/article/78165]

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